6.侵入
前回のお話。
俺は理事長に呼ばれ、石を見てもらっていた。
俺は発動できていないけど、祐兄は発動していたみたいだ。
「遅刻~」
「いや、先生! 今理事長に呼ばれて!」
「ほぉ、何やらかしたの?」
「何もしてませんって。発動についてです」
「何か分かった?」
俺は理事長室であった事を全て話した。
思っている事も伝えた。
「もしギーラと戦って発動したのであれば、これからの実践練習、もしくは学園を卒業したあと、戦ってる最中に運よく発動するかって事になるけど、危険すぎるね」
「ですよね……」
対ギーラで発動するから、先生と練習しても発動しなかったって事なのかな。
「とりあえず、実践練習で発動する事ができれば安心だね」
「はい。……あれっ? 結衣は休みですか?」
「結月のところに行ってるよ。結界を張っているとき、体力を消耗するから、それを回復しにね」
「結界を張っている最中の人を回復って事ですよね?」
「そう、充電しながら使うみたいな感じ」
「それが可能なら、寄生型の方々は、能力を最大限にできるって事ですよね?」
「うん。本来、能力を使用しながら回復ってのはできないんだけど、結衣は昨日の私達の練習で、それをやったんだ。私が能力を使用中たまたまね」
「それが本当なら、いろんな場所に引っ張りだこですね」
「寂しい?」
「は!? そんな訳ないじゃないですか!」
「他の能力者で試したけど、うまくできなかった。もしかしたら、血縁関係の姉になら、うまくいくかもしれないと思ってね」
「そう簡単にはいかないって事ですね」
「学園の結界は別の人に変わってもらったから、とりあえず安全だと思う。だから、麻陽の実践練習をどうするか考えないとね」
先生、悩んでる。
静かな教室だ。
結衣がいないと、こんなに静かなんだな。
「実践練習には、もちろん先生がついて行く。結衣と麻陽と三人でやるんだけど、麻陽は命に関わる大事な事だ。簡単に『さぁ行こう』とは言えない。麻陽はどうしたい?」
先生は優しいな。
俺の考えは決まってる。
「行きたいです。よろしくお願いします」
「分かった。先生の結界でなんとかするから! じゃあ日程についてだけど……」
先生が話をしている最中、外から爆発音が鳴った。
そして、学園内にサイレンが鳴った。
「学園内に三体のギーラが侵入しました。先生の指示に従い、生徒達は直ちに移動してください。繰り返します……」
三体のギーラが侵入!?
どう言う事!?
「麻陽! 隣のクラスと合流して、トレーニングルームに移動して! 私は結界の修復と、ギーラの殲滅に行ってくる!」
「分かりました!」
俺が言い終わったときには、もう先生はいなかった。
俺も急がないと。
教室を出ようとしたとき、窓の外から聞きなれた声が聞こえた。
「お姉ちゃん!!」
結衣の声だ!
俺は窓から飛び降り、結衣の元へ走った。
「結衣!」
「麻陽!」
泣き崩れている結衣の腕の中には、血を流している結月さんがいた。
「結衣、何があったの!?」
「私、お姉ちゃんを回復させてたら、急に力をコントロールできなくなったの。そうしたら、お姉ちゃんの結界が大きくなって、学園の結界が歪み始めて、気づいたらギーラが侵入してきて、お姉ちゃんが血だらけになって……!」
「落ち着け! とりあえず結衣は、姉ちゃんを回復させるんだ!」
「うん……!」
結衣の回復能力は、まだ半径2メートルまでしか使えない。
同時能力解放は不可。
結月さんを動かせる状態まで回復させて、速くここから逃げないと。
それまで俺がなんとかする!
「君たち大丈夫かい!?」
男の先生だ。
まだ全員の先生の名前、覚えてないんだよな……。
ミラストーンがついたネックレスをしている。
「速く移動しないと!」
「それが、できないんです」
男の先生は、結衣達を見て理解したようだ。
「僕は昨日から実習で来ているんだ。ここの先生になる予定だったんだけど、いきなりこんな事になるなんてね」
そりゃ顔を知らないはずだ。
そんな事を考えていると、先生がいきなり血を吹いた。
体は崩れ落ち、呼吸はヒューヒュー鳴っている。
何が起きた!?
顔を上げると、そこにはギーラがいた。
今まで戦ってきたやつとは違う。
存在感、威圧感、殺気、全てが違う。
なんで気づかなかったんだ!
まだ回復が終わってない。
俺がやるしかない!
「……死ぬ? どうする?」
ギーラがしゃべった……!
「……死にた……くない」
「OK~」
ギーラがそう言った瞬間、先生は心臓を刺された。
血飛沫が舞う。
先生のミラストーンは真っ黒に染まり、胸に空洞ができた。
心臓があった場所だ。
吸い込まれるように石は胸に移動し、穴は塞がった。
……これが、ギーラになる為の契約。
人間ではなくなる。
先生は、人を襲う化物になる……。
汗が止まらない。
息の仕方が分からない。
戦えない。
速く逃げないと。
でも振り向いたら殺られる。
「じゃあね、いってらっしゃい。君はこっちだよ」
ギーラがそう言うと、結月さんの体は結衣から剥がされ、ギーラの足下に移動した。
「お姉ちゃん!!」
「じゃあね~」
ギーラは、結月さんを連れて行こうとした。
「待てっ!!!!」
ギーラは一瞬こちらを見たが、また歩きだした。
「ボスこちらを」
ボス!?
真っ黒な髪、オールバック……あいつがボスなのか……!?
ボスは俺達を見た。
ただそれだけなのに、息ができない。
汗が大量に出る。
体が動かない。
ボスは、無言で結月さんを抱え、いなくなった。
どう言う事だ?
今のうちに速く逃げなきゃ……!
後ろを振り返ったそのとき。
「麻陽! 後ろ!」
「やべぇっ!!」
先生が俺に襲いかかってきた。
勢いで倒れてしまう。
「くっそ……!」
「麻陽! 避けて!」
避けないと、殺られる!
ギーラになったせいで力がすごい!
振りほどけない!!
「麻陽!」
花音先生だ!
「先生!!」
俺はそのとき気が緩んでしまった。
ギーラはその一瞬の隙を見て、俺の首に噛みついた。
「…………っ!」
「麻陽!!」
「結衣……」
何もできないまま俺はここで死ぬのか。
まだ発動できていないのに。
……生きる事を諦めるな。
…………そうだ、諦めたらだめだ。
…………俺は仇をとるんだ!
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
俺はギーラに噛みついた。
次回。
俺は知らない間にたくさんの検査をされていた!
ギーラに噛みつくなんて……今の俺は人間?




