第18話 消された記録
二度目の現場から戻った翌日。
水原は、調査資料を見つめたまま動かなかった。
「おかしいですね……」
「どうしました?」
隣にいた悠真が尋ねる。
「昨日まで存在していた記録の一部が、別の内容に置き換わっています」
「置き換わっている?」
水原は画面を見せた。
そこには、問題の企業と取引していた会社の一覧が表示されている。
だが、昨日確認した内容と一部が違っていた。
「この会社、昨日はここにありませんでしたよね?」
「そうです。逆に、昨日まであった会社が消えています」
悠真は資料を確認した。
「データの更新ミスではないんですか?」
「その可能性もあります。ただ、変更された箇所が不自然です」
水原は記録の更新履歴を開いた。
変更時刻は、昨夜の深夜。
しかも、通常の更新作業では使われない経路からアクセスされていた。
「誰かが意図的に変更した可能性があります」
「組織の外からですか?」
「まだわかりません。内部の操作記録も確認する必要があります」
水原はすぐに榊へ報告した。
⸻
会議室。
榊、久世、真壁が資料を確認していた。
「外部からの不正アクセスか?」
真壁が尋ねる。
水原は答えた。
「その可能性があります。ただし、現時点では内部の端末から操作された形跡も残っています」
久世の表情が険しくなる。
「内部に協力者がいる可能性もあるということか」
「断定はできません」
榊は資料を閉じた。
「調査範囲を広げるな。まずは、変更された記録と元の記録を照合する。関係者への確認も慎重に進めろ」
「わかりました」
⸻
その日の夕方。
悠真は自分が整理した資料をもう一度確認していた。
変更された記録と、以前保存した一覧。
二つを見比べていると、あることに気づいた。
「……この会社だけ、残っている」
送金先が変更されている中で、一社だけは名前も所在地も変わっていない。
しかし、その会社の取引記録だけが、ほかの企業と違って一日早く更新されていた。
悠真は水原を呼んだ。
「この記録も確認した方がいいと思います」
水原は画面を見て、すぐに頷いた。
「確かに。これは見落としていました」
悠真は少し不安になった。
「僕が気にしすぎているだけかもしれません」
「いいえ。確認する価値があります」
水原は新しい調査項目を追加した。
その一件が、やがて《ヴェイル》の内部に潜む問題を明らかにすることになるとは、まだ誰も知らなかった。




