現世編/デートの余韻
———約束をすっぽかされたあの日。
城外で買った髪飾りをローアルはエステレラにあげたかったのに、それは叶わなかった。
エスピーナがローアルの買った髪飾りを盗んだからだ。
あれをエスピーナの部屋で見つけた時、ローアルは絶望した。
エステレラに似合うと思って買った琥珀色の石がついた髪飾り。
あの日と同じ物ではないけれど、似たような髪飾りをやっとエステレラに渡すことができた。
残念ながらデート中につけることはなかったが。
いつか髪に飾って見せてほしいと願った。
…前世で出来なかったこと。
エステレラにしてやれなかったこと。
言ってやれなかったこと。
全てを捧げて、今も愛しているとローアルは伝えたかった。
その日の夜、ローアルはなかなか眠れなかった。
宿舎のベッドで今日の幸せなデートを何度も思い出してしまったから。
なので随分と時間が過ぎてからようやく目を閉じた。
数日後。突如、皇宮に激震が走る。
「皇帝陛下、皇宮の外を彷徨っていた怪しい女を捕らえました!
何でも、自分を陛下の娘で『皇女』だと名乗っているそうです…!」
「…何だと?」
執務室に慌ただしく走り込んできた兵の一言。
執務をしていたアウトリタが立ち上がると、そばで補佐をしていたトリステルは手を止め、その表情が曇った。
「一体、何者だ?」
「それが…女は亡きトルメンタ帝国の皇女で、名前をエスピーナだと名乗っています。
…いかがなされますか?」
平和だった皇宮に、これまでにない緊張が走る———。




