50.晴斗と美月
前回のお話。
学園で死傷者が出ている。
その緊急連絡を聞いた俺達は、学園に到着し理事長室へ向かう。
ドアをノックした。
「どうぞ」
副理事長の声だ。
「失礼します」
「そちらへおすわり下さい」
副理事長は言った。
理事長は目をつぶっていた。
「隅々まで見ているんだが、見当たらないね……」
「今、理事長は、学園内の監視カメラのような役割をしています」
「……花音先生は大丈夫ですか?」
俺は副理事長に聞いた。
「今は話せる状態ではありません。私が発見したときは、血まみれの状態で他に誰もいませんでした。花音先生が簡単に殺られるとは思えないのですが……」
……先生。
きっと、何かがあったから殺られてしまった。
人質?
誰かが殺られようとしていたのを助けた?
「私の回復でも治りませんか!?」
結衣は言った。
「今は、外から来た人を治療室に入れる事はできません」
「そうですか……」
仕方ない。
部外者だから。
「そういえば、響が音が聞こえるって言ってました」
「速い音って言ってたね」
俺と結衣は言った。
その言葉で理事長の目が開いた。
「……茉白。晴斗と美月はどうした?」
「ミスター尚といます」
理事長はまた目をつぶった。
「……見当たらない」
「連絡」
副理事長がミスターを呼んでいる。
「ミスター尚、応答願います。ミスター!」
副理事長の言葉に、ミスターの反応はなかった。
理事長は、指輪を前に出した。
「緊急! 犯人は、三歳の双子の男女の可能性あり。現在、ミスター尚と双子の安否不明。見つけ次第、確保せよ」
理事長は言った。
「ふたっ……」
俺は言葉が詰まった。
「晴斗と美月が!?」
結衣は大きな声で言った。
「……」
理事長の手は震えていた。
「俺達、探してきます!」
俺達は、理事長室を出た。
――――
どこだ!?
「俺と密はあっちを探す!」
颯は言った。
「俺達はこっちを探す!」
俺達は二手に分かれた。
俺達は廊下を走っていた。
「いない!」
「こっちの部屋は!?」
「どこだよ!」
ミスター、晴斗、美月!
時間だけが過ぎていく。
「待って、できるか分からないけどやってみる」
結衣に、何か考えがあるようだ。
「空間」
そうか、ここを結衣の空間にする事で、他の生物を探知できるはず!
「……“序”……いない……“破”……いない……」
どんどん空間を広げていっている。
「“急”………………いた! トレーニングルームの横!」
「急ごう!」
俺と結衣は走って移動した。
途中で、颯と密ちゃんに会った。
合流して、一緒に向かう。
さて、トレーニングルームの横に着いたけど、どこだ?
「毒!」
結衣は、壁一面に毒を出した。
「あそこの壁!」
あそこだけ違う!
もしかしたら、ミスターの能力かも!
「炎!」
「……雷雷」
壁から雷が出てきた。
煙の中から出てきたのは、美月だった。
後ろには、血まみれのミスターがいた。
「美月……」
どっちだ。
犯人なのか、ミスターが保護したのか。
それとも俺みたいに、半分人間の可能性だって……!
「麻陽」
美月は、にこっと笑い俺の名前を呼んだ。
「美月!」
俺はかけよった。
「麻陽! 待って!」
結衣は叫んだ。
「雷雷」
美月から雷が出る。
「防御!」
「電光石火」
美月は素早い速さで、消えた。
あっちの方は、たしか結界師が配置されている所だ!
「元気回復!」
「……ぐっ……ぉぉ……」
ミスター!
結衣はミスターを回復させていた。
「麻陽! 先に行ってて!」
「任せた!」
俺は走った。
――――
!!
学園が揺れている。
みんなの声が聞こえる!
「雷雨!」
稀星!
「大寒波!」
颯!
「鎖鎌!」
密ちゃん!
なんで、どうして仲間同士で戦っているんだ!?
「稀星! お前だって犯人かばってんじゃねぇか!」
颯は叫んでいた。
「颯のはギーラだった! 晴斗と美月は違う!」
稀星も叫んでいた。
「坊っちゃん、あんな人相手にしてはいけません」
晴斗と美月は、稀星の後にいた。
「何!? どうしたの!?」
結衣が走ってきた。
「俺にも分からないんだ」
「稀星ちゃん!」
「結衣! 麻陽! お前らも殺りにきたのか!」
「違う! なんでそうなるんだよ!」
俺は叫んだ。
「なんか様子がおかしいよ」
結衣は稀星を見て言った。
自分の子供だからなのか。
それとも操られているのか。
「姉ちゃんならなんとかできんじゃね!?」
颯は言った。
「鎖鎌!!」
密ちゃんの鎖鎌が、稀星に向かっていく。
「電光石火!」
稀星は、双子を抱っこして逃げていた。
俺は、地面に手を置いた。
「爆破!」
稀星達の逃げ場を失くすよう、炎を壁のように出していく。
これで逃げ場はないはず!
上!?
稀星は上へ飛んだ。
「空中戦で俺に勝てると思ってんの?」
颯!
「強風!」
稀星は地面に叩きつけられた。
「状態異常なら私が治せる! 元気回復!」
結衣は稀星に能力を発動した。
「あれっ……え!?」
稀星は周りを見て驚いていた。
俺達は、稀星と双子を囲んでいた。
「稀星ちゃん、大丈夫?」
結衣は心配していた。
「うん……ごめん、何かしちゃった? ん?」
晴斗と美月が震えている。
「どうした!?」
稀星は、晴斗と美月を見て言った。
「稀星ちゃん、離れて!」
晴斗と美月は、口を大きく開け何か異物を出した。
「なんか出てきた!」
異物は、人魂のような形をしていて、宙に浮いていた。
「晴斗、美月、大丈夫か!?」
「ぱぱー?」
「ぱぱぁ」
よかった!
「あ! 逃げる!」
人魂は上へ逃げていった。
「電光石火! よくも私の子供に!」
「かまいたち!」
「鎖鎌!」
「炎!」
「毒!」
「雷雨!!」
消えた!?
違う、吸い込まれるように人魂は上へ移動した。
……誰かが屋上に立っている。
逆光で見えない。
「強風!」
当たっているはずなのに動かない。
雲の流れが速くなる。
あれは……嘘だろ……。
「結月さん……?」
「お姉ちゃん!!」
結衣は叫んだ。
結月さんの口の中に、人魂が入っていった。
「あー……あー……悪くない」
結月さんは、手をにぎにぎしていた。
そして、右手を上にあげた。
「解」
「えっ!?」
「結界が! まずい!」
学園の結界が解除された!
学園が狙われる!
瞬きをしている間に、宙に浮いた副理事長が現れた。
長い足を真上にあげ、素早くおろす。
直撃だった。
でも無傷だった。
結界を張ったのだろう。
副理事長が、足技で戦っている。
そして、距離をとった。
「アロー」
副理事長の手から弓と矢が出てきた。
「セット、ゴー!」
一本の矢が、結月さんを目掛けて飛んでいく。
「結界」
結月さんは静かに言った。
結界の中に矢が入っていく。
矢のスピードは遅くなったが、弾かれる感じではない。
「いける!」
矢は結月さんの足に命中した。
次回。
花音先生の意識が戻る。




