表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/72

前世編/近づく悪意③


 ◇◇◇


 《北の皇女宮・エスピーナの私室》。


 エスピーナの私室はまるで一つの邸のような広さがあり、天井もはるか遠くに見えるほど高かった。


 縁を金の装飾で飾られた絵画、テーブルや、椅子、置かれた高級皮のソファや、宝石が並べられた硝子の棚、華やかな模様が施された銀のティーカップなど。どれを取っても眩く、豪華な部屋。


 宝石で彩られた、淡い薄紫色のドレスを着ているエスピーナ。

 そのすぐ傍には皇室騎士団の制服を纏うフォンセが、訪れたローアルを睨むようにして立っている。


 部屋に入るなりローアルは深く頭を下げた。

 目の前のエスピーナにどう接していいか分からず、見事な刺繍で彩られた足元の絨毯にしばらく目をった。



 「ローアル、久しぶりね。やっとあなたに会えたわ。」


 「…お久しぶりでございます、皇女様。」


 ローアルはさらに深く頭を下げる。


 「そんなに畏まらなくていいのよ、ローアル、まあ…こんなに痩せてしまったのね。

 かわいそうに。」


 顔を上げたローアルの頬に、冷たいエスピーナの手が触れた。

 驚いて離れそうになるが、フォンセの殺意に近い視線に気づいて堪える。


 「今日はお父さまが視察に出かけていて、留守にしているの。

 ひどいでしょう?

 お父さまは今だに、わたくしとあなたの接触を許してくれないのよ。」


 ローアルの柔らかい頬を撫でまま、エスピーナは悲しそうな表情を浮かべた。

 美しく手入れされた金糸のような髪が、サラサラと揺れる。


 「皇帝陛下のお気持ちは分かります。

 僕のような者のそばに、大切な皇女様を少しでも近づけたくないのでしょう。」


 当然だ、という風にローアルはさっと目を伏せる。


 「何を言うの?ローアル。

 確かにあなたは下賎なスラム街の出だけれど…

 あなたの見た目は完璧だし、まるでおとぎ話の王子様だわ。

 完璧なわたくしの隣に立つのは、あなたしかいないのよ。」


 「皇女様にそんなふうに言ってもらえて…身に余る光栄です。」


 「…最近、騎士団や、貴族の子息達に冷たくされていると聞いたわ。

 かわいそうなローアル。

 ここにいるフォンセは皇室騎士の副団長だけれど、貴族たちの差別を止めるのは容易なことではないと、彼も胸を痛めていたのよ。」


 その言葉にピクリと反応して、ローアルは自分の上司であるフォンセの方をちらりと見上げた。


 彼らの卑劣な行いを先導しているのは、実はフォンセ自身だということを知っている。

 しかし彼は皇女の専属騎士であり、騎士団の副団長を務める、正真正銘の貴族。

 そんなフォンセに絶大な信頼を寄せているエスピーナに事実を言ったところでどうにもならない。ローアルは初めから何もかも諦めていた。


 「本当にかわいそうな、ローアル。

 体も傷だらけだわ。

 わたしくしのそばに居さえすれば、こんなに傷だらけになることも、嫌がらせを受けることもなかったのに。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ