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結局彼は孤高に立つ  作者: ◾️
第二章 二学期
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第八話 祭りの後で

 そして、今に至る。

 彼女の馬鹿騒ぎのお陰で、雷は学校中を歩き回された。

 体育館でバスケ部のたこせん。

 運動場では野球部とサッカー部がいがみ合いながら、唐揚げとポテトの売り合い。

 一方、校舎の中はカルタ大会やら吹奏楽部による演奏などで活気がある。


 言葉で表現する事が難しいほど、生徒やら地域の人が楽しんでいた。

 そこは明るく笑顔があり、影なんて存在しない光り輝いた場所であった。


 故に彼。大神雷がそこに目を向けなかったのは必然である。













 ーー



 ふと、背中に何かが乗っているように感じた。

 それと同時に、今まで機能していなかった五感がだんだんと戻り始め、眠る前の記憶が蘇って来た。



「………ん」


「結局お前は一人で回ったのか?」



 まだ起きもしていない私に、後ろから声がかけられる。腕から顔を起こし、ゆっくりと両手を挙げて伸びをする。

 すると、バサッと何か毛布のような服のような物が私の後ろに落ちた。



「大神君……?」


「よく寝てたな、お前」



 いつから寝ていたのだろうか。

 今日の文化祭はここまで、と言う事で一旦教室でホームルームがあったはずなのだが、そこから一向に記憶が出てこない。

 ホームルームで寝てたのか、と気づいた時にはさっき後ろに落ちた私のコートを彼が拾ってくれていた。



「ありがと」


「んじゃ、帰ろうぜ。下校時間ぴったしだ」


「えっ?」



 未だ寝起きのテンションで、ふわふわしている私に彼は前置きなしに現実を突きつける。

 バッと時計を見れば、時間は六時半を回っていた。

 一気に回りが広く見えたように感じた。

 窓から差し込む夕日が今にも消えかかっている事や、オレンジ色に光る教室に誰もいない事。そして、こんな時間まで私が起きるのをずっと待っていた人がいる事。



「ごめんなさい」


「あー、別に俺が勝手に待っただけだから。お前が謝る必要なんてねぇよ」


「じゃあ、ありがとう?」


「それでいい。ほら、帰ろうぜ」



 彼は横に掛けてあった私のカバンを持ち上げて、手渡しで渡してくれた。

 私はそれを受け取り、椅子から立ち上がった。

 静寂で包まれた教室から足を踏み出し、冷たい廊下へと出て来た。

 廊下は教室より一層冷え切っており、冬の寒さが近づいている事を示していた。



「さて、と」


「そう言えば坂口さんは?」


「坂口?あーアイツはお前を俺に預けて帰ったよ。なんだっけ?今日は1日目の後夜祭があるとかなんとか言ってた」


「?後夜祭って全部終わってからやる物じゃないの?」


「だからよくわかんねぇんだよ。まぁ、俺は絶対行かないけどな」



 そんな言葉を交わしながら、スタスタと歩き始める。

 よくよく隣を歩く彼を見ると、彼の顔はいつも以上に疲れ果てていた。

 理由なんて聞く必要も無いし、私自身それに少しだけ加担していたので何も言えない。

 が、彼はそんな私を見てか少しソッポを向きながら口を開いた。



「ったく、ホントお前らはお節介なんだよ」


「それは私に言うんじゃなくて、坂口さんに言うべきじゃない?」


「どっちもだ。ま、アレだ。今日は本当に疲れた。どっちが世話を焼いてるのか、わかりゃしねぇ」



 今日の彼女の騒ぎ様に大神君は愚痴をこぼす。もう何回も彼の愚痴を聞いている身だが、今日の愚痴はいつもとはまた違った気がした。

 どこか爽やかで。愚痴にしては少し嬉しそうな感じだった。














 ーー



 色々と喋りながら歩いていると、あっという間に駅へと着いてしまった。



「じゃあまぁ、気をつけて帰れよ」


「うん。バイバイ」


「おう」



 人を嫌う彼は、今日の様な人と関わる事が多い日を好まない。だから彼は孤高に生きている。

 彼は明るい場所から目を背ける。

 しかし、それは彼だけではないのではないだろうか。


 彼ともう一人。人を嫌い、関わる事を拒絶する人間がいる。


 そう。それは天宮燈。私自身である。













次回は火曜日です!

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