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現世編/あなたが居なければ幸福にはなれない①


 ◇◇◇



 …非常に苦しい。



 何が苦しいかって?



 魔力暴走で無理をした身体でも、城に帰ってご馳走を食べ過ぎたせいでもない。


 私を溺愛する皇帝アウトリタと、皇后トリステルの2人に、1週間の療養と外出禁止を命じられたためである。

 魔力は安定し、体力だって戻っているのに。


 「…お前は傷付き過ぎた!母さんと大人しく城で待ってればよいのに!…まあお前のおかげでグレイシャルを仕留められたし、助かったけど!

 …とにかくあと数日は謹慎だ!」


 そう言ってお父様は涙ながらに天蓋付きのベッドに、私を子供扱いして寝かしつけようとする。


 「本当よ。あなたが魔力暴走を起こしたと聞いて、私、お父さんとケンカしたんだから!」


 同じように涙目でそう訴えるのはお母様。


 お互いを母さん、お父さんと呼び合う。

 二人がどれだけ信頼し合っているかが分かる。


 前世の記憶を取り戻した今思うことは。

 前世ではエスピーナによって無惨に引き裂かれてしまった2人だけど。


 現世では、まさか夫婦になるなんて。


 こんなに素敵な恋の続きがある?


 お父様の恋愛指南書にもきっとないわね。


 …もしかすると、お父様こそ最後に、魔力で願ったんじゃないかしら?


 愛する人と今度こそ、幸せになるという未来を。


 残念ながら2人共に記憶はないが、傷付いたトリステルに記憶がないのはむしろ良かったのかもしれない。


 また出逢って惹かれ合うなんて。

 この2人はやはり運命で繋がってるんだろう。


 こんな風に幸せな2人を見れて、私も本当に幸せだ。…しかし過保護すぎる。


 「…楽しみにしていた凱旋パレードにも出れなかったし。」


 ベッドの中で子供みたいにぐずり、深い溜息を吐くと、お父様は弱ったような顔をする。


 「魔石の映像記録であとから見せてやる。

 それまでは大人しく寝るんだぞっ。」


 愛おしそうに髪を撫で、私の布団を掛け直すと、満足げにお母様と仲良く部屋を出て行った。


 2人に前世のことを話すつもりはない。


 ローアルや、ディーのことできっと、お父様の逆鱗に触れてしまうからだ。


 これは墓まで持っていく秘密になるかもしれない。けれどそれで充分だ。


 自分で自分への贖罪のために、記憶を封印していたくらいだ。


 そんな思いを巡らせて天井を仰いでいると、控えめに扉がノックされた。


 「…はい?」


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