19.知星
前回のお話。
知星の心臓は止まっていた。
俺の薙刀は真っ二つにされてしまった。
操られている仲間が、俺達にとどめをさしにくる。
稀星が放った雷は、知星と俺に直撃した。
「……ごぶぁっ……がっ……はっ……」
動けない。
俺はうつ伏せの状態だった。
全身血だらけ、口からも血が出てきた。
意識が……。
知星は……。
血を流している。
心臓はすでに止まっていた。
これ以上傷つけて、血だらけにしてどうするつもりだ。
くそっ……俺の体、動けよ!
なんで動かないんだ!
「さて……楽にしてあげるわね」
最後まで自分の手は汚さずか……。
「死体」
「レクイエム」
「雷雨」
俺はここで死ぬ。
「防御」
知星!?
電気のリングが、俺達の周りを囲んでいる。
「どういう事!? あんた死んでたんじゃないのぉ!?」
「仮死状態にしたの」
知星は、電気をまとった手を、心臓に置くふりをした。
もしかして、自分の能力で仮死にしたのか!?
「でも意識が戻る保証なんてないだろ!?」
知星はにこっと笑った。
「きいの事くらい分かるよ」
「稀星?」
「きいの雷で私の心臓が動く……そういう計算」
「まさか心臓マッサージ的な?」
「そう」
いや、だとしても百パーセントじゃない。
もしだめだったら、そのまま死んでたかもしれない。
知星って、もっと考えてるやつじゃなかったっけ?
「これで二対三」
……三?
幽華、結衣、稀星、響……。
「一人足りなくね?」
知星は幽華を指さし、にやりとした。
「あれは弱い」
「このクソガキがあぁっっ!」
おいおいおいおい、どうしたんだよ知星!!
「雷撃」
上から雷が降ってくる。
「はっ! こんな電気、簡単に……」
幽華は、にやっと笑った。
「電光石火」
知星は、幽華の背後へ素早く移動した。
「電流」
「……っっぐぅっ……がっぁはっ!!」
どうやら体に、電流を流しているようだ。
さっきから、バッチバチ音を鳴らしている。
すげぇ痛そうだ……。
「電光石火」
「この糞がぁっ!」
「電流」
「ひぎっぃぃっ……っあがっ!」
電光石火が速すぎて、知星の頭の中を読みきれていない。
このままいけば勝てる!
「ぁあああああああああああああああ!!!!!!」
耳に響く!
鼓膜が殺られる!!
知星の動きが鈍くなった瞬間、幽華は何かを食べた。
「はぁぁぁっ……あぁぁぁっ」
あれは……ミラストーン!?
ミラストーンを口にすると、体の傷が回復してきた。
嘘だろ!?
ミラストーンって、そんな使い方もあるのか!?
「復活!!」
大量の骸骨達が地面から出てくる。
ホラー映画みたいだ。
骸骨達に電気で攻撃しても、幽華を倒さない限り復活する。
どうすれば……。
幽華を見ると、稀星と結衣を連れて逃げようとしていた。
「待て!!」
骸骨達が邪魔で進めない。
「雷雨! 電光石火!」
知星は、骸骨達が倒れた隙をみて、電光石火で移動するが、すぐに別の骸骨達が群がってくる。
このままだと逃げられる。
あれっ、そういえば響は?
「レクイエム」
声のする方を向くと、響が骸骨達を操り、幽華へ攻撃を仕向けていた。
「さっきのギーラの、バカでかい声で目が覚めたよ」
「響! よかった!」
幽華に大量の骸骨達が襲いかかる。
「……ちっ! 操作!」
「レクイエム」
幽華の操作能力と、響の操作能力の根比べだ。
この隙に倒せればいいけど、稀星と結衣が攻撃をしてくる。
どうすればいいんだ。
そのとき、目の前に言葉が現れた。
これって、新しい能力!?
「全改良」
そう唱えると、知星の体が徐々に成長し、大きくなっていった。
「元の私だ!」
えっ?
て事は18歳?
髪の毛は変わらず天パ、ショートヘアだ。
手足はすらっと伸び、スタイルが良くなっていた。
服はそのままのサイズだったので、きつそうだ。
「元に戻ったならできるかも」
知星の体の周りが光っていた。
「雷雲」
たくさんの黒い雲が集まってきた。
「雷神」
知星の体の周りが、電気でバチバチ音を鳴らしている。
角が二本生えた女性が出てきた。
あれが雷神?
もっと強面の、鬼みたいなやつが出てくると思っていたが、実際には20歳くらいの、綺麗な女性が出てきた。
三つ編みがたくさんで、ポニーテールだ。
何て言う髪型だろう。
「雷電」
雷神から無数の雷が出る。
幽華に向けて一気に攻撃をする。
「操作!」
幽華は、稀星と結衣を盾にしようとした。
「遅い!」
雷神の攻撃の方が速かった。
光、電気は速いんだっけ?
「っっぎぃぁあああああああああっっ!!!!!!」
黒こげだ……。
幽華は倒れた。
もう原型がない。
稀星と結衣も、洗脳が解けたのか、その場で倒れた。
「結衣! 稀星!」
「きい!」
俺達は、二人の安否を確認しに向かった。
「結衣!」
「……麻陽?」
よかった!!
「きい!」
「……ちい? その姿……」
「きいっっ!!」
知星は大泣きしていた。
二人きりの家族だもんな。
よかった、稀星も無事だ!
「あっ!」
稀星の声の方を向くと、知星がどんどん小さくなっていた。
「また子供になっちゃった」
「あなた元に戻ったんじゃなかったの?」
「多分、麻陽の能力」
「どういう事?」
二人は俺を見た。
「功見さんからもらったミラストーン、チェンジって言う能力らしいんだけど、まさか肉体まで改造できるなんて……」
「一時的だけど、元に戻れるなんてすごいわ」
「そう……だね……」
知星はそう言うと、地面に倒れた。
「知星!」
「……眠ってるだけみたい。副作用かしら……」
「無理矢理、元の姿に戻したから?」
「心臓の音は異常ないよ」
響は耳がいいから、そこまで分かるんだな。
とりあえず、知星を寝かせる事にした。
「……! 激しく!」
「あんたの攻撃は効かないよ!」
幽華!?
生きてたのか!!
次回。
俺達は弱かった。
もっと強くならなければいけない。




