表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/158

現世編/忘れ去られた皇女②


 どういう状況なのだろう?


 混乱する私や兵をよそに、先にローアルが沈黙を破った。


 「…正直言って、その顔は見たくなかった。

 二度と、会いたくなかった。

 …だって、会えば殺したくなるから。」


 「……………………えっ?」


 ローアルの言葉に、嬉しそうだったエスピーナの表情が次第に崩れていく。

 良く分からないが、私は宥める様にローアルの肩に触れた。


 「ローアル…?

 ありがとう、もう私は大丈夫だから…」


 「……だめなんです。皇女様。

 この女は、殺さなければ。」


 「…え?」



 「———またそうやって、君は。

 どこまでいっても君は魂の髄まで悪女。

 救いようのない悪だ。

 またこうして傷つけるつもりなら…」


 冷たい瞳をして、ローアルは剣のグリップ部分を強く握りしめた。


 「な、何するのよ?ローアル?

 わ、わたくしたち、前世では夫婦だったでしょう?

 あんなに愛し合ったでしょう…?

 まさかそんな、わたくしを殺そうだなんて、ねえ?悪い冗談で…」


 標的を逃さないためか、ローアルは間合いを少しずつ詰めていく。


 完全に、冷静さを失っている。

 脅えるエスピーナへとローアルが踏み込んだ瞬間、私は大声で叫んだ。


 「駄目よローアル!!

 殺しては駄目………お願い…!!!」


 あと僅かでも遅ければ、エスピーナの頭上にローアルの剣が振り下ろされる所だった。


 しかしローアルは私の声に反応してその手を止めた。


 「あ……」


 エスピーナは泣きながら脱力し、その場にへたり込んだ。


 私はまだ剣を下ろさずにいたローアルの震えた手を掴み、一緒にそれをゆっくりと下ろす。


 「ローアル。

 あなた達の間に、一体どんな因縁があるかは知らない。

 けれど、この帝国の誇り高き騎士団の剣は、感情的に人を斬って血で染めるためにあるのではないわ。

 この国の全ての人を守るための剣よ。

 …あなたのその大切な手を、恨む誰かの血で染めては駄目よ、ローアル。」


 カランと剣が床に滑り落ちた。

 ローアルが冷静になったのを見て、私はすかさず兵達に命令した。

 

 「さあ、エスピーナを拘束して!

 剣を遠ざけて、速やかに牢に連行するのよ。

 少女だからと言って、二度と油断してはいけないわ!」


 それまでを呆然と傍観していた兵達は、ようやく我に返って動き始めた。


 今しがた死んでいたかもしれない恐怖心を颯爽と払い、皇女として毅然とした態度を取る。


 私は皇女だ。こんな時に素早く判断を下すのも私の仕事。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ