現世編/二人からの求愛②
迷わず私がそう答えると、ディーは納得するかのように頷いた。
「…貴方はそう言うと思ってましたよ。」
やがてディーは私の側まで迂回してきて、突然その場に跪いた。
「っ…ディー?どうして跪いて…?」
「皇女様…エステレラ様…以前わたしが大切な人がいたと話したのを覚えていますか?
それが…もしもエステレラ様だと言ったら?
もしもわたしが貴方を好きだと言ったら……
迷惑ですか?」
顔を上げたディーの、見えないはずの目が、まるで見えているようにも思えた。
ディーが私を…好き…?
「ディー…?」
ディーは私の左手を静かに取り、そっとキスをした。
そして今度は力強く私の両手を握り締め、何だか泣きそうな声で言った。
「わたしは…ローアルに、貴方のそばにいて欲しくないのです。
あの男は危険です。何かよからぬことを企んでいるかもしれません。」
ローアルが…?
なぜディーがそんなことを?
ディーは、縋るように私を見つめてきた。
でもなぜ、ローアルを憎むような口調なのか、全く分からなかった。
「わたしを見て頂けませんか?……エステレラ様。
ローアルでは無くて、わたしを…
どうしたら貴方へのこの気持ちを理解して貰えますか?」
まるで泣いているみたいに、声が震えている。
ディーの言葉一つ一つ、必死に絞り出しているように聞こえる。
「貴方に愛していると証明するためには…
どうすれば良いですか…?」
ディーが私を愛してる…?
その証明をする?
…ちょっと待って。
私とディーの出会いはこの1年ほど前のこと。
これまで私とは師と生徒のような関係でしかなったはずだ。
私たちは5歳違いで、ディーは頼れる師だと思って接してきたけれど…
なぜこんなにも急に…?
「エステレラ様、わたしは本気です。
…愛しています。
ですが、どうすれば貴方に愛されるか分かりません。なので、ぜひ、エステレラ様がその証明方法を考えてみてください。
今はまだ急かさないですが、後で必ずお返事をいただきたいのです。」
ディーはようやく私の手を離し、失礼を詫びるかのように頭を下げた。
それから突然の告白にも関わらずディーはいつもの澄ましたような表情に戻り、颯爽と部屋を去っていってしまった………
…嘘でしょう?
ディーが私を愛している、ですって!?
どうすれば愛を証明できるかなんて、そんなの私にも分からないわ。
だって私はまだ誰かを好きになったり、愛したりしたことがないんだもの。
ディーといい、ローアルといい、私の周りの男たちは一体どうしてしまったの…?
恋愛経験ゼロの私は、お父様直伝の恋愛指南書を何度も見ながら、分からない二人の男心を悶々と考えていた。




