21.鑑定
前回のお話。
俺は久しぶりに家に帰った。
食後、お父さんと外で運動を始める。
「お願いします!」
俺は、薙刀を持ち、間合いをとる。
お父さんの薙刀は一本。
大丈夫、いける。
気がつくと、お父さんの顔が目の前にあった。
「……!」
俺は驚いて薙刀を振りかぶる。
しかし、そんな単調な動きは読まれてしまう。
態勢がくずれたところを、今度はお父さんが、下から上へと切りかかってくる。
すれすれでかわしたが、顎に少し切り傷がついた。
俺は、紐付きの薙刀を振り回し投げた。
もちろんかわされる。
でもそれは想定内。
左手で短刀を投げ、振り回した薙刀を手元に戻しつつ切りつける。
……はずだったけど、かわされてしまった。
「やっぱりうまくいかないな……」
お父さんは攻撃をやめた。
そもそも攻撃はしていない。
かわしてばかりだった。
「麻陽は、俺や先生と戦って、何か得られる物はあったか?」
「そりゃあ、もちろん! みんな、こういう攻撃の仕方をしているんだなって勉強にしてるよ!」
「それも大事なんだが、その勉強によって、相手の攻撃や防御の仕方を覚えてしまうと、戦いが楽になってしまうんだ」
「?」
「人には癖がある。嘘をつくと目をそらしたりってやつだ。戦いにも癖はある。先生の動きの速さ、俺の攻撃の間合いの取り方、何度か戦った相手なら、自然と頭に刷り込まれているはずだ。だが、敵は初めて。戦いの中で癖を見抜き倒す。どんなに強い敵でも、癖、隙、弱点があるはずだ。それができないと簡単に死んでしまうだろう」
……その通りだ。
俺には余裕がない。
いつもいっぱいいっぱいだ。
相手の動きを見るのも精一杯。
実力が足りない。
「お前に足りないものは、実戦経験だ」
力が欲しい……!!
もうあんな思いはしたくない!
「それを踏まえて戦ってみろ」
「はい!」
俺は立ち上がった。
「エニー」
お父さんはそう唱えると、薙刀が槍のように鋭くなった。
「それって!」
「俺のミラストーンの能力だ」
お父さんもアミナスだったんだ!
「俺は手に埋め込んでいる。何でも切れる物になる」
まじか!
「行くぞ」
「はい! ………………えっ?」
俺の左頬を槍がものすごい勢いでかすめていった。
「え……?」
俺はやばいと思った。
「エニー」
「家がっ……」
家が刃物みたいになってる……!
お父さんの腕も刃物になっている。
「エニー」
「痛っ!」
まさか葉っぱも……!?
「行くぞ!!」
「ひぃぃっっっっ!!!!」
俺はお父さんにボロクソにされながら戦った。
――――
「はぁっはぁっぜぇっはぁっ……」
生きててよかった……。
俺は、呼吸を整え立ち上がり、お父さんの目を見た。
「俺、もう一度ルークス学園に行ってみるよ」
「気をつけてな」
「うん、ありがとう! あ、これもし興味があったら調べてみて」
「……水?」
「傷が治る温泉」
「ほぉ……わかった」
「じゃ、いってきます!」
俺は出発した。
あの時と一緒で、走って向かった。
――――
ギーラに会う事なく、二時間程で到着した。
「久しぶりだな」
あれっ、そう言えばどうやって入るんだろう。
あの時は、試験があったから受付があったし、合格後はずっと学園内にいたし。
……結界張ってるんだよな?
呼び鈴とかないかな?
「すみませーーーーん!!」
応答なし。
「どぉすっかなぁ……」
「あら、どなた?」
結界の中から、20代くらいの女性が出てきた。
「あの、ここの卒業生の麻陽と言います! 花音先生はいますか?」
「その質問の答えは、まずあなたが人間かどうか、確認してからにさせてもらうわ」
女性は左目の眼帯を外し、目を見開いた。
「鑑定」
女性の左目には、ミラストーンがあった。
どうやら、俺が人間かギーラか鑑定しているらしい。
「ミラストーンは黒くありませんでした。血液も問題なし、心臓もあります。よって、あなたは人間です。こちらへどうぞ」
俺は女性の後ろについて行った。
結界の中に入る。
なんだか俺の体だけバチバチしている。
結界を抜けると、そこには学園があった。
「今、お呼びしますね。連絡」
これも能力の一種か。
いろんな能力があるんだな。
「今、実習に行っているみたいなので、一時間ほどかかりそうですが、どうされますか?」
「待ちます!」
「かしこまりました。それではお部屋にご案内致します。こちらへどうぞ」
俺は女性の後ろについて行った。
そして、学園内の一室に案内された。
「こちらでお待ち下さい」
「ありがとうございます」
女性は、お茶とお菓子をテーブルに置いた。
「では、私は失礼致します」
「あのっ!」
「なんでしょう?」
「一緒に食べませんか?」
「私ですか?」
女性は驚いていた。
「あっ! お忙しかったら大丈夫です! すみません、いきなり!」
なんで咄嗟に呼び止めてしまったんだろう。
顔が熱い。
「かしこまりました、私でよければご一緒致します」
女性は静かにソファへ座った。
「麻陽さんは、花音先生の生徒さんでしょうか?」
「そうです、大変お世話になりました」
………………。
会話が……。
会話ってどうやってするんだったっけ……。
自分で誘っておきながら……!
「麻陽さんは、私の事が気持ち悪くないんですか?」
「えっ? どこが?」
「……その……目が……」
「あぁ! 綺麗なミラストーンですね!」
「えっ?」
「俺の仲間にも、片方の目がミラストーンの子がいるんだけど、その子も眼帯してるんです」
「その子、電気の技を使いますか?」
「そう! 知ってるんですか!?」
「私の恩人なの」
俺は、女性から稀星の過去を知った。
稀星は昔は、二つ眼球があった。
昔、ギーラに襲われているこの女性を助けようとしたが、攻撃が遅れてしまい、女性はギーラから攻撃を受けた。
おそらく稀星が攻撃をすると、女性に当たってしまったかもしれないから、攻撃が遅れたのではないかとの事だった。
女性は両目を失ってしまった。
稀星は自分の右目を、女性に移植した。
女性の右目は稀星の目。
左目は石を埋め込んだそうだ。
稀星の右目も、ミラストーンが埋め込まれている。
稀星のしゃべり方も、この女性のしゃべり方を真似したかららしい。
……どこを真似したらああなるんだ。
二人は昔、ここの鑑定人をしていたらしい。
ん?
て事は、稀星はミラストーンが二つある?
ある日、知星が旅にでる事になり、稀星は心配していた。
でも鑑定人としての仕事を放棄したくない。
そこで、女性が背中を押したそうだ。
自分がやるから、自分の事は気にしなくていいから、妹の事を守ってあげてほしいと。
そんな過去があったなんて……。
俺は気づいたら号泣していた。
次回。
俺は、強くなる為に先生方と戦う。




