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結局彼は孤高に立つ  作者: ◾️
第一章 一学期
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第二十七話 今日の夜はいつもより長い

夜は必ず明ける。長く感じようが、短く感じようが必ず夜は明け、太陽が昇って朝が来る。だが、そうとわかっていても明けない夜に早く朝になれと急かしてしまう。今の私が正にその例えだ。


あの後、私達は夕食の豪華さに驚きながらもあっという間に完食し、食事処から部屋へと戻って消灯となった。疲れていたのか坂口さんと先生は瞬く間に寝てしまい、微妙に疲れていない私だけこうして寂しく夜が明けるのを待っている。



「売店行こうかな………」



そう呟き、私は浴衣姿のまま鍵を持って外へと出た。昼間は猛暑日やら今年一番の暑さなどと煽てても、太陽が沈んでしまえばそんな暑さは遠くの果てに飛んで行っている。スリッパをカサカサと鳴らしながら、私は淡々と売店へ向かって足を進めた。
















ーー



エレベーターはどこにも止まる事なくスムーズに降り、目的の一階に辿り着いた。エレベーターの向かいにある小さな鳩時計がチクタクと秒を打っている。その時始めて今の時間が夜中の二時なのだと気づいた。一瞬売店も閉まっているか、と不安になったが幸い売店は三時までなら開店しているらしい。さっきすれ違った夫婦がそう呟いていた。


財布は持っているが特に何かを買うと言った事は考えていない。単なる暇つぶしと睡魔を呼び起そうと言ったぐらいの気分転換だ。売店の正面まで行き、お土産の定番品などを見ながら右往左往する。そんな事をしていると、後ろから不意に声をかけられた。



「天宮、お前こんな時間に何してんだ?」



私の名前を知っていて、低くもなく高くもない声で話しかけて来る男性。振り返って見ると私の想像通りの人がそこに立っていた。男性用だが同じ柄の浴衣をき、コーラの缶を片手に猫背で立っている大神君がそこにはいた。



「……驚いた。あなたもこんな時間まで起きているのね?」


「驚いたんならもっとそれらしい顔しやがれ。日々の生活習慣の悪さが出ちまったんだよ。俺の活動時間は時が0になってからだからな」


「寝なさいよ。って、今の私が言えないけど」


「まぁそう言うこった。どうする?何か買うのか?」


「いいえ。単なる暇つぶしに来ただけだから」


「そうか。なら、じゃあ俺は買おっかな」



そう言って彼は売店の奥へと入って行き、オレンジジュースを二本買って戻って来た。何も言わずに彼を待っていると、帰って来た彼からオレンジジュースを目の前に差し出された。私は一瞬返す言葉が見つからず、あたふたと「えっ」だったり「あの、その」と言葉に詰まっていると、彼は苦笑しながらキチンと手に渡してくれた。



「ったく何慌ててんだよ。コッチが緊張するだろうが」


「ご、ごめん……なさい」



今度は深くため息を吐き、大神君はコーラを一息に飲み干す。飲み干すと彼は辛そうな顔をしながら低い声で私に問うた。



「……お前さぁ、ホントは何がしたいんだ?」


「えっ……?」



私には彼が何を言っているのか、全くわからなかった。何がしたいか、そんな事にホントも嘘もない。ただ私は常変わらない日常を送っているだけだ。そこに彼と言う特異があろうとも、私の日常はいつもの日常に戻っている。なら彼の言う『何』とは一体なんなのだろうか。



「何って?」


「あーいや、何でもない。気にしないでくれ」



彼は辛そうな顔でそう謝った。その顔はいつもより一層悲しそうで、寂しそうで、何かに対し苦しんでいるような顔だった。けれど私には彼のそう言った心境を救う手立ては持っていない。



なぜなら、私と彼には溝があるから。















ーー



私はその後、彼と別れて部屋に戻った。部屋では坂口さんと浅倉先生が大の字になって爆睡している。意外にも坂口さんの寝相が良いことに驚いて取り乱しそうになったが、なんとか平常心を保ちながら、二人の間を通ってベランダへと出た。


真っ暗な夜空に、夏の大三角形や他の星座が散りばめられている。そんな満天の星空を見ながら彼から貰ったオレンジジュースに口を付けた。彼と私には溝がある。私が自分の周囲に溝を掘り、そして彼もまた溝を作っているから二倍の溝ができてしまっている。









━━━━━━あぁ、今日の夜は本当に長い。















はい!どうも!■です!


次回は土曜日を予定しています!次回で夏休みは終わりかな?とりあえず、お楽しみにー!





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