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現世編/魔力暴走③


 私はあなたを信じなかった。


 最期まで……


 これはあなたを信じなかった自分への罰だったのだ。


 私が全ての記憶を消したのは、あなたを最後まで信じることができなかった自分への贖罪。


 間違ってもあなたが憎かったからじゃない。



 「ちが…う。

 違うの………………ローアル!!!

 ……忘れたいと願ったんじゃない……

 私が最期に願ったのは……あなたの幸せだったわ!!

 幸せに……………………

 幸せになって欲しかった!!!

 ずっと、あなたが…しあわせであるようにと!

 私は……私が最後に願ったのは、あなたの幸福だった!

 あなたが永遠に幸福であるようにと、願ったのよ!!」


 そうだ。


 私は………………願った。



 壊れてしまったけれど、最期の最後に。




 【ローアルが永遠に幸福であるようにと】。




 それが私が自分の死と引き換えにした、最期の純粋な願いだった。


 お父様の娘だった私には赤の魔力があり、きっと私はディーと同じように、無意識に魔力を使ったのだ。命と引き換えに。



 ——————————

 ———————————————



 魔力暴走も限界だ。

 

 これが臨界点。

 私の身体が自爆すると共に、ローアルやディーまでが巻き込まれるというのに!!

 私は最期の力を振り絞り、ローアルの身体を押して叫ぶ。


 「離れて!あなたを失いたくない……!

 お願いよ、ローアル!」


 「うん…。それならやっぱり君と一緒に居なくちゃね。

 僕の幸せは、君と一緒に生きることだから。

 それ以外に僕の幸せは、どこにもないんだよ。エステレラ。」


 危険だと分かって居るはずなのにローアルの腕が、私を離すことはなかった。


 この世界に一つも怖いものなどない。

 あるとすれば君を失うことだけだと、ローアルは笑った。


 大切な者を慈しむような笑顔。添えられるように、その目から一筋の涙が溢れ落ちた。



 

 —————薄紫色のその瞳が、あの雪の日に出逢った優しい少年の瞳だったことを思い出した。


 …泣いているの?ローアル…


 泣かないで。


 知らなかったの。あなたの幸せが、私と一緒に生きることだったなんて。


 今はただ、あなたの願いを叶えるには自分がここで死ぬわけにはいかない。

 今になって私は、必死に魔力をコントロールしようとした。


 ディーに教わったように、内側で爆発しそうな熱を取り込んで、捩じ伏せる。

 一気に打ち寄せた波が引いていく、海の潮の満ち引きのように。


 「…死ぬなら一緒に逝く。

 今度こそ離さない。

 君が最期まで……魔力を使ってまで僕の幸せを願ってくれていたように、僕も君の幸せをずっと願っていたんだから。」


 「……っ!」


 苦しいけれど、ローアルを失うことの方がもっと苦しい。


 …できる筈だ———私なら。


 だって私の幸せは、やっぱりローアルが幸せになることだから。


 それは今だって変わらないのだから。


 前世の記憶が現世の記憶と重なったところで私がローアルの幸せを願う心は、ずっと同じなのだから。


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