4.トレーニングルーム
前回のお話。
無事、俺は学園に着いた。
周りの生徒は次々と能力を発動している。
なんで俺だけ発動できないんだ!
トレーニングルームでは、実技授業をしている生徒がたくさんいた。
「ちょっと待ってて!」
花音先生は、倒れている生徒の所に行った。
けがの手当に行ったのかな?
ん!? 生徒の足を持って引きずり、こちらに向かって来る。
「おまたせー!!」
めっちゃ笑顔だけど、引きずられてる生徒は白目向いてる!
「じゃ、まずは結衣。この倒れている生徒を治すよ」
「えぇぇぇぇ!? どどどどうやって治したらいいですか!?」
「この人を助けたいと願ってみて」
「それだけですか?」
「あとはミラストーンを意識してみて、何か光ったり、色が変わったり、音が聞こえたりしたら、それに反応してみて」
「分かりました……」
結衣は、目をつぶって手を胸においた。
「助けたい……この人を助けたい……………………何か聞こえる……」
「焦らずじっくり聞いてみて」
花音先生がそう言った瞬間、結衣の指が、うっすら輝き始めた。
「元気回復」
結衣がその言葉を発すると、倒れていた生徒の傷や出血が治った。
「できた……! できたー!!」
「おめでとう! この調子で、そこらへんに倒れている人達を回復させるよ!」
先生、そこらへんって!
「じゃあ、いってらっしゃい! 頑張って!」
「いってきます!」
結衣は大きく手を振り、走って行ってしまった。
「では次、麻陽。あなたはまず、発動の練習」
「ですよね……」
俺は苦笑いをした。
「なんの系統か分からないと、今後の練習にも響くからね。とりあえず、発動条件の可能性を考え、先生が攻撃するのでガードして!」
「え!? こうげ……」
「始め!!」
まだ話してる最中でしょーがぁぁぁぁ!!
先生は、俺の右頬にパンチ、顎にアッパー、フェイントを入れつつ右ふくらはぎにキックをしてくる。
それをすれすれでかわしてる俺やばくない!?
なんて考えていたら、背後をとられる。
「やべっ!!」
「隙あり!」
咄嗟に薙刀に手が伸びるが遅かった。
「がっ……!!」
俺の体はぶっ飛び、壁に直撃した。
「すごいねー、先生の攻撃、完璧じゃないけどかわすなんて。新人にしてはやるじゃん? ……あっ」
「……俺の攻撃も……すごいでしょ……?」
少しだけど薙刀が届いたようだ。
先生の服の一部が切れている。
「結衣ー!! 麻陽の怪我、治して!」
「はい!『元気回復!』」
「おっ、さっきより治りが速くて、治せる範囲も広がったみたいだね。麻陽、何か変化は?」
俺は立ち上がり、先生を見た。
「全然分かりません。先生の攻撃を避けるので精一杯でした」
「そっかぁ、まぁこっちには結衣もいるし問題ないね」
先生はにやりと笑い、俺の方に近寄ってくる。
「え? 今日はとりあえず終わりとか、そんな予定はないですか?」
「まだまだぶっ潰してあげるよ」
「いやいやいやいや!! 先生! 俺、今日入学したばかりで……!」
「結衣の練習にもなる」
「その言葉は卑怯だって!」
「いつでも回復してあげるからねー! 頑張ってー!」
おいっ! 結衣がそんな事言ったら!
その瞬間、目の前には先生がいて、俺は吹っ飛ばされた。
何度も血を吐き、何度も回復、その繰り返し。
俺、やっぱりやばいとこに来ちゃったのかもしれない……。
――――
あれから数日がたったが、俺はミラストーンを発動する事ができなかった。
周りのみんなは、いろいろな技を出せるようになっていた。
「おっ、能なしだ、近づくと俺らも発動できなくなるぞ」
「どけよ能なし」
俺は周りから、能力なしと言うレッテルを貼られた。
お母さんも言ってたっけ、能力の差でバカにしてくる人もいるって。
無視なんてできないよ。
事実なんだから。
俺なんでここにいるんだろう。
……いや、生きる事を諦めたらだめなんだ。
仇をとるって決めたんだ。
俺は教室に入った。
「おはよう麻陽!」
「おはよう結衣」
あれから結衣は、いろいろな技を使えるようになった。
当初、回復術師と言われていたが、毒や幻覚などの技も使える事から、医療術師に変更となった。
「おはよう二人とも」
「先生おはようございます」
「おはようございます」
自信のなさから、挙動不審だった結衣も、今はしっかりとした態度だ。
「この数日で、結衣は攻撃技も使える事が分かった。おそらく寄生型だと言う事も分かった。寄生型は、自分のエネルギーを使えば使うほど強い技が出せる。ただ、総エネルギー量の判断を間違えると、命の危険に関わるから気をつけるように」
「分かりました」
「麻陽は発動はできていないが、持ち前の身体能力の高さで、私の攻撃に対処できるようになってきた。現在、薙刀で戦っているが、何かあったとき素手で戦うには厳しい。敵はすぐに弱点に気づく、作戦を考える事」
「はい、分かりました」
「では今日は、ギーラについての勉強をしましょう。ギーラと契約すると、その時点で人間の心臓は死にます。ギーラにもミラストーンが存在していて、それが心臓の役割をしています。なので、ミラストーンを壊せば死ぬと言う事になります」
「血は真っ黒なんですよね?」
「そう、ギーラのミラストーンと血は真っ黒です。なぜミラストーンが黒いかは分かりません。もしかしたら血を吸収しているからかもと言われています。私達のミラストーンも能力によって色が変化するんだよ?」
「花音先生の、ミラストーンは何色ですか?」
先生は胸まである髪の毛を耳にかけた。
「先生のは薄い黄色です。そして小さめなので、ピアスにしています。ミラストーンは、髪の色と同じ色になる傾向があります」
大きさも人によるのか。
全然周りを見ていなかった。
「このミラストーンは、ギーラを呼び寄せると言われています。そして、ミラストーンを持っていなくても、妬みや嫉妬など感情が高ぶったとき、突然目の前に現れると言われています。絶対に契約してはいけません」
祐兄とお母さんのときは、ミラストーンが二つあったって事だよな……。
先生がポケットから何かを出そうとしている。
「自害用の指輪を渡します。この指輪に力を込めれば毒が回り死にます。」
「自害用……」
「ギーラと出会ったら戦って勝てばいい。けど、もっと強いギーラに出会ったら、無理矢理契約させられるかもしれない」
「無理矢理!?」
「そう、私達の意思とは関係なく。契約させられる前に死のうと思っても、間に合わないかもしれない」
「…………」
俺達は、まだまだ知らない事がありすぎる。
今まで俺が倒せていたのは、運がよかっただけなんだ。
「この指輪を絶対につけなさいとは言わない。私達はみんな、あなた方に生きていてほしい」
俺は先生の所に行き、指輪を手にした。
そして右手の薬指にはめた。
それを見た結衣も、指輪を手にし、右手の薬指にはめた。
俺はまだ死ねない。
仇をとるまでは……。
次回。
学園見学!
結衣のお姉ちゃんが学園に!
能なしの俺は、とうとう理事長に呼ばれる!




