41.ボス
前回のお話。
地面から突然出てきた爺さんの正体はボスだった。
あの爺さんが!?
「この技はあのときのやつ……なんでこいつが!?」
寧々は言った。
「あのときって?」
「麻陽と結衣が、穴を塞ごうとしたときに出てきたやつ!」
「誰だっけ」
「私も、名前覚えてない」
俺も寧々も名前を覚えていなかった。
「洪水」
ボスの後ろから波が押し寄せてくる。
「……水には電気」
知星は手の関節を鳴らした。
「雷電!」
よし!
いける!
「操作」
結衣の体が動いた。
あいつ、結衣で防御してきやがった!
このままだと、結衣に攻撃が当たってしまう!
「電光石火!」
知星は猛スピードで移動した。
なんとか結衣を逃がそうとした。
「…………がっ……はっ……」
「知星!!」
知星は自分の攻撃に当たってしまった。
結衣は無傷だった。
「あの技、幽華のだよね?」
響は言った。
「そうだ……あいつなんで!」
「おや? その髪の毛は……あのとき生かしたガキかな?」
ボスは言った。
「……私の事、知ってる……?」
知星は血を流しながら言った。
「目の前で親が殺されたら、どんな顔をするか見てみたかったんだ! あのときはいい顔してたねぇ!」
「こんの……じじぃ!!!!」
知星はぶちギレていた。
「雷雨!!!!」
「吸収」
知星の技はボスに吸い込まれてしまった。
あの技……。
「雷雨」
ボスは雷を出した。
あれは知星の技だ!
「っっっあがぁっっ!!!!」
「知星!!」
知星はボスの攻撃を受けてしまった。
「……まず一人」
ボスは静かに言った。
「早くあいつを倒さないと!」
寧々は言った。
そうだ、なんとかしないと!
「激しく!」
「つむじ風!」
「氷塊!」
「炎!」
響、颯、寧々、俺は、ボスへ攻撃した。
四つの技が、勢いよく襲いかかる。
「破壊」
ボスの一言で、全ての技が空中で消えた。
「嘘だろ……」
「モスキート」
ダメだ。
全く効いてない。
爺さんだから耳遠いんじゃ……。
「はぁ…………つまらない」
ボスは結衣のところへ向かった。
「チェンジ!」
俺は、結衣と場所を交代した。
「炎!!」
「……!!」
「結衣に触んじゃねぇ!!」
煙の中から手が伸びてきた。
俺は右手を捕まれた。
「ふぉっふぉっふぉっ……私の名前は善十朗」
こいつ、爺さんなのに力が強い!
「あの娘は私の実験台さ」
「実験台!?」
「盗む」
「くっそ! 炎!!」
……えっ?
出ない。
「炎! 炎!!」
「麻陽!?」
響は叫んだ。
「なんで……なんで出ないんだ!!」
俺は炎を出せなくなっていた。
ボスは、にやりと笑った。
「炎」
……!!
「……ぐっ……がっ……はっ!!」
俺はボスの炎に吹き飛ばされた。
「麻陽!!」
響は叫んだ。
これは俺の技だ。
こいつもしかして。
「おや、やっと気づいたんか? 私はミラストーンの製造者。技を奪い取る事もできるんだよ」
「そんな……じゃあ麻陽はもう……」
寧々は言った。
「そうそうそうそう! その顔が見たかった! 人の絶望する姿! いい風景だ!!」
何を言ってんだ、こいつ。
「私は歪んだ顔が大好きなんだ。生きる活力になる。もっともっと絶望感に溢れた顔が見たい。死ねないんだ」
「あんたおかしいんじゃない?」
寧々は言った。
「その顔も素晴らしい。でももっと歪めば美しい顔になる」
「きもっ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
「おい! 実験台って何の事だ! 結月さんに何をしたんだ!?」
俺は叫んだ。
「結月?」
「そこで凍りづけになっている女性の事だ!」
「あぁ。自殺したから、腐らないように凍りづけにしただけさ。特殊な指輪なのか知らないが、気づいたときには遅かった。私の若返りの為に、必要な人材だったんだがな」
もしかして、学園で渡された指輪の事か?
指輪に力を込めて自殺したんだ……。
「あの娘の一族は、非常に高い回復能力を持っている。夜な夜な私の血を注入してやったのさ。どこまで耐えられるのか。あの娘には、ギーラの血が入っている。私の子供みたいなものさ。ひっひっひっ」
結衣が病弱だったのって……こいつの!!
「聞きたい事は終わりか?」
「えっ……」
ボスは、寧々の方へ指をさした。
「破壊」
「防……ぶぅごぉはっ!!」
寧々は大量の血を吐いた。
「内蔵を破壊した。これで二人目」
寧々は倒れた。
「激しく!」
響は攻撃した。
「おっ……と」
「荒々しく!」
「これは老体には厳しいね」
いやいやいや、右腕一本で防いでるってどういう事だよ。
「重々しく!!」
ボスは崩れ落ちた。
よし!
やった!
「……まだ音がある」
響は言った。
「吸収」
……俺の技!
「防御!」
「防御!」
響と颯は防御した。
何かを吸っている。
……!!
若返った!?
「ふぅ……やっぱり爺さんはしんどいね」
あのとき、初めてボスに会ったときの姿だ。
「ボスは、周りのギーラのミラストーンを吸いとったんだ! 油断したら、俺らのミラストーンも取られるよ!」
颯は言った。
「さて……メモリーテクニック」
「俺に何するつもりだ!」
逃げれない!!
「感情を失くさせてもらうよ」
「……っ!!」
「麻陽!!」
「……ひ……びき……」
「兄ちゃん!!」
…………。
――――
……ここはどこだ?
みんなは?
「麻陽」
「みんな!」
「俺達これから、ギーラとして生きていかなきゃいけないんだ」
みんなの口や目から、血が出てきた。
「何言ってんだよ!」
「生きていくには、契約しないといけないんだ。麻陽も契約しないと死んじゃうよ」
「人を襲う化物になれって言うのか? そんなのになるなら死んだ方がいい!」
「死んだら誰が、結衣を助けるの」
「死んだら誰が、みんなを守るの」
「先生達は戦ってるよ」
「そうだ、生きなきゃ」
「そうだよ契約しないと、死んじゃうよ」
「俺がみんなを助けなきゃ」
――――
「麻陽を返せ!」
「兄ちゃん! 起きろ!」
「それは無理だろう……もう少しで終わる」
「モスキート! ……麻陽! 届け!!」
「隠」
「密?」
――――
「契約するにはどうしたらいいんだ?」
「ギーラになりたいって願えばいいんだよ」
「簡単じゃん。……ギーラになり……!! なんだこの音!」
俺は耳を手で塞いだ。
「頭に響いてくる。痛い!」
「早くしないと日付が変わっちゃう」
「日付?」
「今日はうるう年なんだよ」
「あぁ、だから頭がおかしいのか。薬どこだ?」
「ギーラになれば痛みを忘れられるよ!」
「いやいやそんなのダメだろ。お前ら何言ってんだよ」
「隠!!」
「密ちゃん?」
「麻陽さん、ご無事で! ここにいるみんなを倒すんです。それがここから出られるミッションです」
「みんなを? 俺がみんなを倒す?」
「はい。それができなければここから出られません」
「麻陽、俺の事嫌いなの?」
「えっ」
「麻陽、私の料理好きって言ったじゃん」
「嘘つき」
「麻陽、一緒にチョコ食べよう」
「……俺がみんなを消す? できないよ!」
「でも!」
「部外者が勝手に入ってくるんじゃないよ」
「見つかった!」
「消えろ」
「密ちゃん! ……消えちゃった」
「麻陽! 何してるの?」
「……俺がみんなを……できないよ」
――――
「分身が消えました」
「密、大丈夫?」
「あとは麻陽さんが頑張るしかありません」
「じゃあ、俺達も頑張るか!」
「了解」
次回。
三人目。




