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世界で最も恐れられる男は、ただの会社員だった  作者: パルパル


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16/21

第15話 予定外の訪問者

その日の夕方。


《ヴェイル》の受付に、予定にない来客が現れた。


黒いスーツを着た男だった。


年齢は五十代ほど。


身なりは整っているが、表情には余裕がない。


「榊代表に会いたい」


受付の女性が確認する。


「ご予約はございますか?」


「ない。だが、急ぎの話だ」


男は名刺を差し出した。


そこには、海外にも事業を持つ企業の役員という肩書きが記されていた。


受付から連絡を受けた榊は、短く答えた。


「通してくれ」


⸻


その頃、悠真は資料室で作業をしていた。


廊下を歩いていた水原が、少し急いだ様子で通り過ぎる。


「何かあったんですか?」


悠真が尋ねると、水原は足を止めた。


「依頼人が突然来られたんです。少し珍しいことですね」


「依頼人が直接?」


「通常は担当者を通しますから」


水原はそう言って、会議室の方へ向かった。


しばらくすると、廊下の向こうから男の声が聞こえた。


「私は、あなた方に依頼したいことがある」


続いて榊の落ち着いた声。


「話を聞きましょう」


悠真には内容までは聞き取れなかった。


ただ、会議室の扉が開いたとき、男の顔が一瞬だけ見えた。


ひどく疲れているようだった。


⸻


一時間後。


久世が資料室にやって来た。


「黒瀬、今少しいいか」


「はい」


「さっき来ていた男のことだが、少し調べてほしい」


「どんな情報ですか?」


「会社の公開情報と、過去に報道された事業上の問題だ。個人的な情報を無理に探す必要はない」


悠真は頷いた。


「わかりました」


「ただし、まだ正式な依頼になるかは決まっていない。調べた内容は外に出さないように」


悠真は作業を始めた。


男が役員を務める企業には、海外の複数の事業拠点があった。


一見、問題のない企業に見える。


だが、過去数年間にいくつかの事業が突然終了していた。


しかも、その時期は、悠真が調べていた不自然な送金が止まった時期と重なっている。


「……また同じ時期だ」


悠真は記録を残した。


その報告を見た久世は、すぐに榊へ連絡した。


⸻


夜。


榊は男が帰った後、久世と二人で話していた。


「依頼内容は?」


「行方不明になった元社員の捜索です。持ち出された資料の返還も求めています」


「三浦の件と関係があるかもしれないな」


「はい。本人は関係を否定していますが、話に不自然な点があります」


榊は窓の外を見た。


「依頼を受けるかどうかは、まだ決めるな。相手が何を隠しているのか確認してからだ」


久世は頷いた。


その企業の名前は、すでに《ヴェイル》が追っている複数の案件に現れていた。


そして、その中心には、まだ正体のわからない何者かがいた。

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