5.見学
前回のお話。
結衣は、負傷者の回復をしていた。
俺はなかなか能力を発動できない。
先生と戦って、回復しての繰り返し。
周りからは、能なしと言われていた。
「今日は学園見学をするよ」
見学って、序盤でするもんじゃないのかな?
俺と結衣は、花音先生について行った。
外に行くのか?
「中はもう知ってるだろうから、外について。学園の周りには結界師が四人います。東西南北、各エリアで結界を張り、守っています」
「そっか、これだけのミラストーンが集中していたら、襲いに来ますよね」
「そう、一日中結界を張っているの。交代制で、仮眠をとってる人もいる」
お母さんもあんな感じだったのな。
「でも百パーセント安全かと言われれば、そうではありません」
「なぜですか?」
「四人の結界の力に差が出てしまったら、結界の薄いところが狙われる。でも力の弱い人に合わせてしまうと、結界そのものがもろくなってしまう。強く均一に結界を張る事がとても難しいの」
「もし何かあった場合はどうなるんですか?」
結衣は恐る恐る聞いた。
「あなた方は、学園内にいる先生の指示に従い避難して下さい」
一瞬、想像してしまった。
この空間に、たくさんのギーラが襲ってきたら、本当に逃げ切れるのだろうか。
先生達は、戦いに勝つことができるのだろうか。
俺と結衣は、無言になった。
「二人とも! 先生達は強いんだからね!」
花音先生は、俺達を見て笑顔で言った。
先生の笑顔はとても安心した。
結衣も笑っている。
俺達は単純なんだな。
「先生、私の姉が結界師なんです。多分、ここにいると思うんですが……」
「えっ? そうなの? 早く言ってよー! 名前は?」
「結月です。私と同じオレンジ色の髪の毛です」
「結月の妹だったの!? 四月から結界師として頑張ってるよ。持ち場は北。行ってみようか」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
結衣、嬉しそうだな。
どんな人だろう。
――――
北の陣地に着いた。
あの人かな? オレンジ色の髪の毛で、ボブの髪型。
「お疲れ様ー! 結月にお客さんだよ!」
「結衣!」
「お姉ちゃん!」
「私が結界、交代してあげるから話しておいで」
「ありがとうございます!」
さすが先生、すぐに結界を張った。
てか、先生って結界師だったんだ!
だけどあんなに攻撃力あるんだ……。
ここの先生達の戦闘力、すごそうだな……。
「お姉ちゃん、私も入学できたよ。みんなと違って結界師じゃなかったけど、医療術師として頑張るからね」
「私もお母さんもお父さんも、結界でみんなを守るけど、結衣はけがした人を守るんだね。一緒に頑張ろう」
結界師家族だったのか。
うちはお父さんと俺が、ミラストーンを持ってないからな。
……お父さん持ってないよな?
あまり会話してこなかったからな。
実は持ってたりして。
「先生ありがとうございました。もう大丈夫です」
「もういいの? じゃ、教室に戻ろうか。結月、お仕事頑張って!」
俺達は教室に戻った。
「どうだった? 結界師によって、この学園は守られてる。私達はいろいろな能力で助け合っている。できない事は他の人が助けてくれる。だからあなた達も助けてあげてほしい」
先生、もしかして俺が能なしって言われてる事、気づいてた?
やばっ、ちょっと泣きそうかも。
「はい! もちろんです! 私、頑張ります!」
結衣は気づいてないか。
俺と一緒でバカだもんなー。
俺も頑張るしかないな。
「先生、発動練習もう一度お願いします!」
「あ、ずるい! 私も術の練習する!」
「いや、今の流れは俺だろ!」
「だから、私が麻陽を回復する係」
「なんで発動練習って言ってんのに、また攻撃されなきゃいけないんだよ!」
「だってー、ねぇ? 先生?」
「あんたち、いいコンビだわ!」
ゲラゲラ笑ってる先生と、にやにやしてる結衣。
二人を見てると悩んでた俺がバカみたいだ。
「よし! よろしくお願いします!!」
――――
数週間がたち、俺達の戦闘力は上がった。
しかし、俺はまだ発動できなかった。
早朝の、誰もいないトレーニングルーム。
俺は一人で発動練習をしていた。
「なんで発動しないのかなぁ……」
俺は、遠くを見てぼやいていた。
部屋に戻ろうとしたとき、ドアが開いた。
「おはようございます。麻陽さん、理事長がお呼びです」
「おはようございます、副理事長。分かりました、これから向かいます」
「よろしくお願いします」
副理事長はそう言うと、ドアを閉めいなくなった。
びっっくりしたー!
理事長が俺に何の用事だろう。
やっぱり発動の事だろうな……。
俺は急いで理事長室に向かった。
――――
着いた……深呼吸をしてドアをノックする。
「失礼します」
ドアを開けると、ソファに座っている理事長がいた。
緊張が走る。
「呼び出して悪かったね、そこに座んな」
「はい」
俺は、理事長の向かいにあるソファに座った。
「まだ発動できてないんだって?」
「はい、すみません」
やっぱりその話題ですよね……。
「何か謝るような事をしたのかい?」
「え? いや、その……俺だけですよね、できてないの」
「バカかいあんた、そんな事で謝ってんじゃないよ、謝んな!」
「ん? え? いや? えっと、謝ってしまってすみません」
「よし、気をつけな」
んんんんんん!?
「あんたのミラストーン、もう一度見せておくれ」
「分かりました」
理事長は俺の手をにぎった。
「………………」
……この沈黙が恐い。
「ちょっと見方を変えるよ」
理事長はそう言うと、右手の指で輪を作り、覗き込んだ。
左手の中指にしている指輪が光っている。
もしかして、これが理事長のミラストーン?
「……やっぱりミラストーンはあるね。亡くなった兄さんのだったっけ?」
「はい、兄さんも発動できないって言ってました」
「そうかい、でも発動はしてるみたいだよ」
「えっ!そうなんですか!?」
「ミラストーンってのは最初、透明なんだよ。だけど、あんたの飲み込んだのは黒っぽい茶色だ。兄さんの髪の色は?」
「黒っぽい茶色です」
「じゃあ、兄さんが発動したって事だろうね」
祐兄が発動した?
確か死ぬ前の日に、祐兄とミラストーンについて話したよな。
そのときは透明だったはず。
発動してないって言ってたよな……。
どういう事だ?
ミラストーンは血で汚れてたから、色なんて気にしてなかった。
お母さんを守れなかったって言ってたよな。
祐兄は、発動してギーラと戦った?
分からない。
どうやって発動したんだ。
「発動したって事が分かっただけよかったんじゃないかい?」
「はい、発動条件は分かりませんが頑張ります」
「私からは以上だよ」
「ありがとうございました! 失礼しました!」
まだまだ頑張らなきゃいけない。
俺は教室まで走った。
次回。
学園内にギーラが侵入!
「死ぬ?」「生きたい?」
ギーラと契約してしまうのか!




