30.密
前回のお話。
ボスの能力について知った俺達だが、ボスを倒す前に護衛を倒さなければいけない事を知る。
「護衛!?」
俺は大声をだしてしまった。
「あなたそりゃそうでしょ、護衛くらいいるでしょ」
「そう」
稀星と知星は俺を見て言った。
「そうだよ」
響もさらっと言った。
「……わっ……私でも分かるよ!」
結衣は多分分かってなかったな。
「兄ちゃん、仲間からもそんな感じなんだ」
颯は笑っていた。
「その護衛を倒しちまえば、ボスのとこに行けるんだろ!」
俺は颯に言った。
「そんな簡単じゃないけどね。護衛隊は『ご』に、ちなんで五人。ボスの側近が一人、水の能力者が一人、火の能力者が二人、こいつらは双子で、いつも一緒に行動している。死者を操る能力者が一人、の合計五人」
「死者?」
俺は颯に聞いた。
「死者って、幽霊とかってやつ?」
「あぁ、兄ちゃん死者の意味分かるんだね!」
颯はバカにしたように言った。
「あ!」
「あぁ!」
稀星と知星は、何かを思い出したように声を出した。
「あぁ! もしかして……」
響も思い出したようだ。
「颯、そいつの名前、幽華って言わないか?」
「なんで兄ちゃん知ってんの!? てか、みんな知ってる感じ? もしかして……」
「あぁ、俺達そいつと戦った事がある」
「よくみんな生きてんね!」
「危なかったけどな」
「幽華は生きてる人も操れるから厄介だよ。まぁ、側近が一番危険な空気出してるけどね」
「颯君、側近は何の能力者なの?」
いつもの結衣に戻った。
体調回復したんだな。
「それが、分からないんだ」
「それは、見た事がなくて知らないって事? それともよく分からないって事?」
稀星は言った。
「覚えていないんだ。見た事があるはずなんだけど……」
「あなた操られてる訳じゃないわよね?」
「違うよ!」
「どうやってそれを証明するのよ」
「そんな事言ったって……」
「多分大丈夫だと思う」
俺はなんとなくそう思った。
「麻陽、これからの戦いで『多分』は命に関わるわよ?」
稀星は少し怒っていた。
「うん……そうなんだけど、なんか……勘」
「はぁ!?」
「きい落ち着いて」
知星は稀星をなだめていた。
「僕は麻陽が『大丈夫』って言うなら大丈夫な気がする」
「私もー!」
「響、結衣!」
「私も」
「ちい……」
「多数決ならこれで決まりなんだけど、どうする? お嬢ちゃん」
颯はにやにやして言った。
「…………分かった、今は信じる」
稀星はため息をつきながら言った。
「サンキュー。あとは戦いの相性もあると思うから、誰が誰と戦うか考えた方がいいと思うよ」
「え、バラバラで戦うのか?」
「兄ちゃんは火だろ? 火の兄弟に会ったらどうすんのさ」
「まぁ、そうだけど……」
「みんなで戦うけど、先陣を切る人、サポートする人、いろんな戦い方を考えた方がいいよ」
「分かった。ありがとう颯!」
「どういたしまして」
それから俺達は作戦会議をした。
――――
「さっき、竜巻使ったけど、誰も来ないな」
颯は周りを見渡した。
「あれだけ使えば、追っ手が来るかなと思ったんだけどなー」
「来たらどうしたらいい?」
「俺を人質にして、ついて来たらいい」
「あなた達は、仲間と言う概念があるの?」
稀星は不思議そうな顔をしている。
「全員が認めている訳じゃないけど、俺を殺す事はボスから禁止されているから、問題ないよ」
「トップがyesと言えばyesって感じね」
「いや、結構殺されかけてたよな」
「俺のお世話係がいるんだけど、来るなら密ちゃんだと思うんだけどなー」
「お世話係!?」
俺は大声を出してしまった。
「麻陽うるさい! 颯君、お世話係の密ちゃんって?」
結衣は颯に聞いた。
「俺の身の回りの事をしてくれる女の人。ボスから命令されて動いているんだけど、俺の命令も聞くように躾されてるから、密ちゃんなら人質作戦にしなくても、なんとかなると思うんだけどなー」
お世話係と一戦にならなければいいんだけど……。
「あっ、来たよ」
来た?
どこから?
突然、頭上に穴があいた。
「!?」
「坊っちゃーん、探しましたよーん」
穴から、ゴスロリの格好をした女性が出てきた。
……20代?
……30代?
「坊っちゃん、今まで何してたんですか? 私の事が嫌になっちゃったんですか? こんなにこんなにこんなに坊っちゃんの事を考えているのにー!」
感情の起伏が激しそうな人だ。
「ごめんごめん密ちゃん、迷子になっちゃって!」
「迷子! まぁまぁまぁ! かわいそうに! 早く気づけず申し訳ありません! 密の責任です! 何なりとお申し付け下さいませ!」
頭を地面にこすりつけた。
なんかやばいやつが出てきたな……。
「密ちゃん、じゃあ俺帰りたいから、この人達も連れて行って」
密ちゃんは首だけをこちらに向けた。
「ひぃっ!」
結衣は尻餅をついた。
ホラーだよ、ホラー!!
首の骨どうなってんだよ!!
「この方々はどなたでございますか?」
「俺が迷子のとき助けてくれたんだよ」
颯は笑顔で言った。
あいつ、さらっと嘘つくんだな。
「あらまぁまぁまぁ!! それはそれはそれはありがとうございました! 申し遅れました、私は密と申します。坊っちゃんの恩人様、ぜひ屋敷でお礼をさせて下さいませ」
「……はい」
俺は返事をした。
「それじゃあ密、みんな行こう」
「はい! 坊っちゃん!」
首が戻った。
「おぉ……」
「あぁ! そうそうそう! もし変な様子や行動が見られた場合は……」
「ひぃっ!」
また首が後ろを向いた。
「あなた方の息の根をとめますので、よろしくお願い致します」
にこっと笑い、俺達に言った。
「密!」
また首が戻った。
「まぁまぁまぁ、すみません坊っちゃん! 私にできる事があればなんなりとおっしゃって下さい!」
「早く出発して」
「はいはいはい! 坊っちゃん!」
「じゃ、みんな行くよー! しゅっぱーつ!」
颯は右腕を上げた。
「おぉ……」
敵の本拠地に行くのって、こんな感じだっけ?
「隠!」
密ちゃんがそう言うと、また空間に穴があいた。
「それでは皆様、参りましょう」
俺達は密ちゃんと颯について行った。
次回。
密ちゃんと戦う。




