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結局彼は孤高に立つ  作者: ◾️
第一章 一学期
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第十一話 お仕事終了

いつもの通り朝七時に起床し、母が作り置きした朝食を食べていつものように七時半に家を出る。十分ほどかけて駅まで向かい、いつも通りの時間に来る地下鉄に乗る。そして同じ通学路を歩き、同じ時間帯に学校に着く。ここまでは何一つ変わらない日常だった。



しかし何一つ変わらない日常に少しの狂いが生じれば、その日常は崩壊する。



「……パトカー?」



五月上旬。あと何日かでゴールデンウィークとなるこの時期に白と黒を基調とし、上の所でクルクルと赤いランプを回す車が停まっている。防犯教室は今日ではないから、どこぞの馬鹿が人生をぶっ潰したのだろうなどと考えながら知らん顔で横を通り過ぎた。


1-Cと書かれた教室まで真っ直ぐ向かい、ガラガラと音を立てながら教室に入る。掃除ロッカーの真ん前にある席では、いつものように黒髪の少年が腕を枕に安らかな眠りについていた。ガヤガヤと騒ぐクラスメイトを横目に私は自席に向かい、教科書をカバンから取り出して机の中へと滑り込ませると、ブーと右のポケットにしまってある携帯が震えだした。



「………急ぎ。至急部室に集合せよ?」



内容を小声で呟いて、ふと後ろに座る彼の方へ目を向ける。彼もまた、私と同じ人から来たメールを目を読み終えて深く大きなため息を一つ零していた。まだ一時限目の授業までは時間がある。それに帰宅部では朝倉先生の命は絶対だ。今回ばかりは行くしかない。そう決意し、私は部室へと足を運び始めた。



「どうしよ!どうしよ!!大変な事になったよぉ!!」



教室に入った途端、朝倉先生が涙目で私の胸に抱きついて来た。言葉を聞いただけでは、何がどうなって大変な事になったのかはわからないが、どうせロクでもない事なのだけはハッキリわかる。が、ここで率直に言ってもダメなので背中を摩りながら一応聞いた。



「……どうしたんですか先生!?」


「給料減額されたんだろ。早く結婚してヒモになれよ」


「そうじゃない!」


「じゃあなんですか。あぁ、わかった。彼氏にフラれたのか。お疲れ様です」



躊躇いもクソもなく彼はど直球で先生を煽りにかかる。ホントにどうして彼はそんなストレートに聞いてしまうのだろうか。ある意味尊敬に値するが、悪く言えばただの最低野郎だ。少しは柔らかくオブラートに包むぐらいの努力をして欲しい。



「違う!!…………コホン。今日、校門の前で警察を見ただろ?アレなんでかわかるか?」


「大神君が何かしたんじゃないですか?」


「おいコラ、昨日のことまだ根に持ってんのか」


「そう?ここの学校、そこそこ偏差値高いからそんな馬鹿なことをするのあなただけだと思ってたのに」


「俺もその偏差値高い学校に入学してんだよ」


「喧嘩しない!それに天宮の予想は奇しくも外れだ」


「奇しくもってなんだよ、奇しくもって。そうやって人を小馬鹿にするから結婚できねぇんだろ」


「ガフッ……!!」


「あのね、大神君。世の中には言って良いことと悪いことがあるって知らないの?」


「今のは言って良いこととだろ。実際そうだし」


「……まぁ、そうね」



初めの涙とはまた別の意味で涙を流す朝倉先生に、彼も私も冷たい目線を送る。少し楽しかったのは事実だが、今はそんな事よりも早く内容が知りたい。そう訴えた目を私が先生へ向けると、彼女はまた咳払いを一つして話を戻した。



「君達が担当した仕事、本庄りえと坂口恵美についての事だ。昨日の夜、本庄りえが何者かに性的暴力を受けかけたらしい」


「かけた、と言うことはつまり……」


「あぁ。未遂で終わっている。不幸中の幸いと言った所だろうか。そして警察は犯人を探して今も模索中だとさ。念のためと言われたから君達の事も話した。まぁ、君達やクラスメイトにそんな大事をしでかす事ができる人間はいないだろうがな」


「……坂口恵美は今何してるんですか?」


「事情聴取だよ。彼女には動機もあるからね。けどまぁ、彼女は容疑から外れるな。何せ私と保護者が一緒にいたんだ。アリバイはバッチリだよ」


「そうっすか」



驚きもあったし、偶然にしてはタイミングが良すぎるっと疑心もあった。確かに彼女達が帰る道は人気が少ない駅だ。駅周辺には草っ原しかなく、コンビニの一つもない。だから多くの人は一個前か、奥の駅で降りて歩くらしい。いつもの癖ってなのか、彼女は部活終わりの夕暮れ時にその道を歩いてしまったのが運の尽きだと先生は言った。



「あぁ、そうそう。今日の放課後に坂口が本庄の病院にお見舞いに行くと言っていた。君達も同行してあげてくれ。彼女はまだ一人では心細いだろうからな」


「給料二割り増しで」


「ぶ、部の私物に何かを購入するのならいいぞ」


「まずは後ろの椅子と机を片付けないとね」


「PS4でいこう。もちろんテレビ付きでな」


「あ、アレって月額料金かかるだろ!?」


「給料無しなんだからそれぐらいやってもらわないと」


「鬼畜だぁ!」













ーー




学校での時間は次から次へと終わって行き、今最後の授業である日本史がチャイムと同時に終了した。教科書をカバンに詰め、綺麗にスポッと収まった事にちょっとした達成感を得ていると、チョンチョンと肩を叩かれた。



「あ、あのさ。天宮さんも付いて来てくれるんだよね?」


「えぇそうよ。まぁ、余計な人も一人いるけどね」


「余計な人……あぁ、大神君か。大丈夫だよ、食べたりしないもん」


「あなたの大丈夫か、大丈夫でないかの違いは食われるか否かの問題なのね……」


「?」


「まぁいいわ。彼も呼んで早く行きましょ」


「うん!」



嬉しそうな彼女と、退屈で今にも死にそうな顔をした彼と一緒に私は病院へと足を運んだ。


数十分で病院に着き、受付を済ませて彼女がいる三階の病室へ向かう。病室の前まで来た瞬間、先頭を歩いていた彼女は足を止めてこちらに振り返った。



「……お願いなんだけど。ひ、一人で行かしてくれないかな?」



上目遣いに彼女は尋ねて来た。理由なんて聞かずともわかる。彼女は四月、いや中学校の頃からのイジメとケリをつけるのだ。それをわざわざ止めるほど私と彼も野暮ではない。無言で首を縦に振りOKを出すと、彼女は九十度に頭を下げてゆっくりと病室の中へと消えて行った。



「…………結局、あなたは何がしたかったの?」



静寂となった病室前で、私は彼に一連の動きの意図を問う。初めから終わりまで全て自分勝手に動いた彼だ。こうなる事まで見えていたに違いない。いや、そうであると確信付ける為に私は問うた。



「……ハッピーエンドってのはどんだけ待ったって来やしねぇんだよ。あいつ自身が生きたいと願い、あいつ自身が一人で終わらすと決めた。そうやって自分自身で前を向いて歩くしかな。それに……死にたいって言う奴ほど生きたいんだよ。だから最後の最後で自分の死を選べるのは英雄か馬鹿のどっちかだ。他の一般人は生きる事しか選べない」


「ならあなたは最後の最後になったら、どっちを選ぶの?『生』か『死』か」


「もちろん『死』だ。迷わず死を選ぶ自身がある。なにせ、俺はロクでもねぇ大馬鹿野郎って自覚があるし、人類最低って肩書きを背負った英雄だからな。選ばないわけにはいかねぇよ」


「あら、自覚があるのね。それは良いことだと思うわよ?」


「お前はどっちを選ぶだろうな」


「さぁ?それは私が決めるわ」



生きるか死ぬか。そんな場面に私は一度も出会したことが無いし、そんな事一度たりとも考えた事がなかった。坂口恵美の願いや決断も大神雷が言う死に様も、なぜか私には美しいが故の儚さを感じた。それが自分自身に無いこともわかっていながら。








ーー



「新入部員……?!」


「そうだ。新入部員だ!」


「よーし、これで仕事が楽になるな」


「ちゃんと三等分しろよ、大神。まぁとりあえず入って貰おう。いいぞ、入ってくれ!」


「お邪魔しまーす!!天宮さん!大神君!一年C組坂口恵美です!よろしくね!」



これでまた、新たなる部員獲得でこの居心地の悪い帰宅部も少しは明るく華やかになっただろうか。そうあってほしいと願う私だった。






はい!どうも!■です!


あと二日!あと二日さえ乗り切れば休日です!!皆さん、頑張りましょう!!まぁ、そんな事はどうでも良くて。新入部員が入って来ました!よーし、ツッコミ担当が決まったな。雷には暴れてもらわないと!


さて次回は明後日金曜日の夜9時です!お楽しみに!

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