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現世編/私たちの幸福は②


  ——————————

 ————————————


 …ウトウトしていた。


 夜風に揺れる、白いカーテン。


 窓を開けっ放しにして寝てしまったな。

 今夜はローアルが、祝賀会の後で一度ここに立ち寄ると言っていたけれど。


 どこからともなくお菓子のように甘い匂いがする。あと、仄かにお酒の匂い。


 ベッドにうつ伏せで寝ている私の髪を、優しく誰かが撫でている。



 …ロー…アル…?



 これは夢?



 揺れているカーテンにあまりいい思い出がないせいか、過去の嫌な記憶が蘇りそうになる。


 左目の眼球を…失って…あれ。私。



 …私。…辛くて。



 ローアルが幸せだと笑うたびに苦しくて。


 ローアル。側にいて。


 私、ここに居るわ。


 どこにも行かないで。


 離れないで。



 ——けれどその苦く悲しい記憶は、次の言葉で綺麗さっぱり洗い流された。


 …愛おしそうに私の髪を拾い上げ、彼はキスを落とす。


 その場に膝をついたのは、現世で今確かに、私の前に現実にいるローアルだった。


 優艶な騎士の所作。

 静かに瞳を閉じ、穏やかに、幸せそうに微笑みながらローアルは言った。


 「愛してるよ。エステレラ。

 今も過去も、未来も。ずっと………。

 ずっと大好きな君のそばいにる。

 君が飽きるほどに愛していると、ずっと言い続けるから覚悟しておいてね。

 …僕と結婚することを決めてくれてありがとう。

 僕は今やっと本当に幸福しあわせだよ。」


 幸せだ。


 私も幸せよ、ローアル。


 愛してる。


 私もずっとあなたを愛し続けるわ。


 それから額に長いキスが続いた。


 そっと布団を掛け直してくれたローアルの気配が、静かに扉の方へ消えていく。


 ローアルの言葉に、私は俯せのまま、気付かれないように泣いた。

 これは悲しみの涙じゃなくて。

 嬉しい時に流す涙。


 ローアル。あの雪の日に私と出逢ってくれて、本当にありがとう。


 命を助けてくれてありがとう。


 あなたを信じられなくて、消えていなくなった私を、また愛してくれてありがとう。


 私たち…離れ離れになっていた月と星がようやく、一緒になることができたんだね。


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