現世編/とある騎士の復讐②
エスピーナは前世でのことを走馬灯のように思い出していた。
———スラム街で見つけた、質素な服に身を包みながらも誰よりも美しい少年。ローアル。
珍しい銀色の髪に薄紫色の瞳。
一瞬で虜となった。
あれを手に入れて、隣に置いて、あらゆる人に見せびらかせたいと思った。
…処刑される日の当日。
ローアルは笑っていたわ。
まるで早く、私に死んでほしそうに。
自分だってもうすぐ死ぬくせに。
何で…?
何でよ。
あんなに愛してあげたでしょう?
エステレラが死んだ後は、豪華な暮らしも贅沢な品物も用意してあげたわ。
あなたを苦しめた貴族たちも、全員殺してあげたじゃない。
何が気に入らなかったの?
まさかトルメンタ帝国を滅びに導くなんて…
何で愛してくれないの?
結局、ローアルは一度もわたくしを抱いてくれなかった。
わたくしはこんなにも、貴方を愛しているのに。
「ああ、誰からも愛されてない可哀想な皇女様だから、俺が愛して差し上げますよ。
一緒に奈落の底に堕ちましょう?エスピーナ様。」
暗く低い声が響く。馬が崖下へと転落する前に、フォンセのナイフがエスピーナの心臓へと深く突き刺さる。
「……………ッゥ」
もう呼吸ができない。
エスピーナの血まみれの頬に、同じように血まみれの手でフォンセが触れる。
狂気に満ちたその目は最高だと物語っている。
「愛していますよ、エスピーナ様。」
…わたくしは、お前に愛されたかったわけじゃない。
せっかくの二度目の人生なのに。
これじゃあ何のために生まれ変わったの?
こんな最期を迎えるはずじゃなかった。
ローアル、私を愛して……!!
お前に愛されたかったのに、また愛してもらえなかった。
わたくしを…愛してよ。…お願い…………
エスピーナとフォンセを乗せた馬車が、深い奈落の底に堕ちていく。
前世でたくさんの人の血で手を汚した者同士、まるで地獄にでも向かっていくように。
もう二度と魂さえ蘇ることのない、深い場所へと————————。
◆登場人物◆
【エスピーナ】…亡国トルメンタ帝国の女皇帝だった。レールタ帝国で下民に生まれ変わる。
前世の記憶を持つ。
【フォンセ】…亡国トルメンタ帝国でエスピーナの専属騎士だった。レールタ帝国で下民に生まれ変わる。前世の記憶を持つ。




