37.美雪と稀星
前回のお話。
穴を広げる為に攻撃をしたが、結界のようなものでびくともしなかった。
「どう言う事ですか?」
「見た感じ攻撃を跳ね返してる。そんな技、結界系の能力者しかできない。敵がやるなら完璧に塞ぐだろう。結衣は、ギーラ放出を防ぐ為に、何か能力を使用したんじゃないかな」
花音先生は言った。
「あの短時間で……」
「どうしたらいいんですか?」
寧々は先生に聞いた。
「先生は結界師だよ! 任せなさい!」
先生はそう言うと、右手の親指と人差し指で丸を作り、目を見開き穴を見ていた。
「結界の解除は本人にしかできない。でも外す事はできる」
「解除と外すって同じじゃないの?」
颯は言った。
「結界ってのは、糸がたくさん巻きついてるような状態なんだけど、それを一つずつ外していくって事」
「そんな事できるんですか?」
俺は驚いた。
「みんなが同じ結界ではないから、根気のいる作業だけどね。………………ふぅ」
先生は深呼吸をした。
「結界!」
先生は結界をたくさん張り、足場にして登って行った。
あっという間に穴までたどり着いた。
先生が穴を触ろうとすると、バチっと音が鳴った。
先生の指は弾かれた。
触れないようだ。
「解く」
先生の両手だけが結界で包まれていた。
そして穴に両手を入れた。
何をしているか俺の目には見えないが、外している最中だと思う。
「多分、手のみに結界を集中させて、能力をできるかぎり最大にしてるんだと思う」
響は言った。
「先生は戦えない状態だから、今、奇襲をかけられたらまずいね」
「しっ! 何か音がする」
響は周りを見渡した。
音なんて聞こえないけど……。
「ギーラが来る! たくさん!!」
響は叫んだ。
「ぁあああぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
遠くから叫び声をあげながら、50体くらいのギーラが向かってくる。
「『血をよこせ』だって」
「えっ、颯、言葉分かるの!?」
俺は颯を見た。
「まぁハーフだからね」
「いや、ハーフの使い方」
「ふふふっ」
響は笑っていた。
「ちょっと男子! 何くっちゃべってんの! くるよ!」
寧々はまっすぐ見て言った。
「炎!」
「かまいたち!」
「激しく」
「氷雨!」
護衛隊に比べたら全然楽勝だけど、数が多い。
「やっつけてもすぐ出てくる」
「兄ちゃん、もうへばってんの?」
颯はにやにやしていた。
「枯渇しないようにチョコ食べよー」
響はチョコの袋に手を入れた。
「俺にも!」
「俺も食べたいー!」
「だから男子!! 何やってんだ!!」
それから俺達はギーラを倒し続けた。
――――
まずいな。
このままだと技が出なくなる。
先生の方を見たが、まだ結界を外せていないようだった。
「麻陽!」
響の声で前を見ると、ギーラが襲いかかって来ていた。
「防御!! ……しまった!!」
ギーラは先生の方へ向かっていった。
弱いと思って油断していた。
俺が、先生の様子を見ていた隙をみて、襲いかかってきていた。
俺の失敗により、みんなも隙ができてしまった。
大量のギーラが先生に向かっていく。
「モスキート!」
「炎!」
「氷塊!」
だめだ!
技が全然出ない!
枯渇状態だ!
俺は薙刀を投げた。
数体には当たったが、生き延びたギーラが先生に向かって走っていく。
「先生!!」
殺られる!
「雷雨!」
「雷撃」
稀星! 知星!
別の方向から銃弾が飛んできて、ギーラ達が倒れていく。
美雪先生!
「麻陽! 何ミスってんの! しっかりしなさい!」
「しっかりしっかり」
稀星と知星は俺の方へ走ってきた。
「麻陽さん大丈夫ですか?」
美雪先生も拳銃をしまい、走ってきた。
「稀星、知星、美雪先生、無事だったんですね」
「……美雪!」
「えっ!? 稀星!?」
そうだった。
この二人、昔いろいろあったんだ。
「その姿、どうしたの!?」
「あぁ……ちょっといろいろあって」
そうか。
小さくなった事は知らないのか。
「いろいろってどう言うこと!?」
「いろいろはいろいろ!」
なんだかもめ始めたぞ。
「二人ともうるさい」
知星が会話をぶった切った。
「今、何してるの」
知星は俺を見て言った。
「あぁ、実は……」
俺は現状を伝えた。
――――
「二人の目でなんとかならないの?」
知星は、稀星と美雪先生を見て言った。
「確かに……でもうまくいくかな……」
「やるよ、美雪。やらない選択肢はない」
「……わかった!」
「颯、あそこまで飛ばして」
稀星は言った。
「了解! 強風!」
二人は風にのって、花音先生のもとへ行った。
「花音先生!」
「美雪先生!? と……?」
「足場!」
稀星は叫んだ。
「結界!」
美雪先生と稀星は、結界の上に乗った。
「どこまで進んでいますか?」
美雪先生は言った。
「半分も終わってない。なんか結衣の複雑で……」
「私と稀星の鑑定で誘導します」
「えっ!? 稀星って理事長の孫の!?」
「美雪と私の鑑定で解くから、その情報をあなたに伝えるわ」
稀星は言った。
「伝えるってどうやって?」
花音先生は稀星を見て言った。
「私の電気信号であなたを動かす」
「そんな事が可能なの?」
「まぁ、失敗したらどんまい」
「えぇ!?」
花音先生は驚いていた。
「稀星!?」
美雪先生は焦っていた。
「そりゃ初めてやるから、そんなのやってみなきゃ分からないでしょ」
「はははっ! 君も麻陽に似てきたね!」
花音先生は大笑いした。
「目的は二つ。一つは結衣を連れ戻す事。二つ目は結衣の能力を悪用されない事」
稀星は、右手の人差し指と中指を立てて言った。
「そうだね」
「どう言うこと稀星」
美雪先生だけ分かっていないようだった。
「医療術師が復元までできる訳がない」
稀星は言った。
「回復は人体に有効、復元は物に有効。そして、この結界は復元によってできたもの。元は別の能力者の結界が、復元によって結衣が作った結界になってる。だからなかなか外せないんだよね」
「花音先生、分かってて卒業させたんですか?」
「まさか! 知ってたら保護したさ」
「保護って……監禁の間違いじゃないですか?」
「人聞きの悪い。まぁ研究員の人体実験だろうね」
「だから逃がした」
「逃がした魚はでっかいな~」
「まじめに聞いて下さい!」
「先生方、そろそろ始めたいんだけどいい?」
稀星は会話をぶった切った。
「……はぁ……やりましょうか」
美雪先生は呆れていた。
「よろしくね~」
花音先生は楽しそうだった。
美雪先生と稀星は手をつないだ。
稀星は、花音先生の頭に手を置いた。
「鑑定」
次回。
結界を解き、いざ敵地へ。




