40.輸血
前回のお話。
由芽は、颯の体から腕を抜いた。
その手の中には、石が握りしめられていた。
「颯!!」
颯は、真っ赤な血を口から吹き出し倒れた。
「チェンジ!! 颯! しっかりしろ! 颯! なんでミラストーンが!」
俺は颯の場所へ移動した。
「ギーラの血液を、固めて石にすればいいだけよ。そのままだと出血性ショックで死ぬわ」
そんな!
しっかりしろ!!
「あなたわざわざ私の近くに来るなんてバカね」
由芽は俺に手を向けた。
……攻撃!
逃げないと!
「チェンジ!」
俺は、颯を抱えて移動した。
「あなたのメモリーは分かりやすい」
……っ!!
もう目の前に……!!
「ドリームキャノン」
大砲がこっちを向く。
殺られる!!
「鎖鎌」
密ちゃん!?
密ちゃんの鎖鎌は、由芽の体にきつく巻きついた。
「なっにすんだよ! このくそばばぁぁぁぁ!! オン!!」
「はぁっっ!!」
「ぎぃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
密ちゃんは人差し指と中指で、由芽の眼球をさした。
「坊っちゃんのミラストーン、返してね」
密ちゃんはミラストーンを奪い取った。
血渋きが舞う中、密ちゃんは冷静にこちらへ歩いて来る。
この状態じゃ戦えない!
「防……」
俺が言いきる前に、密ちゃんは颯の横にしゃがんだ。
「密……」
颯は呟いた。
「坊っちゃん、今お助け致します」
助ける?
戦わないって事?
密ちゃんは俺を見た。
「あなたの力で、私の血を輸血して下さい」
「俺!?」
「はい。あなたの能力ならできるはずです」
「いやいやいや、できないよ! そんなのやった事ないし!」
「できる!」
「できない!」
「できる!」
「だから!」
「できる! やってもいないのに諦めるな!」
「……でも失敗したら」
「そのときは殺す」
「ほら、これだ……」
「私はいい、坊っちゃんを生かす事だけを考えろ」
「……密……だめだ……」
颯は密ちゃんの手を触った。
「坊っちゃん、密は坊っちゃんがいるから密なんです。坊っちゃんがいなければ密じゃないんです」
密ちゃんは颯の手を握った。
「……こんなの失敗なんてできる訳ないだろ……」
俺はため息をつき、両頬を叩いて気合いを入れた。
「……密ちゃん詳細は?」
「坊っちゃんの体内は、ギーラと人間の血液が混ざった状態でした。しかし、由芽の能力でギーラの血液のみが採取されました。今、人間の血液のみの状態です。私の血を輸血して下さい」
「でも、密ちゃんの血を輸血したら……」
「私はアミナスです」
「えぇっ!?」
ギーラじゃなかったの!?
「私も昔、実験台としてここに来たんです。無理矢理ギーラにされそうになりました。でも、耐えて耐えて耐え抜いたら、体内にワクチンができたみたいなんです。坊っちゃんの体内に入れた、血液の一つは私のです。ギーラの血液と私の血液を混ぜて注入しました。でも実験が成功した日、私は坊っちゃんを殺そうと思いました」
「……密」
颯は密ちゃんを見ていた。
「得体の知れない……見方か敵か分からない……まだ子供だから今なら殺せると思いました。でもできなかった。私に笑顔を向けてくれる坊っちゃんに、手を出す事ができなかった……だから私は守る事に徹しました」
そんな事があったなんて……。
「早く血液を移動して下さい。私の血は大丈夫です!」
「それじゃあ密ちゃん、死んじゃうんじゃ!?」
「体内の血液が少なくなったあと、ギーラのミラストーンで補充するから大丈夫です」
「分かった! でも俺の『チェンジ』は物と物を変えるたりする能力。密ちゃんだけの血液を移動させる事が俺にできるのか……」
「させるなぁぁっっ!! 行けぇぇっっ!!!!」
由芽の声で、知星が動いた。
「電光石火」
まずい!
知星が来る!
由芽はその間、ミラストーンを食べていた。
目の出血もおさまっている。
寧々は倒れていた。
「防御」
響が先回りしていた。
「麻陽! 速く!」
「ありがとう!!」
俺は深呼吸をし、二人に手を向けた。
失敗は許されない。
やるしかない!
「チェンジ!!!!」
二人の体が跳び跳ねた。
一瞬の出来事だった。
密ちゃんの顔色が悪い。
出血性ショックだ。
震える手でミラストーンを口に含んでいる。
颯の方を見ると、顔色がよくなっていた。
よかった!
成功したんだ!
密ちゃんも、少しずつミラストーンを補充している。
「メモリーキャノン!!」
「雷撃」
由芽と知星の攻撃が、響に集中する。
「……っうぅ!」
響の防御が壊されそうだ。
「……………………」
!!
響が口から、何か音を出した。
耳がおかしい。
何か周波数を操ったんだろうか。
由芽と知星は、体が震えて動けなくなっている。
やるなら今だ!
「炎!! チェンジ!!」
「ぎぃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺は、炎だけを移動させた。
由芽の後ろから攻撃した。
丸焦げだ。
知星は目を覚ました。
「あれっ?」
「知星!」
操られていたが、意識が戻った!
よかった!
「兄ちゃん!」
振り返ると、颯と密ちゃんが手をふっていた。
よかった!
「殺して……やる……」
由芽!?
まだ生きて……!?
くそっ……!
心臓となるミラストーンはどこだ!!
速く破壊しないと!
「氷点下」
由芽の周りに雪がまとわりついている。
「樹氷」
由芽は氷づけになった。
「ミラストーンも凍ればいいのよ」
寧々はふらふらになりながら、こちらへ歩いてきた。
「寧々! 大丈夫か!」
「当たり前でしょ?」
「ごめんなさい!」
「知星のせいじゃないから大丈夫だよ。泣かないで」
大泣きしている知星の頭を、ぽんぽんしている。
「男前じゃーん」
「当たり前でしょ?」
寧々はにやりと笑った。
「響?」
響は周りをきょろきょろしていた。
「音が近づいてる」
そうだった。
もう一つ音が聞こえるって言ってた。
「下!!」
響の叫び声の後、すぐに地面が盛り上がり割れた。
「ぅわっ!!!!」
何かが出てきた。
「あぁ……つまらない」
爺さん?
「実につまらない」
……殺気!
「防御」
「防御」
「防御」
「防御」
「防御」
「お前が楽しませてくれると言うから任せたのに……」
爺さんは、由芽に向かって話をしている。
爺さんは、氷に人差し指を突いた。
……!!
壊れた!!
「嘘でしょ? 私の樹氷を砕いたの!?」
ミラストーンがコロコロと転がって出てきた。
「盗む」
そう言うと、ミラストーンが爺さんの体に吸収されていった。
「……なんか少し若返った?」
「いやいや、それ寧々の願望じゃなくて?」
「あほか」
由芽の体は消えた。
「嵐」
爺さんがそう言うと、急に暴風雨となった。
「防御!」
知星は防御した。
「麻陽! 服溶けてる!」
響は言った。
「うわっ! あの雨で濡れたから!? 颯と密ちゃんは!?」
「大丈夫、もう動けてる」
響は笑った。
「兄ちゃん!!」
颯が叫んだ。
俺は颯の方を見た。
「そいつがボスだ!!」
「気をつけて下さい!!」
颯と密ちゃんは言った。
次回。
ボスと対決。




