20.それぞれの道
前回のお話。
みんなが無事生きていて油断した俺。
死んだと思っていた幽華が生きていた。
「気づくのが遅かったねぇ! 今度会ったときは、もっと遊んであげるからねぇ!」
ケタケタと笑いながら、幽華は空へ消えていった。
「ごめん、気づくの遅れた」
響は言った。
「俺達も気づかなくてごめん! 響しか幽華の事気づいてなかった!」
「僕の攻撃効かなかった。レクイエムは効いたのに」
「幽霊らしいからな。レクイエムは、この世にいない人との能力なんだろ?」
「うん……。もっと強くならないと……」
「あれっ、みんな?」
結衣の意識が戻った。
「結衣! 大丈夫か!?」
俺は、結衣のもとへ走った。
「知星ちゃん! どうしたの?」
「それが分からないんだ……」
「今、助けるね! 元気回復!」
知星の顔色が、だんだん良くなってきた。
「……きいっ……」
知星が無事、目を覚ました。
「よかった……ちい」
稀星は安堵の表情を浮かべた。
やっぱり結衣の能力は頼りになる。
全員が意識を取り戻した。
俺は薙刀を拾いに行った。
「本当に真っ二つだ……」
お父さんからもらった薙刀。
ずっと一緒に戦ってきた。
でも……。
「麻陽?」
「結衣……」
結衣は、薙刀を見た。
「直そう!」
「できるのか……?」
「まかせて! 復元!」
薙刀は綺麗に直った。
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
よかった……。
俺はみんなのもとへ戻った。
――――
今回の戦いは、結果的に敵を逃がしてしまった事になる。
ギーラは、ミラストーンを消滅させないと死なない。
あれだけ学んできた事だ。
なのに実際には、その事を忘れてしまっていた。
俺達はまだまだだった。
たまたま運がよかった。
今まで運がよかったから死ななかった。
俺達が生きてる世界は、常に死と隣り合わせだ。
もう誰も死んでほしくない。
そう思ってた。
だけど結果はこのざまだ。
みんな同じ事を考えているのか、沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのは、いつも通り結衣のお腹の音だった。
「あっ……」
顔を真っ赤にさせお腹をおさえている。
「お腹すいたね!」
「あなたは本当に正直な人ね」
稀星は呆れた顔をしていた。
「チョコあげるよ」
響は持っていたチョコを渡した。
「こんなときでもお腹ってすくんだね」
みんな笑いながら口を開いた。
「俺、たまごサンド」
「牛乳飲みたい」
「僕チョコレートパフェ」
「あ! みんなずるい! 私いくら丼!」
「全部私に任せなさい!」
稀星は自信満々に言った。
――――
俺達は宿泊先に戻り、食事をする事にした。
食事をしながら、俺達は今後について話し合った。
今回の戦いで、みんな自分の弱さを痛感した。
俺達は一度解散し、各自、修行をする事にした。
この食事が、みんなで食べる最後の食事だ。
みんな笑顔だった。
明日、目覚めたら、それぞれ別の道を行く。
大丈夫、俺達はまだ強くなれる。
――――
目が覚めると、テーブルにはたまごサンドが置いてあった。
「お母さんみたいだな」
思わず笑ってしまった。
そして、両手で自分の両頬を叩いて、気合いをいれた。
「よし! 行くか!」
俺は家に帰る事にした。
やるべき事は決まっている。
目標もある。
強くなる。
そしてギーラを殲滅する。
だけど弱い。
俺は助けられてばかりだ。
うまくいかない、それは反省する機会だ。
強くなりたい。
道中、そんな事を考えていた。
――――
「ただいま!」
……いないのかな?
久しぶりの我が家だ。
家具には、埃がついている。
「お母さん、祐兄……」
玄関の扉が開いた。
振り返ると、そこにはお父さんがいた。
「……おかえり」
「ただいま、お父さん」
俺はお父さんに、今までの出来事を伝えた。
ルークス学園の事、仲間の事、今悩んでいる事。
お父さんは、全て黙って聞いてくれた。
話をしただけなのに、少し心が軽くなった気がする。
「明日、朝六時だ」
お父さんはそう言うと、部屋に帰って行った。
疲れているのか頭痛がする。
俺ももう寝よう。
――――
俺は、日の光で起きた。
……五時半か。
何か軽く食べるかな。
……ない。
……ない。
え? 何もない。
……やっぱりない!
いつも何食べてるんだよ!
部屋からお父さんが出てきた。
「お父さん、いつも何食べてるの?」
「これから買いに行く」
俺は後をついて行った。
俺がいた時と町は変わっていた。
市場ができ、新鮮な肉、魚、野菜が販売されていた。
「ずいぶん変わったね」
「あれからギーラはほぼ現れない。たまに弱いのがいるくらいだ」
そうだったんだ。
平和になってよかった。
家に戻り食事をする事にした。
「六時に起きて修行かと思った」
「なんだ、腹すいてないのか」
お父さんは俺の食器を下げようとした。
「待った! 待ったー! 食べます!」
出てきたのはたまごサンドだった。
俺は驚いた。
見た目も味も、お母さんのたまごサンドだった。
「部屋の整理をしていたら、レシピが見つかったんだ」
「レシピがあったとしても、お父さん作れるんだね」
「俺でも作れるように、書いてあるレシピだった。陽莉はすごいな」
自分が死んでも作れるように、レシピを残してくれていたんだ。
やっぱりお母さんはすごいな。
…………自分が死んでも?
結界師の能力なら、そうそう死ぬ事はないと思うけど……
いや、あの日はうるう年だった。
それに、アミナスならいつ何があってもおかしくない。
だけど、この違和感はなんだろう。
そう言えば、そろそろうるう年だな……。
「食べないなら下げるぞ」
「食べます! いただきます!」
俺は急いで食事を終わらせた。
「外で食後の運動だ」
「分かった」
俺は外に出た。
次回。
お父さんと修行。
そして、再び学園を訪れる。




