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現世編/300年後のプロポーズ①

 

 ◇◇◇



 ………あれから、私とローアルはたくさん話をした。


 前世で語ることのできなかった出来事。

 あの時どう思っていたのか。

 お互い何を感じていたのか。


 すれ違ってしまった、沢山の日々を取り戻すかのように。


 本当はローアルが私を連れて城を出ようとしてくれていたこと。


 私を守るために、エスピーナの言うことを聞いていたこと。


 それなら、体のあちこちが欠けて壊れた私のことをどう思っていたのかと恐る恐る聞いた。


 「…綺麗だと思っていたよ。

 誰にも負けないくらい君はずっと綺麗だったし今だって綺麗だ。」


 頬を紅潮させて微笑む、ローアルには叶わないと思った。


 「…ローアル?」

 

 ローアルは突然その場に片膝を付き、頭を下げた。

 騎士団の剣を自身の目の前に置いて。


 「失礼します、皇女様。」


 とても真剣な眼差しでローアルは私の右手を取り、手の甲にそっとキスを落とした。


 …優しいキス。


 慈しむような。


 全てを癒すような。


 それでいて、熱いキス。


 薄紫色の瞳でこちらを愛おしそうに見上げ、胸に右手を当てて固く拳を握った。


 その位置は心臓。


 私も畏まって彼に向き合い、動向を見守った。


 「…ローアル…?」


 「エステレラ。…何度も繰り返し言うけれど、本当に愛してる。

 これは…ずっと君に言いたくて、言えずにいた言葉だから。

 ずっと君が好きだった。愛してた。

 そして今も変わらずに君を愛してる。

 これからもずっと。

 今世こそ君を死ぬまで愛して守り抜くと誓う。

 だから…どうかこんな僕と…

 結婚してくれないだろうか…?」


 「………!!」


 これはレールタの皇室騎士が、正式に皇族に誓いを行うための一連の所作だ。


 この誓いは、騎士が『永遠にあなたに忠誠を尽くします』という意味を持つ。


 それをプロポーズとして…?


 …泣いてしまう。


 まさかローアルに、プロポーズされる日が来るなんて。


 結婚することを夢見て、敗れた前世を思えば、胸が強烈に痛む。

 ずっと涙が止まらない。

 すでに泣き声を誤魔化せないけれど、私は小さく頷いて応えた。


 「…はい。私で…良ければ。」


 泣きながらそう答えた私を、ローアルは嬉しそうに抱きしめた。


 「良かった……!

 ありがとう。エステレラ!

 僕は、愛する君じゃなければ駄目なんだ。」


 そう言って微笑むローアルの笑顔は、これまでのどれよりも恍惚と輝いていた。


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