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33.天馬

前回のお話。


敵が攻撃を出そうとしていた。

そのとき、倒れていた知星(ちせ)の意識が戻った。

「私に全改良(フルチェンジ)して。そしたらまた雷神が出せる」


 知星(ちせ)は俺を見て言った。



「ダメだ! また意識がなくなったらどうするんだ!」


 以前、俺の能力の副作用で倒れてしまった事がある。



「大丈夫。結衣(ゆい)がまた元気にしてくれるから」


 結衣(ゆい)は一瞬、悲しむ顔をした。

 しかし、すぐ覚悟を決めた顔になった。



「大丈夫。私がみんなを絶対治すよ!!」


 この戦いで、俺だけが覚悟できていなかったようだ。



「……くそっ……全改良(フルチェジ)!!!!」


 知星(ちせ)の体がみるみる大きくなった。

 六歳の体から、元の姿の18歳へ戻った。



雷雲(スーパーセル)! 雷神!」


 知星(ちせ)はすぐ立ち上がり、能力を出した。


 ケルベロスの攻撃がくる!

 間に合え!


 ケルベロスは口から雷を出した。



防御(ルポ)!」

防御(ヒート)!」


 俺と結衣(ゆい)は防御を出した。


 雷神の雷、ケルベロスの雷、どちらも負けていない!

 でもこのままだと、知星(ちせ)が元の姿に戻ってしまう!




 ……まずい……押されてきてる……!



麻陽(あさひ)……私にも全改良(フルチェンジ)しなさい……」


稀星(きせ)!」


「速く!!」


「……!! 全改良(フルチェンジ)!!」



 稀星(きせ)が元の姿に戻っていった。


 ……ん?


 天パのすらっとした男性になった。

 稀星(きせ)って男だったのか!?



雷雲(スーパーセル)! 天馬(てんま)!」


 稀星(きせ)の声でペガサスが現れる。

 ペガサスの体からも、雷がバチバチ放出されている。



「いけぇぇぇぇっっっっ雷神!!」

「いけぇぇぇぇっっっっ天馬(てんま)!!」


「いけーーーーーーーーっっ!!!!」


 雷が鳴り響いていた。

 煙がすごくて周りが見えない。



 …………ケルベロス…………立ってる…………生きてる!!


 知星(ちせ)は子供の姿で倒れていた。

 稀星(きせ)はまだ戻っていない。

 大人の姿のままだ。


元気回復(レタブリスマン)!!」


「もう一回だ! 天馬(てんま)!!」


 ペガサスの雄叫びが鳴り響いた。

 攻撃をしようとしたとき、ケルベロスはゆっくりと倒れた。


「!!」


 ケルベロスの姿が消えていく。



「勝った!?」


 ケルベロスの姿から幽華(ゆうか)が現れた。

 その幽華(ゆうか)も消えようとしていた。



「……まさか私が負けるなんてねぇ……」


 今にも消えそうな声だ。



「……あんた達にボスが倒せるとは思わない……せいぜい苦しみな……」


 幽華(ゆうか)は消えた。

 石も破壊されたって事か。


 その時、後ろから物音がした。

 振り返ると、子供の姿の稀星(きせ)が倒れていた。



稀星(きせ)!」


麻陽(あさひ)! みんなをこっちに連れてきて!」


 結衣(ゆい)は俺を見て叫んだ。



「分かった!!」


 俺は結衣(ゆい)のところに、稀星(きせ)(ひびき)(はやて)を連れていった。



元気回復(レタブリスマン)!!」


 結衣(ゆい)から大量のエネルギーが出ていた。

 結衣(ゆい)は寄生型。

 ありったけのエネルギーを注いでいる。

 このままじゃ、結衣(ゆい)も倒れてしまう。



「……結衣(ゆい)


稀星(きせ)ちゃん!!」


 意識が戻った!!



「あなた……倒れるわよ」


「そしたら、いくら丼食べるから大丈夫だよ!」


 いくら!?



「ほんとバカね」


 二人は顔を見合って笑っていた。

 その笑い声で、他のみんなも意識が戻った。



「よかった……」


 結衣(ゆい)はそう言うと、倒れた。



結衣(ゆい)! ……大丈夫、気絶してるだけだ」


 あせったぁ……。



「少し休んでから次に行こうか」


 俺はみんなに言った。



「じゃあチョコ食べる人~」


 (ひびき)は、いつも通りチョコを食べようとしていた。



「はーい」


 全員、手をあげた。



麻陽(あさひ)ちょうだい」


 (ひびき)は俺に手を出して言った。



「あぁ、俺が預かってたっけ……あ」


「あ?」


 (ひびき)の眉毛が、ぴくっと動く。



「ない」


「ん?」


「落としたみたい」


「僕、チョコ頼んだよって言ったよね?」


 やばいやばいやばいやばい。

 (ひびき)めっちゃ怒ってる。



「チョコは僕にとって大事なものなんだからね? 分かってる?」


 (ひびき)が詰め寄ってくる。



「探せーっっ!!」


 耳が変だっ!

 何か音の能力が出てる!



「分かりましたぁっ!!」


 俺は走り回った。



「ちょっとぉ! 急いで探すわよ!」

「痛い、モスキートかな」


 稀星(きせ)知星(ちせ)は耳を押さえていた。



「兄ちゃんこれじゃね?」


 (はやて)はチョコの袋を持っていた。



「あった! ……あ」


「ちょっとどうすんのよこれ」

「溶けてる」


 稀星(きせ)知星(ちせ)は言った。



「食べれれば何とかなるだろ」


 俺は汗が止まらなかった。



「俺知らねぇ」


 (はやて)は離れていった。




「全部聞こえてるよー!」


 (ひびき)は遠くから叫んでいた。


 そうだった。

 耳がいいんだった。



「ごめんなさいっっ!!」


「早くみんなで食べよう!」


 よかった。

 俺はチョコを持って向かった。



「じゃあ、いただきます」

「いただきます!」



「……みんなチョコ食べてるの?」


 結衣(ゆい)の意識が戻った。



「はい、結衣(ゆい)の分」


 (ひびき)はチョコを渡した。



「なんか溶けてる」


麻陽(あさひ)のせいだよ」


「……でもおいしいね」



 いつまでみんな一緒にいられるだろう。

 いや、弱気になっちゃダメだ。

 全員で倒すんだ。


 しばらくして、俺達は次の目的地に移動する事にした。



「護衛隊の部屋って、一つ一つ離れてんだな」


 俺は呟いた。



「みんな我が強いからね。隣同士が嫌なんじゃない?」


 (はやて)は言った。



「それもそうか」


 ……密ちゃんはどうしたんだろう。

 聞きたいけど(はやて)が何と思っているか。


 しばらく歩くと、またドアが見えた。



「さぁ、着いたよ兄ちゃん」


 (はやて)は言った。



「よし、みんな行くぞ!」


 俺は深呼吸をした。



麻陽(あさひ)、早く開けて」


 結衣(ゆい)は言った。



「早く開けなさいよ」

「開けて」


 稀星(きせ)知星(ちせ)も言った。


 みんな緊張してないのか?

 (ひびき)なんて無言でチョコを食べている。

 いや、いつもの事か。



「よし!」


 あれっ?



「開かない」


 押しても引いてもびくともしなかった。



「もう破壊するしかないんじゃない?」


結衣(ゆい)がそんな事言うなんて」


 (ひびき)は驚いていた。



「じゃあ、壊すか」


 俺はドアに向かって右手を出した。



(ブレイズ)


 壊れたドアの向こうには、小さい男の子が二人いた。

 遠くてあまり見えない……。

 一人は石を並べて遊んでいた。

 もう一人は俺達を見ている。


 この沈黙は何を意味しているんだろうか。


 俺達が部屋に入ると、ドアがまた作られた。

 そのドアはやはり開かなかった。



「おじさん誰?」


 俺達を見ていた男の子は言った。



「おじっ!? ……俺は麻陽(あさひ)、ボスを倒しにきた」


 声が響き渡る。

 この部屋どんな造りだ?



「そう、じゃあさよなら」


 男の子は右手を出し、炎で攻撃をしてきた。



防御(ヒート)!」


「……! おじさんも炎を出すんだ」


 男の子は、少し嬉しそうな顔だった。

 本当に護衛隊の一人なんだろうか。

 もう一人の子に関しては、全くこちらを気にしていない。


 よし、あの子は後回しだ。

 俺は男の子の方へ走ろうとした。



「!!」


麻陽(あさひ)!」


 結衣(ゆい)の声が響いた。

 突然、床が爆発し、攻撃をくらってしまった。


 この技、俺は知っている!

次回。


男の子と戦っている最中、爆発により地面が崩れ落ち、俺達は真っ暗な穴へ落ちていく。

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