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現世編/認めるしかない(ディーside)


 ◇◇◇


 …完敗した。


 クルラーナ山脈の麓で、エステレラが魔力暴走した時。


 離れてと叫ぶ彼女に縋れなかった。

 その声に気押されて、わたしは彼女の手を離してしまった。


 それなのにあいつは…ローアルはそんなエステレラを抱きしめて、離れようとしなかった。


 一緒に死んでもいいと…あいつは本気でエステレラを愛していることを証明したのだ。


 まさかあいつが本気で、エステレラを…?


 そんな疑問が何度も頭をよぎった。


 前世でもそうだったのか?

 あの頃はエステレラが、ローアルのために自分を犠牲にしてまで対価を払い続けたこと知りながら止めようとしないのを…


 なんてクズ野郎だと思っていたのに。



 …果たしてそうだったのか?



 自分がエステレラに惚れているのだと自覚できずに、無意識にローアルにも敵意を向けていたのかもしれない。


 嫉妬心から、あいつを悪者扱いしたのか。


 自分の犯した罪とあいつの罪は同罪だと、無理やり思い込んだのだろうか。


 長くエスピーナの側で罪を犯し続けたせいで、わたしも大いに狂っていたのかもしれない。



 ———————————————



 魔獣討伐と異界の大穴の破壊を無事に終え、強大な魔獣グレイシャルを封印し、クルラーナ山脈から引き上げる最中。


 アウトリタ皇帝陛下が驚愕の眼差しでわたしを食い入るように見ていたし、それは城に帰ってからも同じだった。

 トリステル皇后陛下や馴染みのある騎士団、魔術師、城のメイドや使用人も同様の態度をしていたし、凱旋パレードでは、さらには国民までもがとても驚いた目をして見ていた。


 そして…その中の誰かが声を上げた。


 「きゃー!ディー様!素敵ぃ!グリーンとグレーのオッドアイ!イケメン過ぎます!」


 それをきっかけに民衆はますます盛り上がり、北の大地の帝都に紙吹雪の花びらがきれいに舞った。


 皇室騎士団も民間の騎士団たちも誇らしげに剣を掲げて行進し、魔術師たちは嬉しそうに笑っていた。


 皇室の馬車に乗った皇帝は皇后と仲睦まじそうに手を振り、レールタ帝国の兵たちは勝利を高らかに叫んでいた。


 民衆は笑顔で溢れ、陽気な音楽が鳴り、歓声が上がる。

 とても冬の国だとは思えないほど熱く。


 前世で、こんな景色を見たことがあるだろうか?



 これがエステレラが叶えた、ローアルのための願い。奇跡だったのだろうか。


 それともわたしの願い…?

 いや、皇帝の願いなのかもしれない。


 複雑に重なりあった奇跡。


 こんなにも素晴らしい国に生まれ変わり、再び瞳が開かれて、もう一度この目で世界を見ることができて、わたしはそれを幸せと感じていた。


 エステレラの魔力暴走で、生まれた時にはすでに盲目だった両目が開き、視力が回復した。

 まさにエステレラが奇跡を起こした。


 あの子は前世でも………


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