現世編/プロポーズは突然に①
次の瞬間。
「エステレラ……」
———切ない声で、少年に名前を呼ばれた気がした。
噴水を挟んだ先にいる銀髪の彼が、真っ直ぐに私の方を見ていた。
甲冑を身につけているから、今日の試合に出る方かしら。
それより名前を呼ばれたような…?
「…あら?…私たち、どこかで会ったことがあるかしら…?」
聞き間違いでなければ、確かに私の名前を呼んだはずだ。
少し遠くで見にくいけれど、美しい薄紫色の瞳が泣いているように揺れていた。
「………………。」
「…?」
「失礼しました。…皇女様。」
胸元に手を当て、とても洗練された紳士的で丁寧なお辞儀をする。
銀髪の髪がふわりと靡いた。
小さく華奢に見えるけれど、多分体は相当作り込まれている。
きっとこの日まで懸命に訓練をしたんだろう。
何かよく分からないけれど、ここに居るということはもしかして皇宮で迷ったのだろうか。
「あなた、試合に出るのよね?…迷ったのなら会場まで送るわ。」
「…いえ。
皇女様を追いかけて来たのです。」
「…?何のために?」
「…皇女様を好きだからです。」
……………ん?
「…好きです。皇女様。」
……???
「愛しています。僕と結婚してくださいませんか?皇女様。」
「…えっっ!け、結婚?」
「そうです。愛しているので、僕たち今すぐにでも結婚しましょう。」
風が舞って彼の前髪が靡き、その顔の全貌が見えた。
絶世の美男子…が顔を真っ赤にし満足そうに笑っている。
ちょっと垂れた眉毛が妙に愛らしいところがポイントだって……
……!!?
つまりどういうこと?
結婚って…私たち、まだ出会って3分くらいですよね?




