46.子供
前回のお話。
女性の顔がぼこぼこと動き、血飛沫が舞った。
「あががががががっ……」
女性は何かをしゃべっている。
「母ちゃん!」
悠真は叫んでいた。
女性の顔が変形していく。
あの姿は、まるでギーラだ。
でも、ボスは死んだ。
ギーラはもう生まれないはず……。
「母ちゃん! 母ちゃん!」
「悠真! 離れろ!」
だめだ、聞こえていない!
女性は、口が裂けるくらい大きく開け、悠真を食べようとした。
「重力……!」
だめだ!
まだ悠真に能力を返していない!
「防御!」
結衣のおかげで、なんとかなった。
「逃げて!!」
悠真は、ようやく理解ができたようで、その場から脱出した。
「どういう事!?」
結衣は言った。
「なんでギーラになるんだ!」
俺にも分からなかった。
「とにかく倒すしかない!」
結衣は戦闘態勢に入った。
「炎……!」
俺は、悠真に腕を引っ張られた。
「……っ!!」
悠真は、声にならない声を出していた。
頭の中で葛藤しているのだろう。
あれは母ちゃんであって、母ちゃんではない。
殺さなければいけない、でも殺さないでほしい。
悠真は、とても苦しそうな顔をしている。
「きゃあ!」
女の子が叫んだ。
俺も結衣も、悠真に気をとられ、一瞬出遅れた。
「防御!」
ギーラは、女の子の腕をひっかいた。
血が出てしまった。
「夏世!」
「悠真おじちゃん!」
女の子は泣いていた。
悠真は、腕に包帯を巻いてあげていた。
「ごめんな! ごめんな!」
悠真は何回も謝っていた。
「みんな悪くないよ」
女の子はにこっと笑った。
『みんな』と言う言葉の中には、誰が含まれているのか分からなかった。
でも、悠真は覚悟を決めたようだった。
「麻陽、俺の能力返してくれ」
「……解放」
俺は何も聞かず、能力を返した。
見守ろう……。
「こいよ。この村の平和を乱すやつは、俺が許さねぇ!」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
ギーラが悠真に襲いかかる。
「重力!!」
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
ギーラは重力で押し潰されていた。
「レベル5!!」
「っがっ……!!」
地面にめり込んでいる。
もう終わる。
ボキっ!! と、音が鳴り響いた。
おそらく重力で、骨が押し潰された音だろう。
「母ちゃん、さよなら……」
ギーラが消えていく。
悠真は、その場で倒れこんだ。
「おじちゃん!」
「さわるな!!」
俺は叫んだ。
悠真は、最初に血渋きをあびている。
もしかしたら、ギーラの血が混ざって人間ではないかもしれない。
「復元!」
結衣も同じ事を思ったのだろう。
「悠真、悠真!」
「……麻陽」
「大丈夫か?」
「……ごめん」
「……謝らなくていいよ」
「ごめん……」
悠真は泣いていた。
――――
次の日、俺達は旅立った。
本来なら、悠真とはここでお別れの予定だった。
人間かどうかの検査をすすめたところ、ルークス学園まで一緒に行く事になった。
なるべく早い方がいい。
俺達は列車に乗った。
以前は、学園付近に列車はなかった。
卒業生が自力で戦えるように……何かあれば先生達が助けに行けるように……と言う理由だったらしい。
今は、新たに生徒を受け付けていない。
その為、列車を使えるようにしようとなった。
この線路は、大工の辰さんが造ってくれたものだ。
「そういえば、おじさんの名前って?」
「あぁ、私の名前は一生だ」
一生さんは、何かを言いたそうだった。
「……情けないね。君達が戦っているのを見て、何も動けなかった」
「一生さん! 人には得意、不得意があるからいいんだよ!」
こういうとき、結衣は良いことを言う。
「それに、今ミラストーンって誰も造れないんだよ!」
「そうなのかい?」
「他に、製造の能力者の方もいるんだけど、なぜか造れないって先生言ってた! だから貴重だよ!」
結衣は励ましていた。
「私でも役に立てるかな」
「もちろん! 特に麻陽は必要……あ!」
「あ!」
俺は気づいた。
「え? どうしたんだい?」
「そうだ! 俺には必要なものだよ!」
「そうだよ! なんで気づかなかったの!?」
「「??」」
一生さんと悠真は、訳が分からないようだった。
そりゃ、そうだ。
「あ、そう言う事か」
少し遅れて、悠真は気づいた。
「俺は、ミラストーンを吸収して、自分の能力にする能力を持っているんです」
「えっ、じゃあもしかして、私のミラストーンでも!」
「うん! 俺はすっごく必要!!」
俺は嬉しくて、一生さんと握手をした。
「よっしゃー!!」
「やったね! 麻陽!」
俺はウキウキで学園へ向かった。
――――
「すみませーん!」
俺は、学園に向かって叫んだ。
結界の中から、美雪先生が出てきた。
「あら! 麻陽さん! 結衣さんも!」
「お久しぶりです!」
「お久しぶりです! 元気でしたか?」
「えぇ! そちらの方々は?」
「一人はアミナス、もう一人はほぼアミナスです」
「……ほぼ?」
美雪先生は首をかしげた。
そんな美雪先生の後ろから、ひょこっと女の子と男の子が現れた。
美雪先生と稀星の子供だ。
「あっ、麻陽と結衣!」
「おいで! 美月、晴斗!」
結衣は、しゃがんで手を広げた。
「よし、俺んとこにもこいっ!」
「「よぉぉぉぉいっっっっどぉぉぉぉんんんん!!」」
にやにやしながら走ってくる。
「「ごぉぉぉぉるるるる!!」」
「きゃぁ!! はははっ!!」
「なんで俺んとこに来ないんだよ!」
「麻陽、臭い」
「結衣、いい臭い」
「臭くねぇ!」
「こら! 二人とも止めなさい!」
美雪先生は怒っていた。
「「ごめんなしゃい」」
美月と晴斗は、しょぼんとしていた。
「ごめんね麻陽さん」
「いいえ、二人ともわざとだってのは知ってるんで」
そう、いつも俺の顔を見てにやにやしている。
来るかと思わせといて、急に曲がって来ない。
「双子って本当にいろいろ似てるんですね」
「そうねぇ……今、三歳なんだけど……これからが心配だわ……」
知星と稀星が双子だから、遺伝的に双子が生まれやすかったのかな?
一人でも大変なのに、二人はもっと大変だ。
でも幸せな事も二倍あるだろう。
「麻陽さんは臭くないですからね!」
「いや、そこ!?」
「ママ、鑑定はー?」
「鑑定はー?」
「あっ! そうだったわね! 失礼しました! では、お二人ともこちらへ来ていただいてよろしいでしょうか?」
「「はい!」」
一生さんと悠真は、美雪先生の前に並んだ。
「鑑定」
次回。
花音先生とバトル。




