現世編/魔力暴走①
…熱い。
…身体が燃えるように熱いわ。
それに頭痛がこれまでとは比べられないほど、ひどい——————————————
「…ステレラさま…エステレラ様!!!」
…あれ。
どうしてこんな寒い雪の上で、ディーの足元に私は横たわっているんだろう。
身体は燃えるように熱いし、頭が割れるように痛い。何でこんな……
「エステレラ様、……気をしっかり持って下さい!…エステレラ…
エステレラ駄目だ、戻ってこい!!」
蒼白になった顔で私を覗き込むディーの、本来なら見えるはずのない瞳の色が見える。
右目が碧、左が灰色のオッドアイ…
まるで宝石のようなこの瞳を、私は知っている気がする……
「どうしたの?ディー…?
そんな顔しないで。
私は大丈夫よ……ほら、ここにいるでしょう?」
なぜか体が上手く動かせない。
「それよりどうしたの?魔獣は?…大穴はどうなったの?
あれからどうなったの……?」
「もう嫌だ、もう二度とお前を目の前で失いたくない……エステレラ…戻ってこい…!
愛してる………!愛してるんだ!!」
叫びすぎて、掠れてしまった声が聴こえる。
それからディーのしなやかな腕が、私の身体を力強く抱きしめる。
熱い吐息と共に頬に落ちたのは、間違いなくディーの涙だった。
「…ディー…、貴方目が見えるの?」
「ああ…そうだ。見える…お前が見えている。
エステレラ。愛しいお前の姿が。」
「…そうなの。…綺麗ね。貴方の瞳は…ところでどうして…」
「魔力暴走だ。
わたしを助ける為にお前は魔力を最大限使って、魔力暴走を起こし、死にかけている。」
魔力暴走…?
…そうだ。
あの時、大穴を塞ぐ為に魔獣を一掃する「消滅」の術を展開させた後、ディーは同時に穴を破壊する「破壊」の魔術を展開させていた。
私は後方から加護魔法と、その周辺に集まってきた魔獣の数体を排除していた。
ディーはこれまでないほど膨大な魔力で、穴を完全に破壊する魔術を使った。
疲れ果てて彼が倒れたと同時に、その背後に。
群れを引き連れていた筈の最大の強敵「グレイシャル」が、ディーに襲い掛かろうとしたのである。
その姿はまるで天にも登るほどに巨大で、岩のような表面にはいくつも目があった。
固そうな腕を振り上げ、それはディーを狙っていた。
「駄目…駄目よ、ディーは魔力を使い果たし、今は動けないわ………!!
私がディーを守るのよ…………!!!」




