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前世編/皇帝と偽物の姫②



 「それでは皇女様。さっそくですが、賜られた離宮へ参りましょう。」


 皇女と呼ばれた私はそれが自分のことだとは到底思えず、ただ目を丸くする。


 あの時皇帝が言った方法とはこのことだったのかと、驚くばかりだ。



 ——————————


 ————————————


 

 話は少し前まで遡る。


 あれから、私は丸3日も眠っていたという。

 目を覚ますと、ベッドの傍に見慣れない、女性の使用人たちが並んでいた。

 彼女たちは私に向かって、一斉に『皇女さま』と言って頭を下げた。


 部屋にエスピーナ皇女がいるのかと思ったが、どこを探しても彼女はいない。

 どうやら使用人たちは私に向かって本気でそう言っているようで、戸惑った。

 そのうち一人の中年の女官が、私のいるベッドの前に進み出てきた。


 「初めまして、エステレラ様。

 わたくしはこの皇宮の女官長をしております、キュルマと申します。

 皇帝陛下よりエステレラ様のお世話を仰せつかりました。」


 「皇女様…?」


 「ところで体調はもう宜しいでしょうか?

 陛下自ら緩和魔術を用いたようなので、痛みはだいぶ引いたかと…」


 緩和魔術……?

 そう言えば痛みを感じない。


 確かに最初に感じていた痛みは、今ではすっかり無くなっていた。


 だが左手の小指は本当にない。

 けれど、後悔はしてなかった。


 「皇女様が起き上がり、ご自分で歩けるようになったなら、お部屋の移動をするようにと申しつかっております。

 陛下から特別に東の離宮にと…」


 「あ、その…!私が皇女様ってどういうことでしょうか?」


 疑問が解けずに、慌ててベッドから身を乗り出す。


 「…エステレラ様は、皇帝陛下の養女となられました。

 昨日付でこのトルメンタ帝国の皇女様としての身分を賜ったのです。

 陛下の養女様、エスピーナ様の義妹様となられます。

 正式な授与式については後ほどお知らせがあると思いますが、まずは賜った離宮に移ることを陛下が強く望まれておりますので、どうかご理解くださいますよう…」


 女官長は表情を崩さず、すらすらと言葉を並べた。


 「私が陛下の養女?

 エスピーナ皇女の妹に…?」


 状況を飲み込めずにいる私を見上げて、女官長は言った。


 「皇女様、ご自分で歩くことはできますか?」


 「あ、はい、えっと、大丈夫だと思います…」


 「それでは皇女様。さっそくですが、賜られた離宮へ参りましょう。」


 女官長が私に手を差し伸べる。

 訳が分からないまま、私は、指が揃ってる方の手を伸ばした。


 肌触りの良い柔らかいベッドから降りると、同じく肌触りの良いドレス状の衣服が四肢に擦れた。

 それがこれまでの扱いと違うと、はっきりと認識させられた。


 ———西棟で働く使用人と比べても、一つ一つの所作が丁寧で上品な、たくさんの使用人たちが私と女官長を筆頭にぞろぞろと歩き始める。


 皇帝が私を守るためにこんなことを…?


 今まで公にすることは避けているようだったのに。


 それほどまで大切なら、どうして今まで…



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