28.颯
前回のお話。
建築の仕事をしていた俺達の前に、ギーラが現れた。
「強風!」
颯の風の能力で、砂嵐は消し飛んだ。
「つまんなーい! 私の砂嵐でぐちゃぐちゃにしたかったのに!」
色黒の角刈りマッチョの男が現れた。
……って、またマッチョかよ!
「あぁんらぁ? そこにいるのは颯坊っちゃんかなぁ?」
「坊っちゃん?」
「どんな手を使ったか知らないけど、いきなり現れて、ボスのお気に入りになった小僧さ!」
「お気に入り……」
「どうせボスの都合のいいおもちゃさ! 夜もおもちゃにされてたりしてねぇ!?」
マッチョは大きな声で笑っていた。
颯は、そんな話は何も聞いておらず、辰さんを助けていた。
「おじさん大丈夫?」
「あぁ……ちょっと背中が痛いが……大丈夫だ」
「ちょぉぉぉぉっっとぉぉ!! こんの糞生意気な小僧! 私の話を無視するなんて、いい度胸じゃないのぉっ!」
それでも颯は無視し続けていた。
「……いい加減にしろよ」
マッチョは野太い声で言った。
「テングツブテ!!」
空から無数の石が、勢いよく降ってきた。
やばい!!
辰さんが!!
「……防御」
颯は静かに言った。
降ってきた石は、静かに落ちた。
「その目だよ! その目が気に入らないのさ!」
マッチョは大きな声で叫んでいたが、いつものうるさい颯の姿はなく、そこには、冷たい目をしてただ立っている颯の姿があった。
「あいつ……」
「あんたを無傷で連れてこいとは言われてないからぁ、ぐちゃぐちゃに潰し……!!」
すごい殺気が颯から出ている。
「なによ……! なんであんたなのよ!! 隕石!!」
空からでかい石が降ってきた。
当たればこの町は、消えるかもしれない大きさだ。
「雲散霧消」
!?
一瞬で、でかい石が粉砕した。
「何したのよぉっ!!」
「消したんだよ」
「消したっ!? そんな事できるはずがっ……!!」
「できるよ、俺とおまえじゃレベルが違うんだ。立ってる土俵が違うんだよ」
「こんんんの糞ガキャっ……!!」
「黒風」
颯の周りに落ちていた石が、風で浮かびあがった。
「やめろっ……」
マッチョは尻餅をついた。
「俺が何しようとしているか、そのザルみたいな頭でも分かるよね」
颯は、右の人指し指を前に出した。
周りの石が、マッチョ目掛けて鋭い速さで飛んでいく。
「嫌だっ! 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁっっぐぁっごぁっ!!」
マッチョは、飛んでくる石から逃げる事ができず、体を貫通し血反吐を吐いた。
貫通した一部から、ギーラの心臓と言えるミラストーンが出てきた。
マッチョは這いつくばって、ミラストーンを拾おうとしている。
まずい、あれを壊さないと死なない!
「あっ……」
マッチョの目の先には颯がいた。
「悪かった……やめてくれ……」
颯の足元にはミラストーンがあった。
「やめてくれっ……」
「聞くと思う?」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」
マッチョは、颯に飛びついて攻撃しようとしていたが、颯は足を勢いよく下ろし、ミラストーンを踏み砕いた。
「……っっっっくぁ……」
「男の嫉妬ほど醜いものはないよ」
マッチョは砂のように消えた。
死んだんだ。
ギーラが死んで喜ぶべきなはず……俺はよく分からなくなっていた。
あれは俺の知っている颯ではなかった。
颯はその場で倒れた。
「颯!」
俺は気づいたら走っていた。
今さっきまで、颯の事を怖いと思っていたのに。
「大丈夫かっ!?」
「……ぁぁ……頭痛い……」
いつもの颯だ。
「あ、ギーラと戦ったら頭痛するんだっけ?」
「うん……」
ギーラと戦う前は痛そうな感じではなかった。
味方同士で戦わないようにするなら、戦う前から頭痛があってもおかしくない。
なのに終わったあと?
本人もそこに気づいてないのか。
あれはもしかして、別人だったんじゃないのか?
その反動で? 副作用で? 頭痛がするのではないだろうか。
分からない。
「兄ちゃん?」
「あぁ、ごめん、ちょっと休もうな」
颯はそのまま寝息をたてた。
「二人とも! こっちだ!」
辰さんが手招きをしている。
俺は颯をおんぶして向かった。
「二人とも大丈夫か? ここに寝かせてやんな」
そこには布団が敷いてあった。
俺は寝ている颯をそこに寝かせた。
「俺達は大丈夫です。辰さんは大丈夫ですか?」
「これくらい日常茶飯事だから大丈夫さ。しっかし、ギーラと戦いながら建造物を傷つけないなんて、アミナスってやっぱりすごいなぁ!」
「いやいやそんな事ないです!」
確かに怪我人は辰さんだけで、建物は壊れていない。俺はただ見ていただけだけど……。
「兄ちゃん、頑張って弟を守ってやるんだぞ」
「……はい!」
颯は確かに天才かもしれない。
普段は無邪気な糞ガキだけど、瞬時にその場の状況を判断。
戦闘中にもかかわらず、怪我人や周りの事を考え
行動。
能力だって、本人は使いこなしている。
……でもギーラなんだ。
本人が望んでギーラになった訳じゃない。
誘拐されて実験台になって、ギーラになった。
俺は颯と戦う事ができるんだろうか。
人間に戻すことができないだろうか。
俺の頭はパンクしそうだった。
「兄ちゃん?」
そこには起き上がった颯の姿があった。
「颯! 動いて大丈夫か!?」
「うん、寝たから大丈夫」
「んな訳ねぇだろ!」
「ほら見て」
「……傷が塞がってきてる」
「俺は人間じゃないって事さ」
颯はせつない顔で笑った。
「そんな事言うなよ。お前は人の気持ちが分かるじゃないか!」
「……兄ちゃん……俺、人間に戻りたいよ……」
颯は泣いていた。
「一緒に行こう」
俺は颯を抱きしめながら涙を流した。
次回。
仲間集合。




