2.2月29日
前回のお話。
敵の名前はギーラ。元々は人間なんだって。
人間だったやつと戦わなきゃいけない。
祐兄できるのかな。
明日はうるう年で結界の力が弱くなる。
お母さん大丈夫かな……。
「おはよう! 麻陽!」
部屋のドアが勢いよく開いた。
「お母さん、おはよう。びっくりするから朝は静かにって言ってるでしょ?」
「ごめんごめん! これじゃあ、どっちが親か分からんねー!」
いつもの元気なお母さんだ。
「もう、お母さん大丈夫だから仕事行ってくるね。お母さん特製、たまごサンド食べてね。あと、今日は外にでない事! いってきます!」
お母さんは、俺の頭を力強く撫でた。
「いってらっしゃい」
お母さんが元気になってよかった。
2月29日になったけど、特に変わった様子はなかった。
お腹がすいた、たまごサンド食べよう。
俺はキッチンに移動した。
「いただきます!」
俺が、たまごサンドを食べようとしたとき、お父さんの部屋から、祐兄が走ってきた。
「麻陽、母さんは!?」
「さっきお仕事に行った。元気だったよ! 今日はいつもよりお仕事早いよね」
「昨日の父さんの話が本当なら、元気じゃないはずだ。母さん、俺達の事を守る為に……」
そう言うと、祐兄は急いで外に出ていった。
「祐兄! お母さんが外はだめだって言ってたよ! 祐兄!!」
どうしよう……お父さんに言わなきゃ。
俺は急いでお父さんの部屋に行った。
「お父さん!」
「……麻陽、どうした?」
「祐兄が外に行っちゃったんだ!」
「なんだって? 今日は結界が完璧じゃないからって、昨日話したばかりじゃないか!」
お父さんは、急いで外に行こうとしていた。
「お父さん! 俺も行く!」
「だめだ!」
「俺も心配なんだ! それに、俺を一人するの!?」
「……行くぞ!」
俺はお父さんの後を追うので精一杯だった。
山林を走るのって大変なんだな……。
祐兄と鍛えてるんだけどな。
「麻陽! しゃがめ!」
しゃがむ?
お父さんは振り返り、勢いよく薙刀を俺の後ろに振りかざす。
危ない! 当たる!
俺は急いでしゃがんだ。
「ぐえっ!!」
後ろにいた人が、真っ黒な血を出して倒れた。
「ひぃぃぃっ!! 今のがギーラ!?」
「そうだ、ギーラは弱いやつを狙う。」
て事は俺、今殺されそうになったって事!?
恐い恐い恐い恐い!!
……でも血を出してた。
人間だった人か……。
「殺らなければ殺られる、急ぐぞ」
お父さんがそう言った瞬間、遠くで爆発音が聞こえた。
「行こう!」
「待ってよ! お父さん!」
俺は必死にお父さんの後を追った。
「祐陽!」
お父さんが叫んだその先は、見渡す限り森だけど……。
…………いた!
「祐陽! しっかりしろ!」
「祐兄!」
祐兄の周りだけ血だらけだ。
真っ赤な血と真っ黒な血……。
「父さん……俺……母さんを守れなかった……」
祐兄は、口からたくさん血を出した。
「もうしゃべるな、ありがとう、ごめんな」
「祐兄!」
「麻陽……ごめん」
それが、祐兄の最後の言葉だった。
――――
祐兄と、お母さんの葬儀が終わった。
お母さんの死体は見つからなかった。
靴や指輪が見つかった事から、ギーラに食べられたのではないかと、お父さんは言っていた。
結界師など石をもった人は、ギーラに狙われるらしい。
能力者はギーラにとって、栄養素が高いんだって。
祐兄もいない、お母さんもいない……。
これからどうしたらいいのか分からない。
俺は、遠くの景色を見ていた。
後ろから誰かの足音がする。
振り返ると、そこにはお父さんがいた。
「麻陽、祐陽の遺品なんだが、この石……学園に寄付しようか、家で研究しようか悩んでる」
石……これさえなければ、みんな幸せだったのかな。
血がこびりついてる……。
俺達が何をしたって言うんだ。
何も悪い事してないのに。
……後悔のないように生きなさいって、お母さん言ってたな。
……………………。
「お父さん、その石、俺にちょうだい」
「何をするつもりだ?」
「その石を使って学園に入る」
「……能力者でない者が入学できる、一般枠と言うものはある。ただ、そこで石の適合検査に合格しなければならない。寄付された石と違って、実の兄の石なら適合確率もあがるかもしれない。でも今度は、麻陽がギーラに狙われるかもしれないんだぞ?」
分かってる……。
お父さんの瞳に映っている俺は、 覚悟を決めた顔をしていた。
「俺、仇を討つよ」
それから俺は、石について色々試してみた。
水に浸してみる、舐める、かじる。
何も体に変化なし。
削ってみようかな……。
「やめろ! やめろ! 焦っても仕方ない、身体強化訓練するぞ」
「はーい」
俺が五歳だからなのもあるけど、パンチ、キック、フェイント、全部お父さんには効かない。
こっちは息切れしてるのに、全然平気そうだ。
「隙あり」
お父さんの拳が、俺の目の前で止まった。
「お父さんって普段、研究で引きこもってるのに強いんだね」
「強くないと、陽莉を守れないからな」
「お母さんの事、大好きなんだね」
「結局、守れなかったけどな……」
お父さんの寂しそうな顔、初めて見た。
葬儀のときも泣いてなかったのに。
「もう一度、手合わせ願います」
「よし」
――――
そして、俺は12歳になった。
今日、ルークス学園の試験を受けに行く。
結局、石の事は分からなかった。
「お父さん、いってきます」
「……石を持った者を、みんな『アミナス』と言っている」
「アミナス?」
「『命』と言う意味らしい。何があっても無事に帰ってこい、生きる事を諦めるな」
「わかった、まずは合格しないとね! いってきます!」
俺は笑顔で出発した。
これから俺の新しい人生が始まる。
山林を走っていると、こちらに向かって人が襲いかかってきた。ギーラだ。
俺はもう五歳じゃない。
お父さんにもらった薙刀を一振し、ギーラを倒す。
「うん、いい感じだ」
急いでルークス学園に向かわないと。
……あれっ? 石がない。
どこだ? 今、動いて落とした!?
地面を探すが見あたらない。
どうしよう! 下にないって事は上は!?
あった! 木の枝にひっかかってたのか。
下から薙刀でつつくと、石が落ちてきた。
よかった……。
そのとき、地面の根っこに引っかかり転んでしまった。
「いてっ!」
ごっくん。
え……やばい、石を飲んじゃった!!
次回。
学園に到着した俺は、石の能力を発動できるのか!
そして合格できるのか!




