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現世編/300年後のプロポーズ①


 謹慎が解けた後、ローアルと結婚したいと告げると、お父様は卒倒しそうになり、泣きながら椅子に突っ伏した。


 私は平民のローアルに嫁ぐなら身分が平民になっても構わないと、それくらい覚悟していたのだが。



 「平民に降嫁させるのは抵抗がありますか?私は別に構わないですけれど。」


 私がそう言うとお父様は泣きながらも、掠れ気味の声で言った。


 「…駄目に決まっているだろう!

 ローアルを、その…あれだ。

 名誉騎士に任命して、レールタの騎士の爵位を与える。

 それならば国民も納得するだろう。」


 レールタ帝国の名誉騎士というその爵位は、ステルク団長や副団長ほか数名しか持っていない希少なものだ。


 「…こ、これは贔屓ひいきではないぞ。

 ローアルにはそれに見合う実力があるし、実績もある。

 それに…お前の命を二度も救った男だ。

 しかも騎士なら貴族だし、お前を飢えさせることもない。

 嫁にやるのはいやだけど。

 …嫁にやるのはいやだけど…!」


 「なぜ二回言ったのです?あなた…」


 さらに涙目になるお父様をよそに、お母様は何だか複雑そうな笑みを浮かべて私をそっと抱きしめた。


 「エステレラ。あなたが選んだ人なら私たちは反対しないわ。

 …あなたが本当に幸せになるのなら、それだけでいいのよ。

 それが私たちの望みなのだから。」


 「…お母様。」


 皇女と言えどレールタ帝国の恋愛が自由で、こうやってローアルとの結婚を認めてもらえるのはやっぱりこの仲の良い夫婦のおかげなのだろう。


 お父様。お母様。私を産んでくれてありがとうございます。

 

 また、2人の娘で本当に良かった。





 夜空に無数の星が瞬く。


 そこに寄り添うように、月白色をした月が浮かんでいる。


 早いもので明日、ついに私とローアルは結婚式を挙げる。

 思い返せばここ数日は、本当に忙しかった。


 

 ———城では慌ただしく婚礼の準備が進められ、花嫁衣装やお披露目用のドレスを作るために国で有名なデザイナーが呼び寄せられた。


 国民の血税だからと贅沢は控えているお父様とお母様も、この日は特別だし、かえって市場が活気付くと、私に贅沢な宝石や装身具を揃えた。


 城で働くメイドや騎士たちまでも浮き足立ち、楽しそうに結婚式の準備を進めていた。


 そうしている間に、ローアルがお父様やお母様に再び挨拶をする場面が訪れて。


 娘を取られる悔しさもあり、少しだけ偉そうに玉座に踏ん反り返ったお父様にローアルは騎士らしく跪き、洗練された礼を取る。


 前世でいくつもの爵位を持っていたローアルが貴族らしい振る舞いができるのは当たり前だと、内心そう思いながら動向を見守っていた。



 「…皇帝陛下。

 この度は、わたしのような者に大切なエステレラ様との結婚を許可して下さり、大変感謝しております。」


 「し、仕方ない。娘の幸せのためだ。

 …必ず娘を幸せにするのだぞ。

 …もしエステレラを泣かせたりしたら…いつでもお前の首を切り落と…っ!」


 物騒な言葉で脅迫しようとしたお父様を、横から宥めたお母様はローアルに言った。


 「ローアル。私たちはあなたが、エステレラを幸せにしてくれると信じているわ。

 …だからこの子をお願いね。」


 「はい!この命が尽きるまで…いえ、尽きてもエステレラ様を幸せにすると誓います。」


 顔を上げたローアルは、自信に満ちた瞳をしている。

 それを見たお母様は、ただ優しく微笑むのだった。


 …私たちは一度、お互いのために命が尽きたけれど。


 今世では一緒に命が尽きるまで過ごせるのだと思うと、その誓いの言葉に密かに涙が出た。


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