前世編/近づく悪意②
しかし同時にローアルの呻めく声が。
どうやら貴族の子息達に傷つけられてケガしたところに、手が当たってしまったらしい。
「ごめんね、ローアル!」
慌てて離れようとする私をなぜかローアルが強く引き止め、抱きしめる。
「僕は大丈夫。お願いだから、まだこうしていて欲しい。
エステレラとこうしていると、とても落ち着くんだ。」
「ローアル…」
聞こえるのはローアルの甘い声。
身体全部を覆うように、抱きしめられている。
ドキドキしながら私もそっとローアルを抱きしめ返した。
こんなのはもう、ほんとうに心臓に悪い。
ハグなんていつもやっていることなのに。
「エステレラ。僕は…」
懸命にローアルが何かを伝えようとしていた。
が、その時部屋の扉が乱暴に開いた。
そこには私達をキツく睨む、あのフォンセの姿があった。
「ローアル!!皇女様がお呼びだ!
早く来い!」
———皇女が…?
「大丈夫だよエステレラ。心配しないで。」
不安になったことに気づいてくれたのか、ローアルは笑いながら私の髪をそっと撫でた。
それから、不愉快そうな顔をするフォンセと共に部屋を出て行った。
あの謁見の時以来、これまで皇女がローアルに接触することはなかった。
だからこの頃、安心しきっていた。
皇女はまだローアルのことを諦めていないのだろうか?
何もなければ良いけれど……




