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現世編/300年後も愛してる?


 

 —————なんかすごく可愛がられてません?


 あの、ローアルとかいう美少年。

 団員にもみくちゃにされて笑っている。

 …ちょっと汗臭そうだけれど。


 騎士団の早朝訓練に、水分補給の差し入れをしようと思って自前のレモン水を持ってきたのだけれど。


 バスケットいっぱいに入った手製のレモン水を持って、うろうろしながらその様子をしばらく眺めていた。


 「皇女様!」


 「あ、皇女様だ!おはようございます!」


 「おはよう、みんな。訓練ご苦労様です。

 そろそろ水分補給をしませんか?」


 やっと団員たちが気付いてくれたのでほっとし、駆け寄ってきた順から容器を手渡す。


 いつも魔獣と命がけで戦っている彼らを少しでも労いたいという思いから、こうして定期的に騎士団を訪れては差し入れをしている。



 「はい、…次の方どうぞ………」


 「皇女様、おはようございます。」


 「はい、おはよう…」


 容器を取ろうとバケットに手を伸ばしたはずが、何故かその手を取られて、手の甲に口づけをされる…


 「今日も愛しています、皇女様。」


 「ろ、ろ、ろああるぅ!!?」


 呂律が回らない。

 不意打ちのように私の手にキスをして、ローアルは満足そうな顔をする。


 …何でこの人はこうなのよ?


 って…今まで手の甲にキスしてくる団員なんて1人もいなかったわ…!

 何て大胆不敵な…!


 周りが騒然となる中、ローアルは真っ直ぐに私を見つめてくる。


 何なの。その綺麗な薄紫色の瞳に見つめられると、逸せなくなるわ。


 「明日も変わらず愛していますよ。

 皇女様。」


 こちらが思わず顔を背けなければいけないくらい情熱的なセリフを何の迷いもなく言うの、どういうこと。


 「あ、明日も愛してるなんて…そんなことどうして言えるのよ…?」


 少し意地悪そうに切り返すと、ローアルはまた視線を合わせて幸せそうに笑った。


 「言えますよ。明日も明後日も…1年でも300年後でも。あなたを愛していますと。」






 「お父様。明日も明後日も…300年後も愛していると宣言するその心、どのようなものか分かりますか?」


 執務室で政務をしているお父様の仕事を補佐しながら、私は恥を忍んで尋ねた。


 「…ハア。もしかしてまたローアルか?

 全くあの少年は油断も隙もないな。

 うーん。…明日も明後日も…300年後もか…

 もし本当にローアルがお前を愛しているとするなら、あ!仮にだぞ?仮にそれが事実なら、そう思えるのも理解できる気もするが…」


 考えたくないことを渋々考えるように、お父様は天井を仰ぎ、応える。


 「分かるんですか…?」


 少し遠い机にいる父に向かい、私は勢いよくソファから立ち上がり、食い入るように聞き返す。


 「まあ…こと恋愛に関してはわたしもローアルに引けを取らないくらい語ることができるぞ。

 何でもトリステルに当てはめれば、答えが出るからな。」


 「つまりは…!?」


 「わたしがトリステルを溺愛しているのはお前も知っているだろう…?

 そのトリステルを…わたしは明日も明後日も…300年後もたとえ1000年後でも愛していると、自信を持って言える。」


 …え。

 つまり私は一体何を聞かされているのだろう?


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