現世編/雪山の一夜①
———計画は、クルラーナ山脈の麓でディーとエステレラが大穴を塞ぐ間、アウトリタが率いる第1騎士団および皇室魔術師たちが麓から村や街がない方角へ魔獣の群を引きつけるというものだった。
さらに第2、第3騎士団はアウトリタらの側面の二手に分かれ、討伐から溢れた魔獣を村や街、帝都に向かうことがないよう残らず殲滅する。
それから挟み込むように第1騎士団に合流。
安全な後方に医療班を置き、帝国から集められた治療師を待機させる。
魔獣の討伐には参加できない兵は、ケガをした騎士団や魔術師を介抱したり、逃げ遅れた人々を避難させたりする。
また、不足にならないように最低限の食糧や物資、武器の管理をする基地を築いておくことに。
皇室騎士団以外にも国には上級貴族や民間が持っている独自の騎士団が存在しており、魔術師にも同じことがいえたので、事前にそれらの協力を得た。
さらに国境付近に隣接する友好国にも騎士団や魔術師を配備しておくようにと報せを出し、短期間に戦いの体制をできるだけ整えた。
◇◇◇
〈クルラーナ山脈の麓〉。
そう簡単に異界に繋がる大穴が見つかるとは思ってなかったけど、クルラーナ山脈から吹き荒れる大雪が私とディーの足止めをしていた。
「…大丈夫?ディー」
「わたしは大丈夫です。それよりエステレラ様こそ大丈夫ですか?この雪では…」
互いの体に加護魔法をかけて低体温になるのを防いではいるものの、激しい吹雪のせいで、視界が悪く、雪に足が何度も取られてしまう。
悪いことにさらに吹雪はひどくなり、一向に止む気配がない。
こうしている間にもお父様や騎士たちが必死で戦っていると思うと気ばかりが焦る。
しかしそんな私を分かっているのか、ディーが言った。
「エステレラ様。気は焦りますが、このままでは2人とも体力を消耗するだけです。
吹雪が止むまで、どこか横穴を見つけて身を隠しましょう。」
「…ええ、そうね。」
ディーの言う通りだ。
いくら気が焦っても物事にはタイミングというものがある。
万全を期すためには今は吹雪が止むのを待ち体力を温存することが賢明だろう。
ディーのことも心配だし…
…もちろん、ローアルも今回の討伐に参加している。
第1騎士団で団長に次ぐ実力の持ち主のため、おそらくお父様と同じ最前線で戦っているに違いない。
決して彼が弱いとは思っていない。
けれど皆と同じように、無事に戻ってきてほしいと願わずにはいられない。
あれから数時間してようやく横穴を見つけた私とディーは、魔力で火を起こして雪に濡れた服や身体を暖めた。
継続して使う魔力は消耗が激しい。




