現世編/プロポーズは突然に①
◆主な登場人物◆
【エステレラ】
…レールタ帝国の第一皇女で亡国トルメンタ帝国の皇女の生まれ変わり。誠実で民を大切にしている。前世の記憶を持たない。
【ローアル】
…亡国トルメンタ帝国で皇子として処刑され、平民として生まれ変わる。騎士を目指す。
前世の記憶を持っている。
【ディー】
…亡国トルメンタ帝国の魔術師で、エステレラへの贖罪のために神と取り引きしたことで、盲目で生まれ変わる。
前世の記憶を持っている。
【アウトリタ】
…亡国トルメンタ帝国の皇帝でエスピーナの策略により臣下のフォンセに弑逆されたが、生まれ変わりレールタの皇帝になる。
前世の記憶を持たない。
【トリステル】
…レールタ帝国の皇后。亡国トルメンタの辺境伯令嬢だったが、エステレラを産んで消息を断つ。自殺したと思われる。
生まれ変わり皇后に。前世の記憶を持たない。
◇◇◇
レールタは1年を通して冬が多いが、その日は歓声が上がり、皇都は灼熱と化していた。
それというのも毎年1回、皇室騎士団の新しい団員選抜のための対戦試合が行われるからだ。
試合は一般国民にも広く公開されるため、会場となる皇城の広場には多くの国民が集まり、お祭り騒ぎとなっている。
この国の騎士団員はみな、技術、技量ともに選び抜かれた精鋭部隊である。
アウトリタがこの国の皇帝になってから国政は安定し、戦争の2文字などなく平和そのものなのだが、こうしてより強い皇室騎士団員を求めるのは、時折国民に甚大な被害をもたらす魔獣対策のためだった。
伝承によると、今から約300年前にあった亡国トルメンタの女皇帝が内政を怠り、愛人にうつつを抜かし国を傾かせた結果、国内に魔獣が繁殖した。
そのせいで、今も国境付近では人々が魔獣に襲われ、命を落とす事件が増え続けている。
亡国トルメンタは国内の反乱軍によって滅んだというけれど、女皇帝の名前などが抹消されていて詳しい史実は分かっていない。
事実かは分からないが、極悪非道と言い伝えられているからには、よほど国民の逆鱗に触れたのだろう。
国のトップが…愛人にうつつを抜かしちゃだめでしょう…!!
「…女様?皇女様。」
「あっ。ディー?呼んだかしら。」
もうすぐ選抜試合が始まるというのに、いつもみたいにぼんやりしている私に、ディーの厳しい視線が向けられた…気がした。
「……(現実に)お戻りになられたようで。良かったです。」
「う、あ、うん。ちょっと考え事していたみたい…」
気になることがあるとつい徹底して没頭してしまう私に、ディーは深いため息を吐いて、それから何故かふっと微笑んだ。
私の専属魔術師であるディー・アヴーグルは生まれた時から盲目だという。




