第17話 二度目の現場
「黒瀬、準備はいいか」
真壁の声に、悠真は緊張しながら頷いた。
「はい」
今日は二度目の現場任務だった。
前回と同じく、悠真の役割は後方からの記録と連絡。
ただし、今回は事前に周囲の地図や退避経路を確認していた。
真壁から教わった訓練も、少しずつ続けている。
「前回のことは覚えているな?」
「はい。勝手に動かず、異常があればすぐ連絡する」
「そうだ。危険を感じたら、任務より自分の安全を優先しろ」
「わかりました」
久世も同行する。
今回の目的は、ある倉庫に出入りする人物の確認だった。
不自然な送金に関わる企業の関係者が、夜間に何度も倉庫を訪れているという情報があった。
⸻
午後九時。
悠真は倉庫から少し離れた建物の陰にいた。
端末には、確認すべき人物の特徴が表示されている。
「対象と思われる車両が到着しました」
『確認した。ナンバーを記録してくれ』
真壁の声が返る。
悠真は車両の情報を入力した。
しばらくすると、倉庫の扉が開いた。
二人の男が出てくる。
そのうち一人が、周囲を警戒するように何度も振り返った。
「真壁さん、倉庫から二人出てきました。片方は周囲を警戒しています」
『了解。距離を保て』
悠真は指示どおり、物陰から様子を確認した。
そのとき、背後で小さな物音がした。
振り返ると、作業着姿の男が立っていた。
「ここで何をしている?」
悠真の心臓が跳ねた。
「人を待っています」
「こんな時間に?」
男が近づいてくる。
悠真は一歩下がった。
以前なら、どうすればいいかわからず固まっていたかもしれない。
しかし、今回は違った。
「すみません。失礼します」
悠真は相手との距離を保ちながら、その場を離れた。
すぐにイヤホンへ連絡する。
「真壁さん、近くに不審な人物がいます。こちらの位置に気づいた可能性があります」
『了解。無理に確認するな。そのまま離れろ』
「わかりました」
悠真は退避経路を使って移動した。
その後、久世と合流することができた。
⸻
任務終了後。
車内で真壁が尋ねた。
「さっきの男に接触されたとき、どうした?」
「距離を取って、その場を離れました。それから報告しました」
「前回よりはいい」
「ありがとうございます」
「まだ十分とは言えないがな」
真壁は前方を見たまま続けた。
「現場では、何も起きないことが一番だ。無理に成果を出そうとするな」
悠真は頷いた。
二度目の現場も、怖かった。
それでも、前回より落ち着いて行動できた。
少しずつではあるが、自分も変わっている。
悠真はそう感じていた。




