29.集合
前回のお話。
半分人間、半分ギーラの颯は、人間に戻りたいと願っていた。
「お世話になりました!」
「気をつけてな」
俺達は辰さんに挨拶をし、お菓子の町をあとにした。
「このあとの行き先は?」
颯は言った。
「いやぁ……どうすっかな……」
「はぁ? しっかりしてくれよ!」
「ってか、お前いつまで一緒にいるんだよ!」
「えぇー『一緒に行こう』って言ってたじゃーん」
「いやあれは……」
「仲良くしよーぜー!」
颯はにやにやして隣を歩いていた。
あぁーしくったなー……。
なんか懐かれちまった。
「仲良くするのは別にいいんだけど、俺はボスを倒したい」
「うん」
「その為にはボスの場所が必要なんだ。何が言いたいか分かるか? 家出少年」
「……俺に案内しろと?」
「さすが天才」
「やだよ! なんで戻んなきゃ行けないんだよー!」
「そりゃそうだろうが! ギーラ殲滅にはボス倒さんと話にならんだろ!」
「俺、命がけで家出してきたんだぜー!?」
「だから命がけで戻る」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………」
颯は深いため息をつき、しゃがみこんだ。
「お前の気持ちも分かる。でも、ギーラの製造元を絶たないと、どうしようもないじゃないか」
「……」
「ボスが、お前を人間に戻す方法を教えてくれるとも思えない。倒すしかないんだ。逃げてても何も解決しない」
「……それでも俺は逃げたい……」
颯は、ぽつりと言った。
それだけ恐ろしい人物って事か……。
ん?
人物?
人ではないから、この場合何て言うんだ?
いや、人なのか?
うーん…………。
「兄ちゃん、なんかアホな事で悩んでないか?」
「お前またアホって言ったな」
「アホな顔してっからな」
「お前なぁ……」
図星であまり言い返せない。
「ふはっ」
急に颯は笑った。
「兄ちゃん、案内するよ」
「いいのか?」
「あぁ! 恐いけど、なんかアホな顔見てたらアホらしくなってさ」
「アホアホうるせぇ」
「兄ちゃん、俺が死にそうなときは助けろよ!」
軽い口調ではあるが、真剣な顔つきだ。
「当たり前だろ、兄ちゃんだからな」
「ふははっ! じゃあ行こうか! ボスのところへ!」
「あぁ!」
「でもその前に、兄ちゃんは知識不足」
「は?」
「そして戦力不足」
「うん?」
「そこで兄ちゃんの仲間をここに呼ぶ」
「どうやって呼ぶんだよ」
「こうやって呼ぶんだよ! 竜巻!」
…………どこに能力を出したんだ?
周りは特に異常がない。
「おい、何をしたん……!?」
周りから、複数の竜巻が集まってきている。
「来たよ!」
このままだとぶつかるぞ!
「おい! この竜巻……!」
「解!」
颯は、両手を胸の前で叩いて言った。
その言葉で、竜巻が消えてなくなった。
そして、竜巻があった場所から……。
「痛っ!!」
尻餅をついた結衣。
「どぉわっ!!」
「わぁ!」
稀星、知星。
「おっ」
響。
「みんな!!」
「麻陽!!!!」
「これで補充完了!」
颯は腰に手をあて、にやりと笑った。
「やっぱりあなたの竜巻だったのね!」
「なんのよう?」
稀星と知星は戦闘態勢だった。
手の周りが、雷でバチバチ鳴っている。
「一度、飛ばされた事があるから、あの子の能力かなって思ったけど、麻陽と何してるの?」
響も戦闘態勢をとった。
「お尻痛ぁーい! 急に風まみれになったと思ったら急になくなってー! ……酔ったかも……」
結衣は、颯の能力って知らなかったっぽい。
「まぁまぁ、みんな落ち着いて。これからボスのところへ行くから、颯がみんなを呼んだのさ」
「は!!??」
稀星と知星は驚いている。
「えっ、ボス? ボスってギーラの?」
響はチョコを食べながら言った。
結衣は……酔ったのか倒れている。
「麻陽! 説明して! そもそもなんでこの小僧がいるのかしら!?」
「きい落ち着いて」
「逆になんでそんなに落ち着いていられるのよ!」
「麻陽にも考えがあるはず」
「お前の事言ってもいいか?」
俺は颯に聞いた。
「……いいよ」
ちょっと悩んだ素振りはあったが、了承を得たので、俺は颯についてみんなに話した。
「あなた人間なの?」
「ハーフ?」
稀星と知星は興味津々だ。
「颯君、大変だったんだねぇぇぇぇ!!」
「結衣も落ち着いて」
大泣きの結衣を、響は慰めていた。
颯は岩に座っていた。
若干、呆れた顔をしている。
「兄ちゃんがボスを倒すって言うから、あんたらを集めた。あんたらの意見は?」
「倒すに決まってんでしょ!」
「倒す」
「私も倒す!」
「僕も」
「じゃあ、情報共有にうつる」
颯は話始めた。
「ボスの能力について。ボスは、他者の能力を奪う能力を持っている。奪われた相手は、二度と使えなくなる。ボスは奪った能力を自由に使える。自分で使う他に、他者に付与する事もできる」
「自由にって……どこまで自由なのかしら」
稀星は腕を組んで言った。
「複製も可能。大量に複製し、ギーラに与える。ギーラも能力も大量製造してるのさ」
「自由すぎじゃないのよ!」
「……」
稀星はいつも通りだが、知星が黙ってしまった。
俺も何も言えなくなってしまった。
「製造元を潰せば、これ以上ギーラは増えないって事でいいのかな?」
さすが響、落ち着いている。
結衣も驚きすぎて声が出ないみたいだ。
「単純に考えればそうだね。でもボスにたどり着く前に、護衛を潰さないといけない」
次回。
颯のお世話係が現れる。




