36.穴
前回のお話。
理事長室にいた俺と結衣は、ギーラに襲われている町の人達を助ける為、出発する。
「炎!」
「毒!」
俺と結衣は、ギーラを倒しながら走り続けた。
「ぅおらっ!」
薙刀で切り落とす。
めちゃくちゃな数だ。
上を見ると、まだ出てきている。
「あの穴をなんとかしないと!」
「私なら塞げるかも!」
「でも高すぎる! 颯がいれば!」
「でも塞いだら、どうやってまたボスのとこに行くの!?」
「……まずは塞ぐ! そのあと考える!」
どうやって穴まで行けば……。
……そうだ!
「きゃあ!」
俺は結衣を持ち上げた。
「つかまってて!」
「分かった!」
俺は降ってくるギーラを踏み台にしながら、上へ登り進めた。
あと少し!
「今だ!」
結衣は俺を踏み台にし、ジャンプした。
「復元!」
穴がみるみる塞がっていく。
!!
突然穴から手が出てきて、結衣の手首をつかんだ。
「ひゃ! え!? なに!?」
「炎!」
俺は、地面に炎を出し着地した。
結衣は、穴から出てきた手首をつかんだ。
「毒!」
結衣の能力で、手首が毒で溶けてきている。
すると、穴から着物姿の長髪の男が出てきた。
「ひどいな、私の綺麗な手を溶かすなんて」
「お前は誰だ!」
「私は、護衛隊の一人、廉。覚えなくていい、私は綺麗な物にしか興味がない。よってお前には興味がない」
「あぁ!?」
なんだこいつ!
「離して!」
結衣は腕をつかまれて逃げれなかった。
「君は……まぁまぁ普通」
「はぁ!?」
「でも私の綺麗な手首を汚くしたから、おしおきだね」
「痛っ!」
「潮」
「!」
結衣の顔が、水の塊で埋もれた。
「息がっ……」
「苦しいでしょう? 私のこの手も苦しかったんだ」
「チェンジ!」
俺は、廉と自分の場所を変えた。
「結衣! 大丈夫か!?」
水が取れない!
「なんだ? なぜ私は汚い地面にいる?」
廉は、自分のいた場所が変わって、頭が追いついていないようだ。
「復元」
結衣がそう言うと、水の塊がただの水になった。
元の姿に戻す……そういう使い方もあるのか。
「はぁっ! はぁっ……はぁっ……げほっ……!」
「結衣!」
「……麻陽! あいつ……倒さないとまずい!」
「あぁ!」
「お前の仕業かぁっ! こんな汚い場所に私を立たせて!」
廉は怒鳴り散らしていた。
「結衣、大丈夫か?」
「大丈夫!」
「炎!」
「毒!」
俺達は同時に能力を出した。
「黒雨」
大雨が降ってきた。
これが廉の能力……
俺の炎は雨で消され、結衣の毒も周りに飛び散ってしまった。
炎は使えない。
あいつの能力を吸収すれば……。
「麻陽、だめだよ」
結衣は俺の考えを察したのか、止めようとしていた。
「……分かったよ」
でもどうやって……。
「氷雨!」
空からひょう、あられが降ってきた。
ん?
この声……。
「氷刃!」
「防御」
そこには、廉に切りかかる寧々がいた。
「寧々!」
「やっほー!」
「寧々ちゃん!」
「誰だ、このブスはっ!」
「あら、その目腐ってるんじゃなーい?」
寧々は、にやりと笑った。
「洪水」
廉の後ろから波が押し寄せてくる。
「氷柱!」
寧々も負けていない。
「逆波!」
「氷塊! 二人とも今のうちに行って!」
「ありがとう! 結衣! 穴を塞ぐぞ!」
「分かった!」
俺は、再び結衣を持ち上げ、穴まで飛んで行った。
「復元!」
「よし! ほぼ塞がっ……」
「……隠」
この声……密ちゃん!
急に周りが真っ暗になった。
「いやぁっ!」
「結衣!?」
何も見えない。
何も聞こえない。
……徐々に明るくなってきた。
しかし、そこには俺しかいなかった。
穴は微妙に塞がっていなかった。
「結衣!」
返事がない。
密ちゃんの声も聞こえない。
連れ去られた。
俺はそう思った。
穴は、ハエが通れそうなくらいしか開いていないので、とりあえず大丈夫そうだ。
俺は、寧々のところへ戻った。
到着したときには、決着がついたときだった。
寧々の勝利だ。
廉は消えていった。
「寧々!」
「麻陽! あれっ、結衣は?」
「それが……いないんだ」
「どう言う事?」
「兄ちゃん! 俺見た!」
「颯!」
「あ! あのときの!」
寧々は颯を指さして言った。
「密ちゃんが技を出した後、姉ちゃんを連れて穴の中に入って行った!」
「……連れ戻さないと」
「でもどうやって!?」
俺と颯は、どうしていいか分からなかった。
塞ぎきっていない穴を開ける事ができたとしても、開けるとギーラがまた放出される。
でも助けないと。
開けたあとは?
塞ぐ事はできる?
塞いじゃったら帰ってこれる?
……決断できない。
「先生を呼んでくる!!」
寧々は叫んで走って行った。
「大事な仲間を助けたいのに、すぐに行動できない俺ってなんなんだろう……」
俺はしゃがみこんだ。
「……それが人間だからじゃない?」
俺は颯の方を見た。
「俺は密ちゃんと一緒にいたかった。でも決断できなかった。離れれば敵になる事が分かってたから。結局、自分が大事なんだ」
俺達は、二人でしゃがんで落ち込んだ。
「自分を大事にできないと、相手も大事にできないよ」
「響……」
「僕は耳が良いからね」
「そんなうまくできてたら、こんなに悩まないよ」
「それも人間だからじゃない? 僕は自分が我慢すればいいと思っていた。でも麻陽が僕を助けてくれたんだよ」
「俺?」
「そう。本人は覚えてなくても、された方は記憶に残るんだよ」
「密ちゃんも覚えてないかも」
颯は呟いた。
「人間だから悩むんだ。そこから動きだすのも人間」
響は微笑んだ。
「麻陽!」
「花音先生!」
寧々と先生が走って来た。
「結衣が連れ去られたって!?」
「先生、穴を開けるので結界をお願いできますか?」
「もちろん!」
俺達は、穴の真下に移動した。
そして、穴に向けて掌を上げた。
「炎!」
俺の炎は、穴に向かって勢いよく攻撃したが、びくともしなかった。
「あれっ!?」
「激しく」
「つむじ風」
「氷塊」
響、颯、寧々の攻撃もびくともしない。
「もしかしたら、結衣かもしれない」
先生はぽつりと言った。
次回。
結界をほどく為、花音先生と美雪先生、そして稀星が力を合わせる。




