現世編/忘れ去られた皇女①
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「エスピーナですわ、お父様!わたくしを覚えていらっしゃらないのですか?」
兵に捕らえられたその少女は、玉座に座るお父様に向かって懸命に叫んでいた。
遡ること数時間前。
皇宮の城門前で戯言を騒ぐ妙な少女を、兵が取り押さえた。
その少女の言うことがあまりに常軌を逸してたので、何かの陰謀かもしれないと、皇帝であるお父様の耳に入ることになったらしい。
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「エスピーナ…?君は平民か…?
どうしてそれ程までに、わたしの娘だと言い張るんだ?証拠は?」
玉座に座るお父様は、ここ最近では滅多に見せない、殺気立つような顔をしていた。
「証拠ですって…!?
よく見てくださいませ!
この髪の色に、顔の輪郭も!
どう見ても、わたくしとお父様はこんなにも外見がそっくりですよね?」
少女は怯むことなく訴え続けている。
側にはお母様と私、事態のために召集された高官と、ディー、ほか騎士団員が控えている。
…確かに外見は、金糸のような髪色がお父様に似ている。
しかしそれ以外に目立つような類似点はない。
…それでも私もお母様も、内心穏やかではないというものだ。
だってこの少女が万が一、可能性はゼロに等しいけれど、もし本当にお父様の娘だとしたら、お父様がお母様以外の女性とお付き合いしていたことになる。
でも…私が知っている皇帝アウトリタ・ピアセ・レールタ一世は初恋がお母様であり、それ以外の女性は寄せ付けなかったと聞いている。
側室を持つような後宮は持たず、レールタ帝国の皇帝は1人の皇后を溺愛しているというのが、周知の事実。
それを…この少女は何を証拠にこうも自信を持っているのだろう?
「信じられないかもしれませんがわたくし…
下民で、とても汚いスラム街で育ちました。
ですが、本当はそうじゃないのです…!
21歳の今までずっと忘れていましたが、ようやく思い出したのです。
わたくしがお父様の娘であったこと!
そして高貴な血筋であったことを…!」
静まり返る謁見室。
高官や、騎士団員たちは騒めいたが、お父様が冷静さを崩すことはなかった。
「…母親は誰だ?
わたしの娘だというのなら、そなたの母親がわたしと関係を持ったことになるが?」
「っ…母親は下民で、しがない女です。子を産むことしか出来ないような…」
「…名前は?
それがわたしと関係を持ち、子を産んだと証明できるのか…?」
お父様は元は前皇帝の騎士団を率いる司令官だった。
強くて、剣術も長けており、また戦争においても騎士団を率いて勝利へ導くほど、策略にも長けていた。
腐敗した前皇帝を倒し、自身で国を興す前から現皇后のお母様に出会っており、その頃から変わらず溺愛していると聞いている。
他の女性に目移りなどしたこともなければ、今後する気もないと、いつも自負していたほど。
それほどまでにお母様を愛しているのに、そんなお父様が他に女を作り、子供まで宿すはずがない。




