↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界で最も恐れられる男は、ただの会社員だった  作者: パルパル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/21

第4話 戻せる時間

翌日の夜。


悠真は仕事を終え、自宅のテーブルにノートを広げていた。


そこには、昨夜から試したことが書かれている。


時間が止まる。


自分だけが動ける。


止められる時間は、今のところ三秒ほど。


「何なんだよ、これ……」


ペンを置き、深く息を吐く。


自分の身に起きていることを、誰かに相談するわけにもいかない。


病院へ行ったところで、説明できるはずもない。


それに、こんな能力があると知られたら、何が起きるかわからない。


悠真は、ひとまず秘密にすると決めた。


⸻


試していないことが、まだあった。


時間を止める以外にも、何かできるのではないか。


そう考えた悠真は、テーブルに置いたボールペンを見つめた。


ペンを手に取り、テーブルの端から落とす。


床にぶつかる直前。


悠真は強く念じた。


戻れ。


すると、落ちていたペンが床から浮き上がった。


そして、元の位置へ戻る。


「……嘘だろ」


悠真は目を見開いた。


今度は、ペンを落とす前の状態に戻っている。


床に落ちた音も、手の感触も、すべてがなかったことになった。


スマートフォンの時計を見る。


わずかに時間が戻っている。


何度か試すと、戻せるのは十秒ほどだった。


「時間を……戻したのか?」


自分でも信じられない。


だが、確かに起きたことだった。


⸻


さらに、もう一つ。


悠真はテーブルの上に置いた時計を見つめた。


今度は、時間を速めるように意識する。


すると、秒針の動きが急に速くなった。


通常よりも二倍ほどの速さで進んでいる。


「速くなった……?」


自分の身体まで速くなるわけではない。


周囲の時間の流れそのものが変わっているようだった。


ただ、まだ細かく制御できない。


長く続けようとすると、すぐに元に戻ってしまう。


悠真はノートに書き加えた。


時間を止める。

時間を戻す。

時間を速める。


どれも普通ではない。


そして、どれも自分にしか起こせないようだった。


⸻


翌朝。


会社へ向かう電車の中で、悠真は昨夜のことを思い返していた。


時間を止めることも、戻すことも、速めることもできる。


しかし、こんな力を持っていても、今の自分に何ができるのだろう。


仕事を辞められるわけでもない。


生活が急に楽になるわけでもない。


それに、人に知られたくない。


「……普通に暮らしたいだけなんだけどな」


小さく呟いた。


そのとき、スマートフォンが震えた。


見覚えのない番号からの着信だった。


悠真はしばらく画面を見つめたあと、通話ボタンを押す。


「もしもし」


『黒瀬悠真さんでしょうか』


落ち着いた男性の声だった。


「はい。どちら様ですか?」


『久世直人と申します』


悠真の手が止まった。


『先日は、私を助けていただきありがとうございました』


「あ……あのときの」


『一度、直接お礼を伝えたいと思っています』


久世は少し間を置いて続けた。


『それと、あなたに確認したいことがあります』


「確認、ですか?」


『あなたは、あの夜、何を見ましたか?』


悠真は答えられなかった。


電話の向こうで、久世が静かに言った。


『一度、お会いできませんか』


その声には、単なる礼だけではない何かが含まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。