表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

133/159

現世編/雪山の一夜①



 けれど加護魔法を使わなければ、ここまで辿り着くことさえ出来なかったはずだ。


 「魔術による転移」はいざという時の魔力温存のため使えない。

 それに大穴の位置を特定できてない現状で使うのは意味がなかった。


 幸い洞窟のような横穴には古びた枝や枯葉があって、燃料となった。

 秋口に風で吹き込んで長い間蓄えられていたのだろう。

 外の吹雪の轟音が響くものの、雪が入り込むことはなく、2人で過ごすには充分な広さだった。


 「…疲れたでしょう?ディー。ずいぶん歩いたけど、足は痛まない?」


 気怠げに壁に寄りかかるディーのそばに寄って足元に手を置いた。

 それに反応したディーが、私の手の上に自身の手を重ねた。


 「ご自分だって、足は大丈夫ですか?あなたは全く…いつも人の心配ばかりですね。」


 やれやれと、ディーに少しだけ呆れたように言った。


 「私がものすごくお転婆で、剣の稽古や魔術の訓練ばかりして走り回って鍛えているのは知ってるでしょ?

 このくらいじゃ、へこたれたりしないわ。」


 無駄に体力自慢を偉そうにしてみる。

 するといつもは沈着冷静なディーが、口元に手を当てて上品に笑った。


 「ぷ、あははは!やっぱり…お前…いや、あなたはエステレラ様だ…」


 「…何よ、笑いすぎよ、ディーってば…」


 むくれたまま私はその手を払い退け、少し距離を置くように離れた壁際に腰を下ろした。


 しん、と静まり返った洞窟。

 上の岩から垂れてくる水滴と、枝や枯葉が燃えて軋む音だけがしていた。





 ———もうどれくらい時間が過ぎただろう。



 クルラーナ山脈の手前に着いてから魔獣の群れは計画通り、お父様が率いる第1騎士団たちが引き連れて行ったと聞いた。


 魔獣は人間を襲う習性を持つため、それを利用した形になるのだが。

 雑魚の魔獣は案外弱く、魔術師に強化された騎士の剣でなら容易に倒せる。


 けれど今回は群れを率いる強敵「グレイシャル」をどう倒すのか…



 「エステレラ様は、陛下の強さを知っていますか?」


 「お父様の?」


 先ほどまで私がむくれていたことなど何の問題もなく、ええ、とディーは頷いた。


 「そうね…帝国一強い魔力を持っているっていうことでしょ?

 それから比較的強い赤の魔力であること…広範囲の加護魔法を展開できて、同じく広範囲の味方への強化ができる魔術にも長けていて…」


 「確かにそれもありますが…アウトリタ陛下の魔力の強さは何と言っても『想い』にあります。

 陛下が皇后様…トリステル様を溺愛なさっているのはご存知ですよね?」


 「…物凄く存じてるわ。」


 今だに、こっちが目を背けるくらいラブラブすぎる夫婦だもの。

 宜しい、とディーは頷いて続けた。


 「陛下の魔力は、愛する者を想う気持ちが強ければ強いほど増大します。

 陛下には、心から愛するトリステル様がいて、同じように愛する皇女様がいます。

 さらに陛下はレールタの国民全てをとても愛していらっしゃる。

 その想いがある限り、陛下の魔力は増大し続けるでしょう。

 だから、今回の魔獣討伐にもきっと打ち勝つことができるはずです。」


 ディーは力強く、自信たっぷりに笑う。

 それを見ていたら、張り詰めていた緊張が解きほぐれていくのを感じた。


 「もともとお強いと思っていたお父様ですもの。それを聞いてもっと心強くなったわ。

 ディー。私の不安を取り除こうとしてくれてありがとう。

 …あなたは本当に優しいわね。」


 ディーの細やかな気遣いに、こちらも思わず笑顔を返した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ