前世編/皇帝と偽物の姫③
フォンセの異常なまでの忠誠心と崇拝心は、アウトリタに刃となって向かった。
この皇帝弑逆計画には、エスピーナとフォンセ以外にも一枚噛んだ者たちがいた。
エスピーナを皇帝にし、傀儡として操れると踏んだ宰相のメルフラフ。国庫管理長のポルコなど欲深き者たち。
彼らの協力によって暗殺は決行されたのだ。
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用意周到な計画により呼び出されたアウトリタはその日、臣下であり皇室騎士の副団長であるフォンセによって、暗殺用の剣で腹を貫かれた。
「なぜだ…フォンセ…」
「皇帝陛下、あなたが悪いのです。
このトルメンタ帝国の未来のため……潔く逝って下さい。」
アウトリタの衣服が赤く染まる。
薄暗い目をしたフォンセをアウトリタは深く同情した瞳で見つめ、床に倒れ込んだ。
魔力というものは無限ではない。
いくら国一番の魔力保有者だったとしても、アウトリタはエステレラに加護の魔術を継続してかけていた。
そのため、自身にあまり魔力を回すことができないという弱点が存在した。
それをエスピーナが把握していたからこそ、この計画は実行された。
フォンセは躊躇うことなくアウトリタからもう一度剣を抜き、今度こそ息の根を止めようと剣を振り上げる。
しかしあと一歩というところで異変に気付いた女官により、とどめを刺すことが出来なかった。
騒がれたことでフォンセは止むなく退却することになる。
しかし確かに手応えはあった。
恐らく生きながらえるのは難しいだろう。
そう確信して、フォンセは自分の行った大義に満足気な表情をするのだった———————




