現世編/300年後も愛してる?
今年で40歳を迎えるこの国の最高権力者である皇帝のくせに、お父様は未だに情熱的な少年のように照れた顔をして見せた。
「…エステレラよ。
…人を愛するということはとても奥深いことなのだ。
確かに今までお前には婚約者の一人も決めてこなかった(なぜなら嫁にやりたくないから)。
でもお前は今年で17歳。
来年には結婚してもおかしくない年だ。
お前の大事な婚期を逃さぬためにも…
お前は少し、愛について学んだ方が良いのかもしれないな。」
久しぶりに見るお父様の真剣な顔に、思わず息を呑んだ。
「愛について…でもどうやって?」
「それは…………」
皇帝として新しい法律を吟味する場面よりも、情勢が厳しい他国との苦渋の交渉の場面よりも真剣そうな顔をして…お父様は私にこの本を手渡した。
『恋愛指南書・著作・アウトリタ』
分厚いその本の中身は、お父様直筆の、恋愛に関するアレコレが細かく書かれていた。
寝る前にメイドを下がらせると、天蓋付きのベッドに横になってそれをめくって見たけれど。
(拗ねている彼女の機嫌を取るためには)
(1、ケンカをした時に仲直りする武器として、甘いスイーツは効果的)
(2、愛しているところを100個言う)
(3、行きたがっていた旅行に連れて行く)
(4、…)
(こんなところが可愛いなと思う瞬間)
(1、たまにツンデレする)
(2、甘えてくる)
(3、好物の料理を作ってくれる)
(4、…)
(……)
これ、どう見てもお父様がお母様に対する溺愛に関するメモだよね…?
「……つまり私は何を見せられているのでしょう。もう、お父様ったら、アハハハ!」
思わず吹き出してしまったけれど、考えてみればお父様とお母様がいつまでも仲良しでいてくれるのは、素晴らしいことなのだ。
そう。
二人を見ていれば本当の愛というものが何なのか、分かる日が来るのかもしれない。
そして…私にあんなことを言うローアルの気持ちも。




