第五話 少し寒い日
「ぶんかーさーい!!」
「黙れ。現実突きつけるな」
「あなたもうそれ重症じゃない」
とうとう待ちに待ってもいない寧ろ来るなと願っていた文化祭がやって来た。
不要な新聞の売り込みじゃないんだから、断ったら来なくていいって制度にして欲しい。
それならもう、学校のイベントなんて幼稚園の頃から私にはやって来ないのに。
「つか、なんでこんなに人いんだよ。遊ぶ前に働けよ社畜共!」
「いや、休ませてあげてよ!土日なんだし!」
私達が今いるのは校舎前。今日が櫻東高校の学園祭だと聞いて集まっている地域の人達なのだが、
「始まるまであと30分はあるんだけどなぁ」
彼が言うように、まだ8時半。9時から始まる文化祭には少し早い気がする。まぁ、それだけ待ちきれないと言う意味なら、特に何も言う気はないのだが。
彼は別である。
「こ、こんなに人が一斉に入ってくんのかよ……!俺もう帰ろっかな」
「出欠、と言うか朝倉先生が家まで行くとか言ってたよ」
「あのババア……!!」
「あーけど。先生も忙しいだろうから、ただのハッタリかもね」
「よし。帰るか」
即座に回れ右し帰りそうな所を、腕を掴んで引っ張り戻す。
彼は「帰らせろぉぉ!」とか何とか呻きながら坂口さんと私に引っ張られながら正門をくぐった。
にしても、今日は少し寒い気がする。
空を見ながら少しそんな事を思った。
ーー
「お、大神じゃないか。ちゃんと来てたのか」
「そら来るでしょ。あんた何回俺の携帯に電話かけてくるんですか」
「二回?」
「二十ッスよ。桁違いますから」
「そ、そうだったか?」
教室でグッタリとしている彼の元に、正装で着飾った格好の朝倉先生がやって来た。
相変わらず姑息な手段を取るのが上手い人だ。電話20回とか何をどうすれば、そんな方法に至ってしまうのだろうか。
ウチの先生は相変わらず怖い。
「まぁ、来なくても私自ら赴くつもりだつたけどな!」
「なに自信満々に言ってんですか。それもう完全ストーカーじゃん。通報しますからね?」
「いや、通報までは……ねぇ?」
「ねぇ?って言われてもねぇ?」
「腹立つ……!!」
最後のは朝倉先生の心の言葉が漏れたのではなく、私の横にいた坂口さんから漏れた本心だ。
ご想像の通り、ものすごい殺気に満ち溢れている。これもう大神君死んじゃうんじゃないの?
「よし。決めた!」
「えっと……何を?」
「今日の文化祭。ライライと一緒に行動する!」
「そう。………えっ!?」
坂口さんが何やら決断したかと思えば、やはりとんでもない事を決断したらしい。
さっきの流れから全く想像できないのだが、彼女の中で何かが繋がってそう言う事になったらしい。
「ライライのあの腐った根性、叩き折ってそのまま新しい球根植え付けてやる」
いや、あの、その、何する気ですか坂口さん。彼の頭のドス黒いのを抜き去ってお花畑にするって事ですか?
頭、チューリップにすり替えるんですか?
「どしたの、あかりん?」
「い、いや。なんでもないわ」
「そ。よし!じゃ、あかりんは補助お願い。私がボッコボコのギッタンギッタンにしてやるから!!」
指の骨をボキボキ鳴らしながら、まるで少年漫画の主人公を装う仕草で彼女は意気込む。
そんな事になるとは全く知らない彼は、今もまだ朝倉先生とストーカーがどうとか何とかとくっちゃべっている。
知らぬが仏。まさにその通りだろう。
そしてそれを知ってしまった私は、不動明王、阿修羅の名の下に彼女による大神雷フルボッコ計画に賛同させられる事になってしまった。
うん。今日は少し寒い気がする。外の気温も
そうだが、私の心もいつもより冷たく寒い。
次回は火曜日です!お楽しみに!
センター受験生の皆さん。お疲れ様です。明日も頑張ってください!応援してます!!




