現世編/プロポーズは突然に②
皇城に場所を移し、謁見室でローアルはお父様に跪いているのだが。
「皇女様と結婚したいのです。」
「だから…なぜエステレラなんだ…!!理由を言え。地位か?名誉か?金か?陰謀…?
たった数時間前に出会った皇女を、まさか愛…しているなんて認めるわけないだろう!」
「地位も名誉も金も要りません。陰謀もありません。
ただ、皇女様を純粋に愛しているのです。」
お母様はいつお父様がキレて剣を振り回すか分からないため、すぐ側に控えているし、私はローアルの、家族を通しての熱烈なプロポーズにただ愕然としているのだった。
「レールタ国の恋愛は自由だ。それが皇女と言えども。
確かに平民でも結婚を許さないわけではないが…」
愛していると繰り返し、それが皇帝だろうと粘るローアルにお父様は少し怯んでいた。
謁見室には他の騎士団員も控えていたが、私の横には何故か厳しい顔をしているディーの姿がある。
目は動かないけれど、なんでローアルをあんなに睨んでいるように見えるのかしら…?
「頑なに愛していると言うが…ローアル。
お前のその言葉を信じるのは無理がある。」
すっかり疲れ果てたような顔のお父様が、それでも負けないという風にローアルを牽制する。
「…では、どうすればわたしを信じてもらえますか?」
「ローアルよ。人に信じてもらうためには信頼を勝ち取らなければ始まらない。
騎士団員として魔獣討伐での功績を上げるだとか…団員のトップクラスを目指すだとか…
そうして築きあげたものがあればな。」
「分かりました…!魔獣討伐で功績を上げ、騎士団でトップクラスを目指します!
それで…」
興奮気味に目をキラキラと輝かせ、顔を上げたローアルを制し、皇后であるお母様が諌めるように前に出る。
「ローアル。少し落ちつきなさい?
あなたがエステレラを愛しているとして…
本人の気持ちを無視してはいけないわ。
ね?エステレラはこの件をどう考えているのかしら?」
…よく言ったわ!!お母様…!!
そうよ?ローアル。
私の気持ちを無視してプロポーズするなんて。
愛を語るには少し早すぎるでしょう?…って私も愛がなんたるかは全く知らないのだけれど。
「コホン…そうですわね。
確かに…お父様やお母様の言う通りですわ。
出会ってまだ数時間…にも関わらず愛してると言われても…私は貴方という人間を全く知らないのです。
なので、とりあえずお父様の言うように魔獣討伐での功績を上げ、騎士団のトップクラスを目指して下さいませんか。
そうすることで私の心ももしかすると(?)動くか………」
「分かりました、皇女様。
皇女様のためなら喜んでその二つのことを必ず成し遂げます。
そしたら、ご褒美を下さいますか?」
…こら。皇族の話を遮るんじゃありません。
「こら…!ローアルよ、皇女の話を遮るんじゃない!…それに褒美だと?調子に乗るな」
普段温厚なお父様がまた剣を抜こうと激昂し、それをお母様が必死にお止めになっている。
にも関わらずローアルは顔を紅潮させ、まるでアメジストのような薄紫色の瞳で私を熱く見つめている。
なんか子犬のようだわ。
「…褒美とは…?」
形式的に尋ね返すとローアルは飛び跳ねそうな勢いで言った。
「皇女様と、1日デートする権利が欲しいです!」
…うん。頭が痛いわ。そうだ。結局薬飲んでないし。
その後お父様の血圧が上がって、ぶっ倒れそうになるほど激怒したのは…言うまでもない。




