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現世編/新しい日々②


  

 「…アル、ローアル・リーベ!起きろ!早朝訓練だ!」


 野太い怒鳴り声で覚醒する。

 

 生まれ育った家のよりも固いベッド。

 同じようなベッドが他に3つ。小さな部屋でテーブルは1つ。

 クローゼットには皇室騎士団の制服がかかっている。


 一瞬ローアルはあたりを見回して状況を確認した。…そうだ、と目が覚めた。


 確かに昨夜から皇室騎士団の寮に入った。

 目の前で激しく怒っているこの人物が誰か思い出した。


 「おはようございますステルク団長。

 そうでした。早朝訓練でしたね。

 今すぐ向かいます!」


 前世ではあり得ないほどの作り笑顔を振り撒き、ローアルはすぐに訓練用に支給された制服に着替えた。


 「うむ、早くしろよ!初日から遅刻なんてあり得ないからな!」


 若く、体が岩のように硬そうな団長は、暑苦しい怒声と共に扉の向こうへ消えていった。



 ———————

 


 …まだ薄ら明るい夜明けから、皇室騎士団の朝の訓練が始まる。


 ランニング、基礎ストレッチ、基本の剣術トレーニング、それから練習試合をする。


 まだ入団したばかりのローアルにも同じメニューが与えられ、試合はランダムに選ばれた者と対戦することに。


 前世で身につけた技術は一度死んでも身についていて、それにプラスして小さい頃から訓練だけは続けていた。



 「…そこまで!ローアルの勝ちだな!」



 気が付けば、ローアルは汗だくになるほど夢中になり、相手方の剣を地面に叩き落としていた。


 「くそぉ〜。やっぱり強いな。」


 「さすが今年度の選抜試合1位の実力だな!

 独学で学んだなんて思えん!ワハハハ!」


 なぜか自慢げにローアルの肩を豪快に叩いてくるステルク団長に、また得意な作り笑いを浮かべる。


 前世でもローアルは騎士として厳しい訓練をしてきたけれど、こうして和気藹々とした雰囲気の中でやることは一度もなかった。


 何も考えずに夢中になって汗を流していたことに驚いた。



 「ところで、ローアルお前さ〜。あの皇女様にプロポーズしただろ!?しかも皇帝陛下の前で!

 すごい勇気だよな!」


 昨日の最終試合で対戦し、2位になった同僚の男が興味津々に、ローアルの肩に手を置いた。


 「俺も見てたぞっ!お前体は小さいのに強いし、ハートも強すぎやしないか?」


 「何何?何の話してんだよ…」


 あっという間に人だかりが出来き、人より小さいローアルはすっぽりとその場に埋まってしまった。


 「エステレラ様はこのレールタ帝国の最高の皇女様だ。俺たちには手も足も出ない高嶺の花なんだぜ、それをすご…!」


 「それに優しいんだよな、エステレラ様は。

 たまに騎士団にも立ち寄って俺たちを労いにお菓子を持ってきてくれるし〜」


 「皇族だからって偉そうにしないから、国民にすごく親しみを持たれて愛されてるんだよ。」


 誰もがエステレラのことを、まるで自分の恋人のように自慢している。



 「さすがエステレラ様ですね。

 …そのエステレラ様を誰よりも愛しているのがこの僕です。」


 汗を拭きながらローアルが堂々とそう宣言すると、一瞬固まった団員たちが再び興奮して盛り上がる。


 「ヒュー!こいつぅ!どこまでも図太いな?」


 「一体いつエステレラ様に恋したんだよ?教えろよな〜。」


 さらに団員が増えた。

 汗だくのむさ苦しい男たちの中でもみくちゃにされたローアル。面倒くさいのに、なぜか笑ってしまった。


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