現世編/とある騎士の復讐①
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世の中面白いことが起きるもんだ、そう男は思った。
目が覚めたら平民以下で、捨て子だった男は生きるためなら何でもやった。
おかしな事に彼には前世の記憶があり、その苦い記憶はいつも心の奥底で燻っていた。
まあ、前世の記憶なんて誰かに話した所で引かれるのがオチだからと、人に打ち明けたことはなかった。
しかし結局何者にもなれない男は、気づいたら金さえ貰えれば強盗や殺人など何でもやる傭兵になっていた。
こうやって二度目の人生を下らないと生きていた男に、奇跡だと思えるようなチャンスが訪れた。
…男は長いことずっと待ち続けていた。
300年間もずっと。
レールタ帝国の皇女を暗殺しようとして、監獄送りになったのが誰かって?
そんな情報聞いてどうするんだって?
まあ、それに答えた所で誰も男の気持ちを理解できるはずない。
とりあえず男はただ、その女を無性に殺したくて堪らないって話なだけで。
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最北端に近づくにつれ、白い雪がチラチラと降り始めた。
監獄送りになったエスピーナを乗せた馬車が足場の悪い道を走る。
両手には魔石の手錠。
両脇には兵ががっちりとエスピーナと密に座っていて、逃げ道などない。
「…なん、で。何でよローアル…なんで貴方はわたくしを愛してくれないの…?
結局前世でも、思い通りに行かなかった…
貴方はわたくしに一度も心も身体も明け渡さなかった…
あの子は死んだのに。殺したのに。
わたくしが勝ったはずなのに…
…愛されたい…愛されたいわ、ローアル!!
貴方に愛されたいのローアル!!!」
煩いなと顔を顰めた兵が、突然止まった馬車の異変に気付いて外に降りた。
「ッ!何だお前ら…」
「どうした…ひっ!!」
外に降りたもう一人の兵士の首に鋭いナイフが突きつけられる。
そこには兵士2人を拘束し、御者を足止めした柄の悪い傭兵が数人いた。
「…俺が愛して差し上げますよ、愛しい俺の、エスピーナ皇女様。」
エスピーナ以外に人がいない馬車に乗り込んできた男は、まるで宝物でも見つけたかのようにニヤリと笑った。
身長は200センチほどある大柄の男は、動物の毛皮を身につけ粗末な服を纏い、腰に短剣を忍ばせていた。
「…………フォンセ?」
小さく引き攣った頬で、エスピーナは目の前に立ちはだかる背丈の大きいその男を見上げた。
「当たりですよ、皇女様。
…久しぶりですね。300年ぶりですか…?
お元気でしたか?
俺は貴方に会いたくて堪りませんでしたよ、エスピーナ様。」
「ふ、フォンセ…わたくしの騎士、わたくしの専属騎士…
わたくしを救いに来たのですね?」




